忘備録: 『トヨタ中国の怪物(豊田章男を社長にした男)』児玉博著2024年文芸春秋発行、を読んで2025年02月07日

『トヨタ中国の怪物(豊田章男を社長にした男)』児玉博著2024年文芸春秋発行
忘備録:
『トヨタ中国の怪物(豊田章男を社長にした男)』児玉博著2024年文芸春秋発行、を読んで


 2009年8月に発生した米国のトヨタ車の高速走行中制御不能事故をきっかけに付随するリコール問題等も発生して様々な憶測も伴い、米国議会の公聴会での詰問等厳しいバッシングにもその豊田章男社長は晒されたが、丁寧に説明して見事その難局を乗り切ったその経過は見事、と心に残っていた人物であった。その豊田章男を社長にした男との副題に思わず目をとめて本を購入して読んだ。

 中国の文化大革命は計り知れない程の多くの大切な遺産を失ったであろうというのは世界の誰もが認める事実であるが、その最中だけでなくその前も中国に生まれ育ち中国にて想像を絶する環境の中で生きて来て現代中国の建設初期から昭和45年に日本に戻るまで中国で暮らし生き抜き、昭和45年待望の日本に戻ってからは偶然トヨタ自動車に勤務して、今に至るまでの「服部悦雄」(1943年伊春市生れ―)の生きざまの記録であった。人目を惹く本の章分けとは別に貴重な個人の沿革史を通して現代中国の裏面史が描かれていて一気に読めた。

 若い頃(20才台?)文革時代を描いた映画『芙蓉鎮』のビデオを友人の家で夜中に2人で見た。その時の印象は強烈で、中国人は何と忍耐強い人たちなのだろうと驚嘆した。そしてビデオが終わるまで互いに共に一言も発せず終わってから一言 “すげえ映画だったなー” と言い合って明け方近くに自分の家に帰って行ったことを今でも鮮明に覚えている。とてもまねできない程の忍耐強さという印象を持っていたが、この服部悦雄氏によれば、好死不如懶活(hǎosǐbùrúlàihuóきれいに死ぬよりも惨めに生きた方がましと言う意味と言う)が中国人の生きざまという。潔さを美徳とする日本人には到底まねできそうにないと感じていたが見方を変えれば好死不如懶活でもあるのかと妙に納得した。半世紀前にインド貧乏旅行をした頃は中国とインドは眠れる獅子と龍とも言われていたが今は両者ともに目覚めている。
 人肉を食らわっても場合に依ったら生きることを選ぶという中国人のしぶとさは忘れてはならない史実かもしれない。その本の中にある『大飢饉の時代1958~1962年中国』(原題: The Great Famine in China,1958-1962 Edited by Zhou Xun 周遜, Date: 2012, Yale University Press、Pages: 256、 https://www.jstor.org/stable/j.ctt1nq1qr まだ日本語訳本はないようだ。)はいつか読みたいと思っている。

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