スピリチュアルということ ― 2025年02月16日
スピリチュアルということ
今や不治の病ではなくなった癌もかつては不治の病でその苦痛を表現するときに身体的・精神的・社会的苦痛の他にスピリチュアルな苦痛があるとされた。心の癒しだけではない、生きがいの本質を探るその解決策として 樋野興夫先生の始めた癌哲学外来や松本文男先生が始めた傾聴療法士養成等の試みがある。この両者共にヒトのこころを引きつけるのはその神髄にスピチュアリティの視点があるからだと思っている。
日本人は「こころ」という一語に幅広い意味を包含させてある時は浅くある時はとてつもなく深いスピリチュアルまでを含む意味をしのばせて使い、かつその使い方で深さの違いをかぎ分ける能力を備えていると思う。
しかし欧米では従来よりmentalとspiritualは分けて使っているという。石丸昌彦氏はかつてアメリカ留学時の1995年に長男の入園した幼稚園の園長先生が「皆さんはこれからお子さんたちが4つの面で日毎に成長していくのを楽しまれることでしょう。4つの面での成長、即ちphysical、mental、social and spiritual developmentです。」と挨拶していたと述べている(NHKテキストこころをよむ2024年7月-9月号,第12回9月22日放送)。WHOでも1999年にヒトの健康の定義にspiritualも含めることが話合われほぼ決定する寸前での総会で統一見解が得られずに頓挫してしまった。決まらなかった背景には捉え方が様々で特に宗教的背景が見え隠れすることを嫌ったり宗教と混同されたり代替医療が横行する危惧等への不審があったゆえに採決に至らなかったというのがその理由ではないかともいう。スピリチュアルの定義を限定しようとする論考はWHOも含めて少なからずあるようであるが未だに成功しているとは思えない。
Frailが適当な訳語が決まらずフレイルになったようにspiritualも適当な日本語訳が決まらずスピリチュアルに決まった経緯があったがもともとスピチチュアルは多義的がその本質かもしれない(frailの日本語訳が決まらなかった理由は別にある)。しかし高校保健体育の教科書には「生きがい」と表現されているというし、Spiritual painは生きがいの喪失と捉える方もいる。樋野興夫先生の癌哲学外来はまさにその生きがい喪失を取り戻すことに視点を置いた実演面接をしていた。その「生きがい」自体は個人ごとに異なっても良いし宗教色の有無も問わない。
前記の樋野興夫先生や松本文男先生の見定める先にはこの生きがいを見つける手助けがあり、樋野先生は「偉大なおせっかい」と表現していた。松本先生は全てのヒトが潜在能力を持っていると100%信頼していた。このご両人についてはかつて普及初期の頃に自分の病院でも講演を何回かお願いしたり定期的に実演開催したりしていた。そのスピリチュアルの捉え方はヒト毎に異なりその心象風景はヴィトゲンシュタイン(L.Wittgenstein,1889-1951)が言うようにヒトの数だけある。
上記の所謂通俗的なスピリチュアルとは別の側面であるのように見えるスピリチュアルの、その入口へのヒントを与えてくれるかもしれない著書に出会った。
そう言う自分も担癌生体のまま今10年になれども予想を超えて今尚元気である。癌もまた様々なのである。
(資料)
①がん哲学外来とは https://gantetsugaku.org/aboutus/ 。 https://www.yuumi.or.jp/wp-content/uploads/2022/06/booklet19.pdf 。 https://numata.hosp.go.jp/info/20160731.html 。
②傾聴療法士養成講座 NHK文化センター https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1245316.html 。
③WHO憲章における「健康」の定義の改正案のその後について(第52回WHO総会の結果)厚労省報道発表資料 https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1110/h1026-1_6.html 。
④スピリチュアリティ『ウィキペディア(Wikipedia)』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3 。
⑤スピリチュアル『ウィキペディア(Wikipedia)』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB 。
⑥スピリチュアリティとQOLの関係に関する理論的検討.真鍋顕久他著,名古屋女子大学紀要56(人・社)41〜52.2010. https://researchmap.jp/read0084617/published_papers/24440906 。
⑦『あの世とこの世の仕組み』三上直子著2021年 https://booklive.jp/product/index/title_id/1315836/vol_no/001 。
今や不治の病ではなくなった癌もかつては不治の病でその苦痛を表現するときに身体的・精神的・社会的苦痛の他にスピリチュアルな苦痛があるとされた。心の癒しだけではない、生きがいの本質を探るその解決策として 樋野興夫先生の始めた癌哲学外来や松本文男先生が始めた傾聴療法士養成等の試みがある。この両者共にヒトのこころを引きつけるのはその神髄にスピチュアリティの視点があるからだと思っている。
日本人は「こころ」という一語に幅広い意味を包含させてある時は浅くある時はとてつもなく深いスピリチュアルまでを含む意味をしのばせて使い、かつその使い方で深さの違いをかぎ分ける能力を備えていると思う。
しかし欧米では従来よりmentalとspiritualは分けて使っているという。石丸昌彦氏はかつてアメリカ留学時の1995年に長男の入園した幼稚園の園長先生が「皆さんはこれからお子さんたちが4つの面で日毎に成長していくのを楽しまれることでしょう。4つの面での成長、即ちphysical、mental、social and spiritual developmentです。」と挨拶していたと述べている(NHKテキストこころをよむ2024年7月-9月号,第12回9月22日放送)。WHOでも1999年にヒトの健康の定義にspiritualも含めることが話合われほぼ決定する寸前での総会で統一見解が得られずに頓挫してしまった。決まらなかった背景には捉え方が様々で特に宗教的背景が見え隠れすることを嫌ったり宗教と混同されたり代替医療が横行する危惧等への不審があったゆえに採決に至らなかったというのがその理由ではないかともいう。スピリチュアルの定義を限定しようとする論考はWHOも含めて少なからずあるようであるが未だに成功しているとは思えない。
Frailが適当な訳語が決まらずフレイルになったようにspiritualも適当な日本語訳が決まらずスピリチュアルに決まった経緯があったがもともとスピチチュアルは多義的がその本質かもしれない(frailの日本語訳が決まらなかった理由は別にある)。しかし高校保健体育の教科書には「生きがい」と表現されているというし、Spiritual painは生きがいの喪失と捉える方もいる。樋野興夫先生の癌哲学外来はまさにその生きがい喪失を取り戻すことに視点を置いた実演面接をしていた。その「生きがい」自体は個人ごとに異なっても良いし宗教色の有無も問わない。
前記の樋野興夫先生や松本文男先生の見定める先にはこの生きがいを見つける手助けがあり、樋野先生は「偉大なおせっかい」と表現していた。松本先生は全てのヒトが潜在能力を持っていると100%信頼していた。このご両人についてはかつて普及初期の頃に自分の病院でも講演を何回かお願いしたり定期的に実演開催したりしていた。そのスピリチュアルの捉え方はヒト毎に異なりその心象風景はヴィトゲンシュタイン(L.Wittgenstein,1889-1951)が言うようにヒトの数だけある。
上記の所謂通俗的なスピリチュアルとは別の側面であるのように見えるスピリチュアルの、その入口へのヒントを与えてくれるかもしれない著書に出会った。
そう言う自分も担癌生体のまま今10年になれども予想を超えて今尚元気である。癌もまた様々なのである。
(資料)
①がん哲学外来とは https://gantetsugaku.org/aboutus/ 。 https://www.yuumi.or.jp/wp-content/uploads/2022/06/booklet19.pdf 。 https://numata.hosp.go.jp/info/20160731.html 。
②傾聴療法士養成講座 NHK文化センター https://www.nhk-cul.co.jp/programs/program_1245316.html 。
③WHO憲章における「健康」の定義の改正案のその後について(第52回WHO総会の結果)厚労省報道発表資料 https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1110/h1026-1_6.html 。
④スピリチュアリティ『ウィキペディア(Wikipedia)』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3 。
⑤スピリチュアル『ウィキペディア(Wikipedia)』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%AA%E3%83%81%E3%83%A5%E3%82%A2%E3%83%AB 。
⑥スピリチュアリティとQOLの関係に関する理論的検討.真鍋顕久他著,名古屋女子大学紀要56(人・社)41〜52.2010. https://researchmap.jp/read0084617/published_papers/24440906 。
⑦『あの世とこの世の仕組み』三上直子著2021年 https://booklive.jp/product/index/title_id/1315836/vol_no/001 。
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