Refeeding syndrome について2023年12月11日

Refeeding syndrome について
 戦国時代の“秀吉の兵糧攻め”が英語論文になったという(⑪,⑫,⑬)。既に知られていたRefeeding syndromeではあるが「詳細な記録が残っており教訓的な逸話として後世に残すべきだと考えた」と著者の弁である。その理由を聞いて“あっぱれ”と思う。
足尾鉱毒事件も詳細な記録がのこっている公害事件の世界的な嚆矢である。英文の著書も既にあるが未だ世界的にはあまり知られていないのが残念である。
 Refeeding syndromeも対応を間違えば致命的にもなり得るので、もっと診療現場に知られて良い疾患である。知る人ぞ知るなので、改めて調べてみた。

 かつて若い頃ヨガ道場で修業の真似をしたことがあるが、一般的に断食終了後の摂食開始は回復に2倍以上の期間が必要と言われていた。第二次大戦中のMinnesota Study(Keys,1950)では飢餓後の制限解除後は自分でもコントロールできないほどの無茶食い衝動が伴うとされた。自分でも2週間の修業後に三島道場から帰省する段になってそれに陥っていたのを思い出す。
Refeeding syndromeは、過酷な飢餓後の急速な栄養補給でかえって死んでしまうというものである。低リン、低Vit.B1、低K、低Mg、等で、心停止・呼吸停止・けいれん・意識障害などで、摂食開始1~3日以内に急激に出現するといわれている。栄養投与は150kcal以下/24hrs位からゆっくり栄養再開しなければならないという。
 第二次大戦や秀吉の兵糧攻め(鳥取城・三木城)で発生していたと既に知られていることではある。

以下、その論文等の資料を挙げる。

資料:
① 戦国こぼれ話】地獄のような鳥取城の惨劇。440年前に行われた羽柴(豊臣)秀吉の兵糧攻めの全貌 YAHOO!Japanニュース 渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役 2021/3/10(水) 6:00 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0cdb82ddb1db5bd9a53b15e73d6ba2c5b677d996 。
② 三木合戦 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%9C%A8%E5%90%88%E6%88%A6 。
③ 地獄絵図の虐殺!日本史上稀に見る鬼畜戦略、豊臣秀吉による「鳥取の飢え殺し」とは? Japaaan マガジン2022/06/29 https://www.google.co.jp/search?q=%E7%A7%80%E5%90%89%E3%81%AE%E5%85%B5%E7%B3%A7%E6%94%BB%E3%82%81&sca_esv=589734753&ei=U9p2ZcueKtyH2roPk5i3sA8&ved=0ahUKEwiLlJ7njIeDAxXcg1YBHRPMDfYQ4dUDCBA&uact=5&oq=%E7%A7%80%E5%90%89%E3%81%AE%E5%85%B5%E7%B3%A7%E6%94%BB%E3%82%81&gs_lp=Egxnd3Mtd2l6LXNlcnAiFeengOWQieOBruWFteezp-aUu-OCgTIFEAAYgARIu3lQ5AdYtm9wAngAkAEDmAGgAaABsyCqAQQzOC44uAEDyAEA-AEBqAIUwgIKEAAYRxjWBBiwA8ICHRAAGIAEGIoFGOUCGOUCGOoCGLQCGIoDGLcD2AEBwgIWEAAYAxiPARjlAhjqAhi0AhiMA9gBAsICDRAAGIAEGAQYsQMYgwHCAgYQABgDGATCAgoQABiABBgEGLEDwgIHEAAYgAQYBMICCxAAGIAEGLEDGIMBwgIKEAAYgAQYigUYQ8ICDRAAGIAEGBcYsQMYgwHCAgcQABiABBgXwgIJEAAYgAQYBBgl4gMEGAAgQYgGAZAGCroGBAgBGAe6BgYIAhABGAo&sclient=gws-wiz-serp 。
④ 第6回 秀吉の兵糧攻め 月刊レジデントノート2015年3月号 https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115476.html 。
⑤ NSTミニレクチャー第 45回 ~ リフィーディング症候群について ~ 西新潟中央病院栄養管理室 NST NEWS 第71号2020 年3月3日 https://nishiniigata.hosp.go.jp/contents/bumon/nut/doc/nstnews71.pdf 。
⑥ 症例報告 Refeeding Syndrome(RS)を呈した神経性無食欲症--RSの予防と治療 精神神経学会誌111:388-397,2009.  https://cir.nii.ac.jp/crid/1520291855083616256 。
⑦ 摂食障害の救急治療と再栄養時のrefeeding症候群 日本内科学会誌 105:676~682,2016.  https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/4/105_676/_pdf 。
⑧ Refeeding syndrome and hypophosphatemia MARINELLA M. A. J Intensive Care Med 20 155-159, 2005.  https://cir.nii.ac.jp/crid/1571135650976594560 。
⑨ 神経性食欲不振症の入院中における低リン血症もしくは Refeeding Syndrome 日本心療内科学会誌 8 (4), 229-234, 2004-11-20  https://cir.nii.ac.jp/crid/1571417125364829696 。
⑩ Hypophosphatemia during nutritional rehabilitation in anorexia nervosa: implications for refeeding and monitoring  Journal of Adolescent Health 32 (1), 83-88, 2003-01  https://cir.nii.ac.jp/crid/1361418521165153792 。
⑪ 秀吉の鳥取城・兵糧攻め、「リフィーディング症候群」で大量死亡か 医師らが論文 2023/12/2 産経新聞 https://www.sankei.com/article/20231202-ZIJX5PT5VZKENAEDGSCHIEFIQU/ 。
⑫ 秀吉のおかゆ、大量に食べて急死!?「戦争に伴う飢餓への警鐘」 鳥取城の兵糧攻め後の死者、飢餓状態で起こる最古の症状か 学芸員と医師が国際論文発表 2023/11/21山陰中央新報 YAHOO!Japanニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/8276f4400777c23b223b662a5b5266a64b2cb47a 。
⑬ Hyoro-zeme in the Battle for Tottori Castle: The first description of refeeding syndrome in Japan Am J Med Sci . 2023 Dec;366(6):397-403. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37690626/  。

ビジョン・フィロソフィー・ミッション・理念等の違いについて2023年12月14日

ビジョン・フィロソフィー・ミッション・理念等の違いについて
ビジョン・フィロソフィー・ミッション・理念等の違いについて

何らかの企業等集団の運営に当たっては理念を掲げることが大事とされている。自分でも小規模ながら病院運営に携わり退職後は小さな介護施設の運営にも携わった。そしていかにそれが大事であるかは身をもって実感してきた。更に現役の時は悉く上手くいかなかったことから学び退職後は少し効果が出たことも実感してきた(図1)。
しかし最近、理念だけでは足りないと思う何かの違和感があるので改めて調べてみた。
抑々トランプもプーチンも習主席も立派な理念は持ち合わせているはずである。でも何かがずれている。かつて原理研と言われた統一教会に係る政治家も気づいていながら気づかないふりして係わっていた筈なのはなぜか、50年前から自分でも違和感を感じていた。それぞれの政治家も立派な理念を持っているはずである。理念を導く何かが、社会と調和させる何かが、理念を制御する何かが、その上位にあればそれらへの違和感は生じないはずである。道徳感ともちがう、倫理感とも違う何かがあるような気がする。道徳感と倫理観との違いは後者が批判的吟味を必須とされていることであるともいう。
調べてみたらフィロソフィー・ミッション・理念等それらの言葉の定義や考え方は使う人によってバラバラであるようだ。バラバラであってもそれによってその企業の目指すベクトル(方向性と思いの強さ)の職員の意識統一できるのであれば何の問題もないとは思う。しかしながら理念だけではどうも足りないのではないかと最近感ずるようになったのは何故なのか。理念は企業の数だけ異なるものがあって良いものであるが、それを導く何かモラルのような指針がなければいわゆる反社会的なものも許されてしまいかねないと思うようになった。現に今ウクライナでもイスラエルでも戦争をしている。
改めてこれまで自分が四苦八苦して考えて実践してきたことをもとに纏めてみる。

・理念とは企業等のいわば家訓と言えるものである。家訓とはそれぞれの家の決まり事であり正邪善悪の枠は有っても無くても良い。その家族の意識の共有・アイデンティティを醸成するものである。家族の数だけ、企業の数だけそれぞれの理念があってしかるべきものである。戦国時代の毛利家の三矢の教えは良い例である。どうも国家も同様に考えた方がよさそうだ。
・ミッションがビジョンの上に位置するとの考えもあるようであるが自分はそうは思わない(⑤)。
・法体系では憲法がピラミッド体系のトップであるように、企業等組織運営のビジョンや理念等の捉え方もピラミッド体系であるべきである。多職種協働の捉え方がフラット体系であることと比べるとピラミッド体系は次元が全く異なる体系である。多職種協働がフラット体系でやっと機能するのとは対照的である。
a. いわゆる戦術(Tactics)は当面する目先の対応であり戦略(Strategy )はそれより大局的な視点での対応であるのは誰も異論はないものと思う。
b. 使命(Mission)と理念(Credo,idea)を同列に扱うことには大きな問題があるかもしれない。けれども使命が客観的な役割で、理念は主観的な役割であるとの捉え方には異論がないものと思う。使命から外れた理念を掲げれば抑々土台から崩れる。外れなければどちらが上位でも良いので自分は同列とした。この場合の使命は具現化された社会的な役割という捉え方であり、抽象性はない。
c. 哲学(Philosophy)とビジョン(Vision)を同列に捉えるかどうかの位置づけも大いに問題になる所である。使命(Mission)を具現化するための考え方と行動指針が哲学(Philosophy)であるという捉え方もあるようであるがこの捉え方では哲学は上位概念からは少し引き下がる。
d. ビジョンの定義は難しいがミッションやフィロソフィーだけでは何か足りない。それを埋めるものがビジョンであるという捉え方である。ビジョン(展望)という語彙が適切であるかどうかはわからない。もっと適切な言葉があるかもしれない。こう在りたいと思う未来の姿・はるか先を見通したあるべき姿、を一言で表す言葉はあるだろうか。
e. 抑々宗教やイデオロギーは善悪正邪を超えたもので犯さざるべきものとの前提で捉えていたが、このピラミッド体系から見ればフィロソフィーにもビジョンにも相当しないことになる。理念や使命と同列に捉えた方がすっきりする。その方が戦争も起きないのではないだろうか。
f. クオリアとの関係はよくわからない。人文科学(人文学)も良く分からない。哲学の位置付けも分かったつもりであったが良く解らなくなった。

資料:
①日本の展望―学術からの提言 2010 平成22年(2010年)4月5日 日 本 学 術 会 議 哲学委員会 哲学の展望分科会 https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-21-h-1-2.pdf 。
②哲学的ゾンビ 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%93%B2%E5%AD%A6%E7%9A%84%E3%82%BE%E3%83%B3%E3%83%93 。
③クオリア 土谷 尚嗣 脳科学辞典 DOI:10.14931/bsd.7155 2016年6月9日編集担当 定藤規弘(自然科学研究機構生理学研究所) https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E3%82%AF%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%82%A2 。
④クオリア 心の哲学まとめWiki https://w.atwiki.jp/p_mind/pages/67.html 。
⑤ミッション・ビジョン・バリューとは、それぞれの違い 日本の人事部2023/08/30 HR vision kk https://jinjibu.jp/keyword/detl/1480/ 。
⑥【雑想】「社会科学」は「人文科学」ではない?そもそも「人文学」は「科学」?HatenaBlog https://ochimusha01.hatenablog.com/entry/2022/02/07/104703 。

図について:
 企業運営視点では、理念や使命よりも上位の観念があるはずであり、それをビジョン(展望)と表現した。モラルをも包含しイデオロギーや宗教に近い、正邪善悪を超えた何かがあるはずでありそれをビジョンと表現した。
・哲学はビジョンを達成するための行動指針であり、生の根本命題としての哲学を意味しない。ミッションを上位に置きフィロソフィーはミッションを具現化するための考え方と行動指針 であるとする捉え方はここではしていない。
・使命は社会から期待される客観的役割に相当し、理念は自ら定める主観的役割に相当するという違いがあるが同列とも言える。使命は社会環境で短期で変わり得るが理念は抽象的で短期的に変更するものではないという違いもある。理念はその為の具体的羅針盤としての行動指針が必須である。理念を共有することと職員であるということはイコールである。理念を共有できなければその職員ではないとも言える。
・戦略は長期計画や長期目標に相当する。
・戦術は短期計画・年度計画・年度目標等の目先対応に相当する。

(様々な表現が存在するので一部挙げてみる。ビジョン・フィロソフィー・バリュー・ミッション・ミッションステートメント・理念・信条・クレド・プリンシプル・パーパス・スローガン等。)

「塩の行進 ガンジーの志を継ぐ者たち」NHKバタフライエフェクトを見て2023年12月19日

アサブロ 

https://www.nhk.jp/p/butterfly/ts/9N81M92LXV/episode/te/164L8V2MY4/ 。
「塩の行進 ガンジーの志を継ぐ者たち」NHKバタフライエフェクト初回放送日: 2023年12月18日を見た。ガンジーだけの事と思ったら、何とキング牧師・マルコス政敵のベニグノ アキノ氏・スー チー氏にまで話が及んでいた。非暴力不服従の世界のサマリーを見ているようでつくづく人間は古代と同じで成長していないと感じたドキュメンタリーだった。
非暴力不服従運動で言えばガンジーの約半世紀前に日本では既に田中正造が足尾鉱毒事件等で実践していた。渡良瀬川の足尾鉱毒事件は世界の公害史の先駆けで、日本のガンジーと思っていたが、ガンジーの方が遥かに世界に影響を与えた人物だった。
現在、宗教やイデオロギーは善悪を超える不可侵の信条と思われてきているけれども目前の戦争や実力行使を見ていると、更にそれより上に、あるべき姿を示すビジョン、があるべきだと思うようになった。宗教やイデオロギーは単なる理念ではないだろうか。(理念とは家であれ企業であれ国家であれその数だけある言わば家訓のような信条であり、道徳・善悪正邪は二の次である。)
( https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02pnv5KPzhZ7U6z7yiVrwCCc3WiYzbcJxL1AgomU16jhuR9hAXAArwoQMmNFL2yhJ8l?__cft__[0]=AZVUn2KEyIMWuc9xsL_LTNmcwkYq-ge8h7h4LP07t6VeU_YBP3TLs4HcKecSU9qXAN1q8ZOmyv9Dvo7Fr3ykfglUNStIXNnj4U1yRHxOZy5L1Y2jE_kMGVF_gEjAW7_tAKqMlt3SLzO4tt8myE1vHjbkRdJkZuqC72pYugMxzjfnEQ&__tn__=%2CO%2CP-R 。)