山椒の雌木(実山椒)・雄木(花山椒)について2021年05月02日

花山椒(雄木)
山椒の花(雄木)
花山椒(雄木)a



以下 実山椒(雌木)
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雌木(実山椒)

2006年発生の乳腺外科医わいせつ事件の逆転有罪について2021年05月16日

2016年発生の乳腺外科医わいせつ事件が2020年の高裁で逆転有罪判決になったことで、せん妄等について、裁判官は何をどう考えたらそのような結論になるのだろうかと思い、自分なりに振り返ってみた。

  2016年乳腺外科医事件(柳原病院事件)は2019年2月一審で無罪となり、2020年7月の東京高裁の二審(朝山芳史裁判長)では逆転有罪で懲役2年の執行猶予無・実刑になった。医師にとっては術後せん妄を始めとして、せん妄そのものはよくある事と分かっている。でもその裁判官にはせん妄はどうも理解できなかったらしい。

  せん妄は、夢(半覚醒)と現実(覚醒)の狭間で行ったり来たりするがごとくで幻覚も伴い外見上は一見正常の理解力可能者であるようにも見える。熱にうなされるという状況のものにも似ていると自分では思っている。若者にも一過性に出現することがあり決して無縁の珍しいものではない。そして高齢者施設ではしばしば日常的に遭遇する。胃潰瘍、尿閉等のちょっとしたストレスでもせん妄は出没する。せん妄を初発症状として疾患が見つかることも高齢者では屡々ある。その家族やナースから見たらボケた(認知症になった)とか気が狂ったとか間違えられていたことも時々経験した。幻覚にも様々あるが、レビー小体型認知症を見た人ならばすぐ分るが幻視が特徴的でしかも極めて具体的に見えていて聞けば説明してくれる。少しでも否定しようものなら興奮して’今度写真を撮って証拠を見せてやる’と攻撃的にもなるが、相手には見えていることを受け入れて具体的にどう見えているか聞いていくと、具体的な説明してくれるし、その過程で自分には見えていても他人には見えていないことを受け入れて理解するようになる。理解すれば今度は自分でそれに伴う不安等をコントロールできるようにもなる。対応する側もされる側も慣れてくると、”今日は見えていますか?”と聞くと”見えているよー”と答えて平然としている。
  幻視だけでなく様々なせん妄が出没する日常生活があるのを体験すると、心象風景と表象風景の違い、或いは事実と真実の違いがあるということを観念的に理解しているだけでなく、体感もできる、これが高齢者施設にはある。

  医師になりたての頃、50年前位である、数人の医師やナースを交えた雑談の中で同僚の子持ちのナースが、お産で鎮痛薬ペンタジンを使った時に担当産婦人科Drにいたづらされたような感覚になったとの思い出を話し出して、同席していた担当Drの後輩の別の産婦人科Drが「そうなんだよ、ペンタジン使ったときはそのような幻覚が出ることがあるから君も気を付けた方がいいよ」と自分に助言されたことを覚えている。その場にその担当産婦人科Drは同席していなかったがあの人に限っては考えにくくお互いに現実のこととは思われないという点ではその場でもそのナースを含めて一致していた。
  その後は医師になって約50年間様々なせん妄を数えきれないほど見てきた。中でも若い頃に経験したアルコール性の振戦せん妄(いわゆるアルコール中毒禁断症状)は忘れることが出来ない程の強烈な印象を受けた。中年の体重100kg以上の恰幅の良い大柄で性格の優しそうな方であったが入院後数日しててんかん様痙攣で発症した。大小便失禁、口腔内をけいれんで傷付けて口からはプープーと血性物を吹き出してベッドサイドに転げ落ち、2―3人ではベッド上に挙げることも出来ず偶々見舞いに来ていた同じような大きな体格のその弟の手も借りてやっとベッドに引き上げた。周りは糞尿だらけである。その弟はショックを受けてそれ以後全く見舞いに来なくなってしまった。断酒数日後に発症し易いので、それ以来予測されるときは入院時より予防のためのウインタミン等を事前処方していた。その後はそれ程酷い振戦せん妄は幸い経験していない。せん妄には様々なレベルがあるが最近は非定型抗精神薬があるので治療し易くなっている、文末(a)。
 2016年乳腺外科医事件発生の当初から、こんなことが事件になるのかと思い、ニュースになるたびに気にしていた。発生当初から何でこんなことが問題になるのかと怪訝に思って無罪の署名活動にも一筆署名もしていた。そして、逆転有罪が決まって間もなくその外科医の12歳の息子が電車に飛び込み自殺をしたという。一言で冤罪事件と言うがなんとも恐ろしい結末である。明日は我が身かもしれない。
〇 ( m3.com 医療維新 「乳腺外科医準強制わいせつ逮捕・起訴事件」 中川日医会長「身体が震えるほどの怒り」、乳腺外科医控訴審判決 全力で支援する」と表明、全麻手術への悪影響も懸念 レポート 2020年7月15日 (水)配信高橋直純(m3.com編集部)https://www.m3.com/news/iryoishin/798488?from=openIryoIshin )
〇( 乳腺外科医事件「世論と専門家の意見を最高裁に」 11月10日に最高裁に上告趣意書を提出 2020年11月29日 高橋直純(m3.com編集部)
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/847951/ )
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  そして、下記の論文が最近出たことを知り、実態はどうだったのかを知るために、取り寄せて読んでみた。
 〇( 判例時報社 バックナンバー 判例時報 No.2473〔評論 No.746 乳腺外科医事件 控訴審逆転有罪 ──秘匿された「職業せん妄」の医学……佐藤一樹 http://hanreijiho.co.jp/wordpress/book/%E5%88%A4%E4%BE%8B%E6%99%82%E5%A0%B1-no-2473%E3%80%94%E8%A9%95%E8%AB%96-no-746%E3%80%95/ )
  著者の渾身の心を込めて書き上げたと思われ、裁判関係者でないと理解できないような用語も並んでいて、司直の手にも分かり易いようにとの趣旨も込めているような印象のある論文である。自分には決して出来ないような迫力のある論文であると思う。そしてこの事件は冤罪であることを改めて自分も実感できた。
  それでは、なぜ裁判長初め裁判官は逆転有罪の判決に至ったのか、どういう思考回路ならばそのような結論に行き着くのか、考えてみなければならないと思う。

  これまで自分は、社会の良識は互いに共有できると思っていたが、決してそうではないのかも知れない、と思わなければならないのかもしれない。自分の思う良識からは、どう考えてもその裁判官の思考回路は理解できない。
  一人一人の人生を左右する程の裁判官という職業に対して、漠然と良識を兼ね備えているはずだとの思い込みは意外と危険なのかもしれない。
  日本は自由主義の国であり民主主義の国なので言うことも自由、考えることも自由で容認されるが、この様な人には、少なくとも社会のオピニオンリーダーにはなってほしくない。社会のご意見番役は大いに結構であるが、獅子身中の虫にはなってほしくない。それは日本学術会議の会員不承認問題でも同じである。個人の観念や度量などは大海の一滴である。如何に大きくともコップ一杯と言っていい。想像を絶する程のたぐい稀な広い視野を備えていたとしても高々バケツ一杯だ。自分の理念のみが正しいと社会に押し付けようとする姿勢は不愉快である。
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  死亡診断書記入マニュアルは厚労省によって毎年度更新提示されるが2014年までは死亡診断書記入マニュアルの中で、日本法医学会異状死ガイドラインに従うように記載された1-2行が残っていたために、今では不必要になった死亡例の警察への届け出が必要であったために、自分も少なからず届け出を行っていた。そしてご家族にはなるべく迷惑をかけないように対応するから法令上の義務なので届けさせてくれと頼み込んだことも屡々あった。そしてそんなときの警察の対応は大体いつも同じパターンだった。その現場での刑事の反応では、ご家族は解剖を拒否しているし犯罪性はゼロだからこれで打ち切りで良いでしょう、という話になっても念のためにと署の上司にTEL連絡するとダメだということになり、現場の刑事も手のひらを返したように態度が豹変する。裁判所から令状を取ってもしますと強硬になった。明らかに上司の判断は自己防衛の思考法に基づいたものだった。初期は、警察職員は勿論その自覚はないようであるが、ほぼ常に犯罪者扱いの対応になった。これは警察であるが故の性だと思っている。ある時はどうしても家族が納得しない時には早朝に突然数十人で家に訪れ家関係者を羽交い絞めにして妨害しないようにした後に遺体を持ち去ったこともあった。当然病院も大きな影響を蒙った。そして必要以上の警察への届け出は、家族への迷惑だけでなく直接当事者の病院職員にも大きなストレスを与えた。

  その死亡診断書記入マニュアルから法医学会異状死ガイドラインに従えという数行が2015年に突然消えた。10年以上問題とされながら、日本医師会等多くの関係者から問題視されながら、それまで厚労省は口頭では法医学会ガイドラインに従えてと指示したことは国立病院機構のリスクマニュアル以外にはないと言い逃れをしていた。
〇( 「診療関連死を届け出るべきとは言ってない」-厚労省が見解 編集部 日本医事新報 (4625): 14-15, 2012. )
〇( 現場からの医療改革推進協議会>意見書TOP 医師法21条の歴史と矛盾 http://expres.umin.jp/genba/kaisetsu01.html )
〇( 東京保険医協会 厚労省は正しい解釈伝えよ――協会 医師法21条問題で記者会見  2013年02月15日 https://www.hokeni.org/docs/2016061200073/ )

 表面上はその届け出の必要が無くなった、と一般医療社会には捉えられていたが、それでも関係者の削除運動にも反応せずのらりくらりとのれんの腕押し状態で、その死亡診断書記入マニュアルからの削除はされなかった。
 それがある時(2015年)突然消えた。
〇(死亡診断書記入マニュアル 「法医学的異状」等は削除――医師法21条の「拡大解釈」是正へ https://www.hokeni.org/docs/2016111200077/ )
〇( NDC Medical Times > NDCメディカルニュース記事 > 医師法21条の誤解を解く見解~医師法21条の解釈をめぐる混迷と誤解~2015.11.20 http://medical.nihon-data.jp/archives/3552 )
 
 あんなに頑固に残っていたのに、一体だれがどのようにしたら削除できたのかと調べて後日知ったのが、前述の論文を書いた佐藤一樹氏だった。厚労省はのれんに腕押しだったが、偶々知り合ったその時の政務官に伝えた所、いとも簡単にその該当行を消すことが出来たという。それを聞いた時は厚労官僚の事なかれ体質と政治の力の大きさに本当に驚いた。
〇( m3.com 医療維新 「リスクマネージメントマニュアル作成指針」失効 2015年7月6日 (月) 橋本佳子(m3.com編集長) https://www.m3.com/news/open/iryoishin/337567 )
〇( m3.comトップ 医療維新 「診療関連死イコール警察への届出」は誤り 2012年10月29日 (月) 橋本佳子 https://www.m3.com/news/open/iryoishin/160917  )
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 そもそも日本法医学会の異状死ガイドラインの考え方は初め多くの学会が同じように共有していたがまもなく問題が多すぎるとのことで日本法医学会以外の他の学会はすべて取り下げた。何故か法医学会のみが頑固に維持してその後も取り消さなかった。自分も問題を感じていた頃NHKテレビの朝のニュースで日本法医学会理事長が出ていて法医解剖が多くて解剖医の絶対数が全く足りないとアピールしていたことがあった。’何を言うか、あなたがそうさせているためではないか’と苦々しく聞いていたのを覚えている。
〇( 日本外科学会 > その他の情報 > お知らせ > 診療行為に関連した患者死亡の届出について~中立的専門機関の創設に向けて~ 平成16年9月30日 社団法人日本内科学会 社団法人日本外科学会 社団法人日本病理学会 日本法医学会 社団法人日本医学放射線学会 財団法人日本眼科学会 有限責任中間法人日本救急医学会 社団法人日本形成外科学会 社団法人日本産科婦人科学会 社団法人日本耳鼻咽喉科学会 社団法人日本小児科学会 社団法人日本整形外科学会 社団法人日本精神神経学会 社団法人日本脳神経外科学会 社団法人日本泌尿器科学会 社団法人日本皮膚科学会 社団法人日本麻酔科学会 社団法人日本リハビリテーション医学会 日本臨床検査医学会
https://www.jssoc.or.jp/other/info/seimei.html )
〇( 関連学会の提言等 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1227-8a_0003.pdf )

 厚労省の死亡診断書マニュアルから日本法医学会異状死ガイドラインを参考にするようにとの記載が消えるまでの間、偶々知った裁判官にも問題がるのではないかと聞いたことがあるが ’僕はガイドラインは間違っていないと思う’と言っていた。その間なん年も、法医学会のガイドラインは本当に恨めしかった(日本法医学会「異状死ガイドライン」1994年)。
 全体とのバランスを何故考えないのだろうかと、司直の方々の思考法に違和感を持ったのはこの頃からだった。

  「選択と集中」、或いは「専門分化特化」、とのキャッチフレーズが産業界だけでなく医療にも導入されてきて、行政も先導するようになったことから歪みが出始めた。それ自体は悪いとは言わないがそれだけで良いのかとの実感もあった。行政が先導したために周りの病院から診療科が亡くなり小児科医不足増幅やお産難民も出た。2006年横浜の堀病院の警察捜査には問題の大きさに対して警察の担当課長が法令通り行っただけと居直ったのにも驚いたし厚労省の対応にも失望した。時期を失した厚労省許可はお産問題には無効だった。この頃射水市民病院事件や大野病院事件始め様々な医療問題も噴出していた。
 誰かが診るだろうと言いながら実は誰も診ない、という医療の現状がある事も実感していたが、それでもオピニオンリーダーたちはそれで良いと達観しているようにも見えた。優秀な方たちは全体のバランスは考えなくても良いと思っているらしいともその当時は思えた。一方で狭間医療があるとそれを目指す一部の医師も確かにいた。

  乳腺外科事件で逆転無罪を言い渡した裁判長は今、大学の教授として学生を指導しているようだ。学生には反面教師として見習ってもらいたい。
〇J-GLOBAL ID:202101005302753720 更新日: 2021年04月15日
朝山 芳史 2021/04 - 現在 上智大学 法学研究科法曹養成専攻 教授 https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=202101005302753720
https://researchmap.jp/y-asayama
  佐藤一樹医師についても大変な苦労されていて今がある事を知った。
〇逮捕はボストン留学の直前だった◆Vol.7 小児心臓外科医の道は断念、「今後は経験を語っていく」 スペシャル企画 2009年5月28日 (木)配信聞き手・橋本佳子(m3.com編集長)
https://www.m3.com/news/iryoishin/95991

(a)せん妄等BPSD関連の抗精神薬 
<div class="msg-pict"><a href="https://ku-wab.asablo.jp/blog/imgview/2021/05/16/5ebb98.jpg.html"
target="_blank"
onClick="return asablo.expandimage(this,1361,923,'https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/05/16/5ebb98.jpg')"><img src="https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/05/16/5ebb97.jpg" alt="せん妄等BPSD関連の抗精神薬" title="せん妄等BPSD関連の抗精神薬" width="300" height="203"></a></div>

息切れスコア mMRC は未だに混乱しているようなので下記を使うことにする。2021年05月26日

mMRC-JRS2018
息切れスコア mMRC は未だに混乱しているようなので自分は下記の表現法を使うことにする。

―記載法は ”mMRC-JRS2018=スコア/0-4” とすることにする。―

(学会ガイドラインが出ても、コンセンサスを得たとは限らないのが現実であるのは分かっているが困ったものだ。世界アレルギー機構WAOのアナフィラキシー診断基準が未だにコンセンサスを得たとは限らないことを知ってなおさらである。)
(メモ: 使い慣れたHugh-Jones分類からmRMCに統一しようとの学会意向が出来たのが10年前頃であろうか、自分も合わせた方が良いだろうと考えて慣れないmMRC分類を使うようになったが、そのmMRC表記法も気が付いたら未だにバラバラ、学会も烏合の衆の側面があることに気付いたので、自分の表記法を決めておいた方が良いと考え直し上記記載法に決めた。)

(1) COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン2018[第5版]
https://www.jrs.or.jp/modules/guidelines/index.php?content_id=112 
(2) MRC 息切れスケールをめぐる混乱―いったいどの MRC 息切れスケールを使えばよいのか?―宮本 顕二日呼吸会誌 46(8),2008.
https://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/046080593j.pdf
(3) Celli BR W, MacNee W, and committee members.Standards for the diagnosis and treatment of patients with COPD : a summary of the ATS/ERS position paper. Eur Respir J 2004 ; 23 : 932―946. DOI: 10.1183/09031936.04.00014304
http://www.taiss.com/gepoc/gecarp/gepubli/publdoc/006-003-cellibr-standards-diagnosis-treatment-patients-copd.pdf


(メモ)
〇 アナフィラキシーの診療の実際 ― 2021年02月24日
https://ku-wab.asablo.jp/blog/cat/iryoumemo/
〇 ② 呼吸・循環・アレルギー ― 2014年02月28日 [ ] mMRC スコア(COPDガイドライン第4版2013) 新分類(grade 0~4) (旧分類は0~5で混乱していた)
https://ku-wab.asablo.jp/blog/cat/iryoumemo/?offset=20
http://www.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/ajrs/003030337j.pdf 
http://www.spinet.jp/guideline/diagnosis.html