夾竹桃(キョウチクトウ)の毒性への振り返り ― 2024年10月13日
夾竹桃(キョウチクトウ)の毒性への振り返り
夾竹桃の毒性については紀元前のアレクサンダー大王の遠征軍隊での集団中毒死をはじめとした多くの中毒死例の逸話が知られており、その中毒例は現在もなお人畜共に時々報告されている。人の致死率は5~10%とも言われている。自殺・他殺・知識不足故の事故死・人工妊娠中絶の民間療法・インドでは性病潰瘍の塗り薬外用・健康補助サプリ等でも使われ中毒等が生じている。
毒性が強いということには誰も異論がないとは思うけれども、医学の発達した地域では殆ど死なないとか、バーべキューで死ぬというのは都市伝説であるとか、更には夾竹桃エキスのサプリの宣伝とか、という記述も見掛けるなど極端すぎる情報もあるので、それも言い過ぎではないかと思い調べてみた(本年4月には食品安全情報が出た㉟)。
調べてみると意外や意外、情報は伝言ゲームそのもので、両極端に分かれる。そしていかに人の心の奥底にまでその花の魅力が浸み込んでいるか、夾竹桃の花への思い入れは宗教にも近いように思えてきた。その個人の思い入れは説得で変わるものではないようだ。江戸時代後期1800年頃に渡来したこの新しい外来植物はその美しさ故かその逞しき生存力のためか底知れぬ人気があるようである。この自由平等の社会でさえも声が大きい方で社会の方向が決まるので自分なりの視点はしっかり見極めておかなければならない、そう思う。
その毒性は人に限らず人畜共通で枯葉等での家畜の死亡例も現在も時々報告されている。その毒性は花・樹液・枝・幹・根の植物全体に有毒成分がありそれらの枯葉・小枝・木の焼却時の煙や焼却灰自体も毒性があるという特徴がある。しかも焼却灰の毒性は1年以上残存しその土壌中で育った食物にも吸収されるという報告もある。インドやスリランカでは自殺目的や人工流産(中絶薬)目的でも使用されている。その他国によっていかがわしい民間療法やサプリで使われる場合もある。牛の流産は日本でもあった。(⑩⑲㉓㉔㉟)。これらの情報に間違いはないが、時と場所、毒性の程度等についてどこまで大げさに捉えねばならないかの視点が欠けていることに気付いた。
キョウチクトウの毒の主成分はOleandrinとされているが、そのほかにもジギタリス配糖体や非ジギタリス配糖体からなる総称強心配糖体だけでも30種類以上含まれ、他の化学物質も含むと100種類以上の成分が含まれると言われている。
その毒性は青酸カリの1000倍強いと言われていたり、過敏な人は近くに寄っただけで喘息発作が出たり、花の香りを深呼吸しただけで翌日に喀血したという例もあると言われている。(①~㉒)。
一方、過剰な心配故に都市伝説(根拠不明の口承話)であるとの指摘も最近されるようになってきている(㊷㊸)。
それは1999年にアメリカでのボーイスカウトがキャンプでホットドッグを夾竹桃の枝串を使って食べた所翌日皆死んだという話に疑問を持った人がファクトチェックとして実験をしたところ、死に至る程の毒物が検出されなかったと報告し(その原文を見るとmax 1.5mg/HotDogのOleandrinしか検出されなかった)、故に過剰な反応による都市伝説であると結論づけたものである。同様な報告は別にもあり(0.3~0.7mgのOleandrin検出。人の致死量は0.3mg/kgと言われる)、毒性に輪をかけた警告話として大げさに伝わったためであろうとしている。これら著者の言いたい主旨は受け止めるが、食べるのは1個で済むわけがない。これは一点のみからの明らかにバイアスがかかった見方であることが解る。
また、先進国では死に至る例はまれである等の論者の記載も見られるが、それらの例を調べてみると大量服用とあっても血中Oleandrin測定はされておらず、実際の毒素吸収量が不明であるものがほとんどである。とにかく嘔気嘔吐が酷いだけでなく苦いし辛いしとても食べられる代物ではないらしい。ジギトキシンで代用できないことは既に解明されている。またOleandrinを中心とした毒素の致死量は解明されているとはいえず、人にしても家畜にしても致死摂取量即ち毒素致死量とはならず、大量と思われても死ななかったり少量と思われても死に至ったり、決して一様ではないことが調べてみると分かる通り、まだ未解明の点もいまだに少なくないようである。好気性発酵の堆肥化がOleandrinの分解を促進することは確かだがそれでもキョウチクトウの剪定枝や葉を混ぜるべきではないと論文を載せた農研機構の報告書でも述べている(53)。
日本の厚労省は2024年の食品安全情報No.8/2024(2024.04.17)(㉟)において、米国FDAが、キバナキョウチクトウを含むサプリ等による健康被害が出たために警告を発し、一部会社製品の回収命令を出したと情報提供している。調べてみると日本でも対岸の火事ではないことが分かる(㊺)。
夾竹桃は原爆でも生き残ったという謂れ故に希望の花として受け入れられており悪環境にも強いために高速道路の街路樹や公園等に多く植栽されていてそこの土壌や環境を選ばず良好に生育する。世界的にも身近な植物と扱われており何処にでもあるという。心を癒す園芸植物としての根強い人気もある。実際福岡市教育委員会では一部の住民の意見で撤去しようとした所反対意見が出て朝令暮改で現状維持となり、一部の住民の意見がかき消されるほどに他の住民の意見もあったようで、他の自治体の対応もバラバラで調べてみるとネット上での注意情報程度でお茶を濁しているのが実情であるようだ。
熱にも強いその毒性は焼却灰になっても土壌の中で残りしかもその土壌で育った野菜にもわずかながら吸収される、という論文もある。しかしその残存毒性は直接中毒症状を起こす量からは程遠く微量であることもまた事実である。論文(55)のように半減期という見方をすれば、好気性発酵による堆肥化しなければ1年以上極微量ながら土壌中に残存しているという意見があってもおかしくはない。通念上、良くコントロールされた焼却炉により800℃以上で焼却した場合バラバラに分解されるといわれているが一方ダイオキシンが典型であるが冷却過程で再合成されたり、1100℃以上でもガスの再重縮合でPAHsは再合成されることが解っている(㊶,61,)。Oleandrinについては調べた限り無毒化の焼却条件について行ったデータは、不完全燃焼がどの程度係わっているのかを含めて、見つけられなかった。
更に焼却灰に毒性が残るか残らないかYES/NOだけで話を進めればまさに伝言ゲームになって仕舞う。かといって症状が出ないからと微量を飲み続けて良いかというとそうにはならないこともまた言うまでもない。ましてやキョウチクトウの粗抽出物をサプリに使うなどは論外である(有効成分を抽出しての使用は別)。あいだを採って「触るくらいは大丈夫、でも避けた方が良い」、という位が無難な表現かも知れない。
とにかく、キョウチクトウ植栽は幼児の手が届きやすい場所の児童公園や小学校、あるいは家畜の飼料に混入しやすい場所ではそれなりの配慮が必要と思うし、下記資料(72)の方が言う “欧米諸国では教育プログラム「身の回りの毒性植物」を実施して注意喚起に努めている” 等の周知への具体策を実行する姿勢は日本にも必要と思う。キョウチクトウに限らず有害植物は身近にも沢山ありそれらの判別知識は生きていくための必要な基礎知識なのだから。
(キョウチクトウ(夾竹桃)の猛毒性は更に幅広い周知が必要か?2023年8月2日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid0d7YbJaGGaGkXEJzFRdkjpGumeyedAAWgvcCdT3RC6JScttiWTmp7wtnfz7g4wt9Nl?__cft__[0]=AZXoITHLbyPaRUmOmMeejG-oXc672QujPvHz4SNLGBmmzhKHYi627CFq_kuurHE1hbain1ftUycwsF5duz4NAqJLLBdIHFE7MAItV4c-3cEzXXq_CFueZIBC-aTAkuGWSvE&__tn__=%2CO%2CP-R 。)
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人でのキョウチクトウ中毒の症例報告等:
① Fatal poisoning due to ingestion of boiled oleander leaf extract J Forensic Sci 2024 Jan;69(1):351-354. https://doi.org/10.1111/1556-4029.15393 。 【2024年 奈良県立医大から自殺目的で夾竹桃の葉を煎じて飲んだ結果の中毒死1例報告。Oleandrin血中濃度は33.4ng/ml。致死量は約10ng/ml・中毒量は1-2ng/mlとされる。交差反応するとも言われるジギトキシンも測定したが正常値でこの症例は交差反応はなかったと報告している。乳酸acidosis・高K血症・徐脈あり、ECMO等も行うも救急到着後2時間で死亡判定された。】
② キョウチクトウ中毒により完全房室ブロックを呈した 1 症例 松本 優他、兵庫県立尼崎総合医療センター 日集中医誌 2022;29:543-4. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/29/5/29_29_543/_pdf 。 【2022年 自殺目的で葉を煎じて飲み嘔吐して4時間後に救急入院したが6日目には軽快退院した。Oleandrinの血中濃度測定は未施行。キョウチクトウは尼崎市や広島市の市の花である。】
③ キョウチクトウ大量摂取の1例 神戸将彦他、群馬大学救急医学 北関東医学 70 (4), 359-362, 2020. https://www.jstage.jst.go.jp/article/kmj/70/4/70_359/_pdf 。 【2020年 自傷目的でキョウチクトウの葉12枚摂取して増悪する嘔吐のために摂取19時間後に救急入院し、5日目に軽快退院した。Oleandrin血中濃度測定はしていない。代わりにジゴキシン血中濃度を測定しているが正常値だったと報告している。】
④ キョウチクトウ中毒の1症例 門田奈実他 鳥取市立病院 日集中医誌 2012;19:685-6. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/19/4/19_685/_pdf 。 【2012年 女性45才が自殺目的で夾竹桃乾燥葉を手掌一杯服用して6時間後に救急搬送された。血中カリウム・ジゴキシン血中濃度は正常。3日目には軽快退院した。】
⑤ 鎌倉とオレアンドリン中毒(そのⅡ)神津仁の名論卓説e-doctor2月号20202.1.©Linkstaff https://www.e-doctor.ne.jp/c/kozu/2002/ 。(吸い込んだ本人:山田海人の鎌倉いきもの会議2017年6月8日 http://blog.livedoor.jp/kamakuraikimono/archives/8858058.html 。) 【2017年 花の香りを胸一杯吸い込んだ30時間後に喀血した例を報告している。危険を承知で胸一杯吸い込むだろうか。両報告には1か月のズレがあるが単なるミスプリかどうかは不明。】
⑥ キョウチクトウ中毒 武藤憲哉他 日集中医誌 2022;29:498-9. https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsicm/29/5/29_29_498/_pdf/-char/ja 。 【2022年 キョウチクトウ中毒8例中6例の生存・2例死亡を提示している。摂取量と中毒重症度との相関はないとする報告があると述べている。】
⑦ 植物性自然毒による食中毒が発生 平成29年12月15日 高松市保健所生活衛生課 https://www.city.takamatsu.kagawa.jp/udopen/press/attach/17/2017-01732_0_syokutyuudokunogaiyou2017.12.15_s.pdf 。 【平成29(2017)年に香川県内の小学児童2名が小学校校庭にあるキョウチクトウの葉を勘違いして3-5枚ほど誤食して入院し、軽快退院した。】
⑧ 9月夾竹桃(きょうちくとう)H27.09.07.理事長の部屋 桑名市総合医療センター https://www.kuwanacmc.or.jp/rijichoblog/1348/ 。 【1975年フランスで、バーベキューをしていて11人中7人の男女が死亡する事故が起来た。夾竹桃の枝をバーベキューの串に使ったためという。中には警察の捜査が行われたともあるが、しかし皆同じような表現の伝言ゲームのようで原典が見つからない。】
⑨ Electrocardiographic changes during inhalational oleander toxicity. S Senthilkumaran et al, Journal of Electrocardiology Volume 44, Issue 4, 2011, p 470-472. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022073610006230 。 【2011年 インドでの煙による中毒報告で、夾竹桃の小枝を燃やした煙を吸って家族4人がキョウチクトウ中毒を起こした。心電図上房室ブロックⅡ度やジギ中毒様異常が見られ4日目には正常化した。巷で良く言われるバーベキューでのソーセージの串焼きが原因のキョウチクトウ中毒死が都市伝説視されるようになったが煙に言及した報告は少ない。】
⑩ Cutaneous absorption of Oleander: Fact or fiction. J Emerg Trauma Shock. 2009 Jan-Apr; 2(1): 43–45. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2700576/ 。 【2009年 インドでの塗り薬による中毒報告で、1名は息切れ等で救急受診し心電図上MobitzⅡ型病変を認めたが対症療法で回復した。原因不明であったが陰茎潰瘍に気付き黄色夾竹桃成分を含んだ伝統医学の塗り薬を使っていることを突き止めた。伝統医学施療者から別の3例を聞き出した。3例とも梅毒と思われる陰茎潰瘍に塗り薬を使っていてキョウチクトウ中毒変化のECG異常を確認した。4人のうち3人は無症状だった。MobitzⅡ型は心停止の急変リスクの高い異常である。】
⑪ Accidental fatal poisoning in a child due to ingestion of Nerium oleander leaf. Sathish Ayyappan et al,Forensic Sci Med Pathol.2023 Dec 22. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38133853/ 。 【2023年 インドからの中毒死報告で、グアバ葉と勘違いして子供が服用して心腎不全・出血傾向・高K血症・ショック等で36時間後には死亡し解剖もしている。住環境には植栽すべきでないと言っている。】
⑫ A fatal case of self-poisoning through the ingestion of oleander leaves. Elena Azzalini et al, J Forensic Leg Med 2019 Jul:65:133-136. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31153008/ 。 【2019年 イタリアからの中毒死報告で、自殺目的でキョウチクトウの葉を服用して死亡、解剖にて致死量のOleandrinを確認している。この報告では、キョウチクトウ中毒が事故によるものが多く自殺目的での使用が少ないのは、その毒性を一般の人が知らないためであろうとしている。】
⑬ A non-fatal oleander poisoning. J. Pietsch et al. International Journal of Legal Medicine, Vol 119, p 236–240, (2005). https://link.springer.com/article/10.1007/s00414-005-0548-6 。 【2005年 Oleandrinの血中濃度の非致死性の中毒レベルは1-2ng/mlとしている。】
⑭ A case of non-fatal oleander poisoning. Behçet Al et al, BMJ Case Rep. 2010; 2010: bcr02.2009.1573. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3027391/ 。 【2010年 除痛目的で夾竹桃の花を煎じて飲んだ42才の担癌女性のキョウチクトウ中毒例の報告であり入院36時間後に回復退院した。通常は死に至るOleandrin致死量14.7ng/mlが検出されたにも係らず対症療法のみで回復生存した症例は初めてであると述べている。文献を含めた考察にて、交差反応をすると言われるジゴキシン血中濃度測定が正常でもOleandrin値は上昇しており当てにならず死亡例・回復例が混在している。Oleandrin血中濃度測定値は参考になるが、その中毒症状や治療内容はOleandrin血中濃度とは相関しない。Oleandrin血中濃度ほぼ10ng/mlでは何をやっても死亡してしまう例がある一方対症療法だけで回復する本例のような例もある。生体実験とも言えるカナダからの報告についても述べている。抗がん剤として第一相試験として認められた夾竹桃抽出物(Anvirzel)をボランティアに15mg筋注したところ3時間後のOleandrin血中濃度は7ng/mlだったと言いこの著明高値でも問題が起きないのはそのボランティアの個人的耐性があるとしか思われないと述べている。】
⑮ LC/MS/MS analyses of an oleander extract for cancer treatment. X Wang et al, Anal Chem. 2000 Aug 1;72(15):3547-52. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10952541/ 。 【2000年 上記Behçet Alらの報告にあるカナダからの生体実験とも思える抗がん剤phase1の報告である。(※キョウチクトウにはジギタリス配糖体を含む強心配糖体だけでも30種類以上含まれ、他の化学物質も含むと100種類以上含まれると言われている。同じ強心配糖体でもジギタリス配糖体は水様性でOleandrinは脂溶性である。)】
⑯ Confirmation of oleander poisoning by HPLC/MS. A Tracqui et al, Int J Legal Med. 1998;111(1):32-4. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/9457536/ 。 【1998年 自殺目的で夾竹桃中毒になり生還した45才女性のフランスから報告で、Oleandrin血中濃度は1.1ng/mlであった。測定法は高感度のHPLC/MSを行った初めての報告であると言っている。しかし資料56で示す如く臓器移行性が強く血中濃度だけではその毒性の判断が不十分であることが解ってきている。】
⑰ Deliberate Self-poisoning due to Plant Toxins: Verdant Footprints of the Past into the Present. Indian J Crit Care Med. 2021 Apr; 25(4): 392–397. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8138652/pdf/ijccm-25-392.pdf 。 【2021年 南インドの病院の自殺目的の植物毒中毒150例について報告している。夾竹桃使用例63%・oduvanthalai使用例50%だった(oduvanthalaiはタミル語で日本名は未だないが南インドの熱帯植物で自殺・中絶薬に使われる。コミカンソウ科で学名Cleistanthus collinusと言う)。致死率は9.3%。】
⑱ アマメシバ事件:都道府県等から報告されたいわゆる健康食品に係る健康被害事例について(お知らせ)平成15年8月22日厚労省 https://www.mhlw.go.jp/houdou/2003/08/h0822-1.html 。 https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/hokenkinou/6c.html 。 【2003年 上記文献⑰に関連したコミカンソウ科の健康食品アマメシバの長期服用で閉塞性細気管支炎の発症例があり裁判にもなった。販売禁止になっている。】
⑲ Management of acute yellow oleander poisoning. Eddleston M, et al, Q J Med 92:483–485. (1999). https://scholar.google.com/scholar_lookup?title=Management%20of%20acute%20yellow%20oleander%20poisoning&journal=Q%20J%20Med&volume=92&pages=483-485&publication_year=1999&author=Eddleston%2CM&author=Warrell%2CDA 。 【1999年 オックスフォード大学からキバナキョウチクトウ中毒の管理についての現状報告である。植物の強心配糖体は少なくとも12科の数十種類の植物に数百種類以上が確認されており、そのうちキョウチクトウは致死的な毒を持ちながら最も美しい花をも持つ熱帯性低木であると言っている。 この報告の時点では活性炭もジギタリス抗体も有効であろうと言っている(その後無効という報告も出た)。ジギタリス中毒とキョウチクトウ中毒では不整脈の性状に違いがあり、前者では心室性不整脈やVTが多いが後者ではVTは1%、心室性不整脈は8%にしか見られなかった。キョウチクトウはVF等による不整脈死が多いのではないかと推定し高K血症がその違いに係わっているかもしれないとしている。中毒致死率も英国では1%、開発途上国では20%であると言っている。スリランカでは1980年2人の少女が中毒死して大々的に報道されて以来、自殺目的のキョウチクトウ中毒が急増した(前年ゼロから10年後には年間103人ジャフナ病院に入院した)。キョウチクトウは世界中に見られアフリカでは矢毒に用いられ、インド・タイ・ブラジルでは自殺・殺人・流産・民間療法薬等にも使われている等も述べている。】
⑳ Toxicity effects of Nerium oleander, basic and clinical evidence: A comprehensive review. T Farkhondeh et al, Sage Journal, Online January 23, 2020. https://doi.org/10.1177/0960327120901571 。 【2020年 イランからの文献検索上のレヴューで、ヒト症例・動物実験結果等からその中毒の実態の要約をしている。全身臓器に様々な所見を呈する。肺:間質も肺胞内も気管支粘膜も出血・浮腫・うっ血・炎症細胞診潤等あり、肝臓:様々な程度の浮腫・出血・変性壊死・細胞浸潤等あり、心臓:うっ血・心筋繊維変性断裂空胞変性凝固壊死・間質浮腫・心筋組織出血・心内膜下出血・炎症細胞診潤等あり、血液:出血班は口内・胃・肺等にある、等臓器別にも詳しく述べている。毒性致死量に関しては動物によって感受性が違うこと、ヒトでは同じ量でも生還することもあれば死亡することもあること、子供は感受性が高いこと、等ありNa,K-ATPase阻害がその本態とされるがその毒性の分子学的機序はなお未解明としている。結論として毒性植物のキョウチクトウは子供や動物の中毒防止のために庭園や公共用地には植栽すべきではないと総括している。】
㉑ Self-harm and self-poisoning in southern India: choice of poisoning agents and treatment. Anuradha Bose et al, A Europian Journal of Tropical Medicine and International Health. Vol 14, Issue 7 Jul 2009, p709-837. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.1111/j.1365-3156.2009.02293.x 。 【2009年 に南インドの2年間の田舎の自殺についての調査報告で、服毒自殺は31%、そのうち農薬服毒死は78.3%、有毒植物服毒死は19.7%。その有毒植物は主にキバナキョウチクトウとoduvanthalai(⑰参照)だった。インドでは自殺は犯罪とされているので自殺未遂を含めるとその実数は大幅に過小評価されているという。】
㉒ Epidemic of self-poisoning with seeds of the yellow oleander tree (Thevetia peruviana) in northern Sri Lanka. M. Eddleston et al, A Europian Journal of Tropical Medicine and International Health. Vol 4, Issue 4, Apr 1999, p243-318. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1046/j.1365-3156.1999.00397.x 。 【1999年 (⑲参照、同人報告)スリランカの二次医療機関であるアヌラーダプラ病院で1995年に実施された罹患率・致死率の結果の報告である。この報告時点でスリランカ国内のキョウチクトウ中毒は急増し年間数千例となり、同病院だけでも過去7年間で4倍に増加したという。11か月間で415人が入院し61%が女性でしかも21才未満が46%を占めた。しかもそのきっかけは子供の場合大半が死にたいと思って自殺行為に及ぶわけではなく些細な理由だったという。前向き研究をした79名中5名(6%)は入院直ぐ死亡、34名(43%)は房室ブロックⅡ~Ⅲ度、ペースメーカー処置に救急車移動で4時間かかり移送中にうち1名死亡、40人は生還退院した。徐脈や伝導障害が多くVTは稀だった。致死量については摂取量との直接関係は見いだせず、しかも3日以上経ってからAVブロックⅡ度に陥った例もあった。致死率は10%或いはそれ以上であった。】
家畜のキョウチクトウ中毒:
㉓黒毛和種繁殖雌牛群に発生したキョウチクトウ混入粗飼料給与によるオレアンドリン中毒事例. 2011年10月発生、大分保健所 大分県 https://www.pref.oita.jp/uploaded/attachment/178943.pdf 。 【2011年 牛計170頭を飼育する農場で、夾竹桃の枯葉が混入した飼料で牛16頭が死亡した。他の牛の中毒症状が収束するまで1か月半を要し、流産した牛もいた。夾竹桃枯葉の混入した飼料は知人から譲り受けたもので危険の認識はなかったという。調査の結果から個体ごとにオレアンドリンに対する感受性(致死量)が異なっていたのではないかと推定している。】
㉔有毒植物による中毒の再発防止対策 キョウチクトウ中毒2015年7月発生 紀南家畜保健衛生所 和歌山県 https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/070400/h27kentoukai_d/fil/05niwa.pdf 。 【2015年 夾竹桃枯葉の飼料混入により飼育牛5頭のうち2頭死亡、1頭流産した。周辺畜産農家を調べたところキョウチクトウ以外にも毒性植物が身近にあり牛の流産もその為と判定している。】
㉕431 キョウチクトウによる牛の死亡事故発生事例、鹿児島県 農林水産省 家畜衛生の進歩 No.39 全国家畜保健衛生業績抄録 平成17(2005)年度(平成18年4月 農林水産省消費・安全局動物衛生課) https://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/katiku_yobo/k_kaho/pdf/syoroku_47.pdf 。 【2005年 鹿児島県内の農家で牛の下痢が散発していてそのうち重篤な牛2頭が死亡した。解剖で出血病変を認めるも原因特定には至らなかったが現場への立ち入り検査で野草飼料中の夾竹桃の枯葉を確認。刈り取った場所に夾竹桃が植えてあり周囲に枯葉も散在していたため血中Oreandrinを測定した所50ng/mlの著明高値だった。】
㉖千葉県の農場で昭和55(1980)年に飼料にキョウチクトウの葉が混入し、乳牛20頭が中毒をおこし、そのうちの9頭が死亡した。混入した量は、牛1頭あたり、乾いたキョウチクトウの葉約0.5g程度だったという。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A7%E3%82%A6%E3%83%81%E3%82%AF%E3%83%88%E3%82%A6 。 【1980年に発生 どういうわけか行政からの発出文書が見当たらない。夾竹桃は千葉市の市花である。】
㉗A Probable Fatal Case of Oleander (Nerium oleander) Poisoning on a Cattle Farm: A New Method of Detection and Quantification of the Oleandrin Toxin in Rumen. Silva Rubini et al, Toxins (Basel). 2019 Jul 25;11(8):442. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31349685/ 。 【2019年 イタリアの牛肥育農家で牛6頭全部が夾竹桃中毒で死亡した。野草飼料中の夾竹桃葉の含量は2.6%であった。また夾竹桃自体の強心配糖体総含量は0.08%でありその主なものはOleandrinである。その飼料中の葉のOleandrin濃度は2.7mg/g、第1胃中の胃液中300ng/ml、胃固形物中294ng/gであった。牛死亡発見翌日に獣医に連絡があったために死後時間が1日以上経っていて既に腐敗が始まっていたためキョウチクトウ中毒は確かだが一部の牛は通報が速ければ助かっていた可能性も否定できないと言っている。毒素検出法には新たな分析法LC-HRMSを導入した初めての報告であると言っている。考察ではキョウチクトウの致死的毒性は昔から周知されていることなのに未だに同様なことが繰り返されていることが懸念事項で相変わらず家畜も人も中毒例の報告が繰り返されているために、Oleandrinの化学的性状から家畜への被害や人の致死量の問題まで幅広く論述している。キョウチクトウには強心配糖体が30種類以上含まれ、同じキョウチクトウでも強心配糖体の詳細成分はその部位、根=種>実>葉で異なり花の色も白色より紅色の方が毒性は強い。一般に強心配糖体は100種類以上知られているがジギタリス配糖体とそれ以外の強心配糖体に分けられ、ジギタリス配糖体は初めヒキガエル等から皮膚障害物質として発見されたがキョウチクトウの強心配糖体は乾燥しても毒性が保たれ、燃やした煙にも毒性があるという特徴がある。ジギタリス配糖体は水様性だがOleandrinは脂溶性である。バーベキューというと串による中毒が神話の如く強調されているがこの論文ではバーべキュー時の煙による中毒例を示している。牛の致死量については、成牛一頭当たり葉3~10枚・50mg/kg・110mg/kg等と報告により大きなバラツキがある。人の子供では1枚でも致死量になり得る。懇切丁寧に詳しく報告している論文である。実際のヒト報告例は大量に服用しても回復した例が多いようであるが酷い嘔気嘔吐が必発であること、夾竹桃毒の保持は植物間でもその部位間でも大きく異なること等から摂取量は毒吸収を反映していないのではないかとも考えられる。実際、米国マウントサイナイ病院のキョウチクトウ中毒の項には症状はあらゆる臓器に及び致死率は低いものの成人でさえも葉1枚でも死亡し得る、としている(Oleander poisoning https://www.mountsinai.org/health-library/poison/oleander-poisoning )。】
夾竹桃の毒性等の説明:
㉘『ビジュアル「毒」図鑑250種』齋藤勝裕著 2023年 秀和システム発行 https://www.shuwasystem.co.jp/book/b623719.html 。 【毒の専門家による本。キョウチクトウについて正当な説明がなされている。原爆復興のシンボルとなったこと、燃え難いので耐火樹として知られて乾燥や大気汚染に強く街路樹や高速道路によくみられること、有毒故に食害昆虫は少ないがキョウチクトウアブラムシ・シロマダラノメイガ幼虫・キョウチクトウスズメの幼虫が寄生して育つこと、毒性は樹の全ての部分・周辺の土壌・生木を燃やした煙・腐葉土にしても1年間は毒性が残ること・家畜飼料に1頭当たり乾燥葉0.5gが混入して牛16頭が死亡したこと等が記載されている。】
㉙『毒草を食べてみた』植松黎著 文春新書099文藝春秋 2000年発行 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%92%E8%8D%89%E3%82%92%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%81%A6%E3%81%BF%E3%81%9F 。 【毒草に造詣の深い著者が書いた本で驚いて購入して読んで見た。1話~44話で構成されており、驚異の表題であるが実際は3種以外は口に入れてはいない。1話のドクウツギはその実1粒を口に入れて吐き出したがラリッた状態で睡眠薬中毒のようになったと書いてあった。その後果実酒を飲んで生死をさまよった実例を聞き悪夢のような症状に陥らなくて良かったと振り返って胸をなでおろしたという。第3話の夾竹桃については全く試そうとはせず、逆に高速道路の生垣について「道路が火事になることなど考えてもいないのだろう、その時こそキョウチクトウが恐るべき毒草として復活する日なのではないだろうか」と皮肉を込めた感想で終わっている。】
㉚ キョウチクトウの乳液が有毒とされるがそもそもキョウチクトウが乳液を出すのか?2016.3続・樹の散歩道205,木のメモ帳 https://kinomemocho.com/sanpo_oleander.html 。 【夾竹桃についての体験に基づいた記録で分かり易く解説している。樹液で皮膚炎を起こす。キョウチクトウとセイヨウキョウチクトウは日本では変種扱いだが日本以外は同義語扱いだと言っている。またインド原産と言っているのは日本だけでインド自体もインド原産の自覚はなく、一般的には原産地は地中海沿岸や南西アジア・インドを含む広い地域が起源とされる。花の芳香は有るもの無いものがある(強心配糖体はラクトン環を持つので芳香を持つものが多いがないものもあるということ)。花には蜜がないとされるが科学的根拠は未だにないし、結実も滅多にしないとされるが実際はする。現に前橋公園の夾竹桃も毎年結実している。しかし花の蜜によるハチミツ中毒は心配ないという。レンゲツツジ・トリカブト・シャクナゲ等の花の蜜が混入して発生したハチミツ中毒と違って夾竹桃ではその蜜が混入する心配はないという。】
㉛ 医薬品情報21 夾竹桃(Oleandere)の毒性 古泉秀夫 2004.8.17. .http://www.drugsinfo.jp/2007/12/10-231834 。 【夾竹桃の毒性についてコンパクトにかつ詳しく纏めて説明している。強心配糖体の一部にジギタリス配糖体がある。致死量は0.3mg/kgとしている。フランスで7人が死亡したことにも言及している。】
㉜ Na,K-ATPaseの反応機構とNa,K-ATPaseをターゲットとする薬物。鈴木邦明,北海道歯学雑誌 第38巻 第1号 p16-27.(2017) https://eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/67303/1/38_01_02_Suzuki.pdf 。 【ほぼすべての動物細胞膜に存在するNa,K-ATPaseを専門に研究してきた方の説明である。心臓への作用はほんの一部で全身あらゆる臓器の症状を呈する理由が分かる。】
㉝ Oleander poisoning. The mount Sinai Hospital https://www.mountsinai.org/health-library/poison/oleander-poisoning 。 【2024年時点:この米国マウントサイナイ病院のキョウチクトウ中毒の説明にあるように、実際キョウチクトウ中毒に対応する救急現場では、症状は心臓等循環器に限らず胃腸・神経系・目・耳・鼻・口・喉・皮膚などあらゆる臓器に出現し得る。ここでは致死率は低いとなっているがたとえ1枚の葉でも成人が死に至ることもある毒であるといっている。服用量と致死率の相関はないということにも矛盾しない。酷い嘔吐は必発である。】
㉞ キョウチクトウ抽出物、その医薬組成物及びその調整方法 https://patents.google.com/patent/JP2002526452A/ja 。 【2002年特許 キョウチクトウ(Nerium oleander)の100種以上の化学物質が含まれているとしている。ジギトキシンとの交差反応成分があるとしてもそのごく一部と思われるので患者の毒性成分分析の代用はできないと思われる。】
㉟ 食品安全情報(化学物質)No. 8/ 2024(2024. 04. 17)p.37-38.国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部 厚労省 https://www.nihs.go.jp/dsi/food-info/foodinfonews/2024/foodinfo202408c.pdf 。 【2024年 米国FDAが、キバナキョウチクトウを含むサプリ等による健康被害が出たために日本でも警告を発し、一部会社製品の回収命令を出したと情報提供している。】
㊱ 高知県の外来植物2019調査報告書(牧野植物園) https://www.makino.or.jp/img_data/PAGE_science-new_2_19.pdf?8 。 【高知県立牧野植物園はキョウチクトウ7種について、甚大な被害が予想されるため対策の必要性が高い「重点対策外来種」に挙げている。それには日本で一般的にみられるものと思われるNerium oleander L. var. indicumも含まれている。】
㊲ Quantitative variations in the cardiac glycosides of oleander. Yamauchi T, et al Phytochemistry 22:2211–2214, (1983). https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0031942200801491?via%3Dihub 。 【1983年 同じキョウチクトウでも個々でOleandrinの含有量は大きく異なると報告している。キョウチクトウの毒性を軽く見るか重く見るかの個々人の判断の違いの原因の一つと言えそうだ。】
㊳ Oleandrin: A Systematic Review of its Natural Sources, Structural Properties, Detection Methods,Pharmacokinetics and Toxicology. Jinxiao Zhai et al. Front Pharmacol. 2022; 13: 822726. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8902680/pdf/fphar-13-822726.pdf 。 【2022年 中国の大学からの報告で包括的レビューである。同じ強心配糖体のジギタリスについては豊富なデータがあるがOleandrinについてはデータ不十分で殆ど解っていないと言う中で、乏しい症例報告内容と動物実験データを併せて考察をし、P糖タンパク等の個々の遺伝子多型の違い・腸内細菌叢の違い・などで個々の反応の違いがあるらしいとし、体内薬物動態について吸収・体内分布・代謝・排泄に分けて特に詳しく著者の考えを述べている。実験的に筋注や静注・腹腔内投与よりも内服の方が排泄遅延するのは腸肝循環があるためだとしている。血液脳関門も容易に通過しこれは神経症状の発現に直接繋がる。全身のあらゆる臓器障害も生じる。なおここではキバナキョウチクトウの毒はOleandrinではなくThevetinAが主だとしている。】
㊴ A review of the natural history, toxinology, diagnosis and clinical management of Nerium oleander (common oleander) and Thevetia peruviana (yellow oleander) poisoning. Veronika Bandara et al, Toxicon. 2010 Sep 1;56(3):273-81. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20438743/ 。 【2010年 レビュー報告】
㊵ Review of Current Evidence in Management of Oleander Poisoning. Vineeth Varghese Thomas et al, Current Medical Issues 20(2):p 82-88, Apr–Jun 2022. https://www.researchgate.net/publication/360429948_Review_of_current_evidence_in_management_of_oleander_poisoning 。 【2022年 レビュー報告】
㊶ 焼却とダイオキシン問題について考える.2003年2月1日 塩ビ工業・環境協会 坪田勝也. https://www.vec.gr.jp/mag/02/koramu.html 。 【加熱でも土壌中でもすぐには分解しないキョウチクトウ毒素の焼却処分は如何なる条件ならば安全か、それはダイオキシン問題での議論が参考になる。この資料は素人でも分かり易く説明している。一時期、目の敵のようにマスコミをはじめとしたダイオキシンへの攻撃は平成11年「ダイオキシン類特別処置法」が制定されて一段落した。以後、野焼きは原則禁止になってしまったが、そもそもダイオキシン発生が抑えられるのは「良い燃焼条件」がそろった場合の事でそうでなければ何を燃やしてもダイオキシンに限らず有害物質は排出してしまう。キョウチクトウ焼却も同じと考えてよいようだ。「良い燃焼条件」でなければダイオキシンに限らずHCNやPAHs(多環芳香族炭化水素、発癌物質や内分泌攪乱物質)をはじめとした公害物質が発生する必然がある。地球上に宇宙放射線がある様に、あるいはどの原発でも稼働する以上必ず出るトリチウム(半減期12.3年)の存在が避けがたいように、あるいは原爆実験で既に出来てしまったプルトニウム239(半減期2.4万年)が避けがたいように、焼却で有害物質ゼロにすることは不可能なのである。800℃以上ならばダイオキシンも分解し得るとしても発生したガスが冷却する過程で再重合によりダイオキシンが再生するという。PAHsは石油製品の不完全燃焼で多く発生すると言われるが木材でさえもその成分のリグニンからPAHが生成される。防腐剤や合剤が混ざっていれば尚更だ。PAHの一部のベンゼンやトルエンは800℃を超えても増加し1500℃でも生成するという。NOxは1200℃以上なら逆に急激に増加し、ABS樹脂で出るHCNは1200℃以上にならないと分解しないという。完璧は無理のため現実の焼却炉は800~1000℃の維持コントロールが目標であるという(別資料)。しかも焼却後ガスは200℃以下に急激に下げないとその間に再重合も起き易い。ガス冷却と集塵フィルターも当然必要になる。無機化した焼却灰や飛灰だけではない。これらの後工程がそろって初めて「良い燃焼条件」というが、そのためには終日運転が必要とされているという。一方経費が掛かるために一旦導入した終日運転の自治体も最近撤退の動きが出て来ているという現実もある。とにかく焼却条件を知って折り合いをつけてヒトが生きていかなければならない。その一端を教えてくれる資料である。】
都市伝説(根拠不明の口承話)あるいは夾竹桃毒性の軽視、逆に有効利用を考える資料、その他:
㊷ Oleander Poisoning by D Mikkelson Updated July 30, 2011 Fact Check Snopes.com https://www.snopes.com/fact-check/fatal-wienie-roast/ 。 【2011年 max 1.5mg/HotDogのOleandrinしか検出されなかった故に過剰な反応による都市伝説であると結論づけている。しかし食べるのがホットドッグ1ケだけとは思われないのでこの報告もfact checkとあるが眉唾の域を出ない。】
㊸ Negligible Oleandrin Content of Hot Dogs Cooked on Nerium oleander Skewers. J Suchard et al, Journal of Medical Toxicology (2021) 17:57–60. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7785611/pdf/13181_2020_Article_805.pdf 。 【2021年 HotDogに0.3~0.7mgのOleandrinしか検出されなかったので、毒性に輪をかけた警告話として大げさに伝わったためであろうとしている。】
㊹ キョウチクトウ中毒 木の枝や葉を家畜に与えない 家畜疾病図鑑Web(動物衛生研究部門 山中典子)国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 https://www.naro.affrc.go.jp/org/niah/disease_dictionary/other/o14.html 。 【2021年 口に入れない限り葉や幹に触っても中毒を起こすことはない、としている。漆と同じで大部分のヒトには大丈夫であろうことには同意できる。】
㊺ 庭園から食料品まで: 食品および飲料におけるキョウチクトウエキスの台頭© 2024 市場調査インテリジェンスMarket Research Intellect https://www.marketresearchintellect.com/ja/blog/from-gardens-to-groceries-the-rise-of-oleander-extract-in-food-and-beverages/ 。 【2024年 毒性だけでなく使い方によってはサプリメント・スキンケア・抗がん作用・抗ウイルス作用・抗炎症作用等有用であると宣伝している。しかしアマメシバ事件の如くじわじわと体を蝕む事例があるので慎重になる必要があるであろう。(※キョウチクトウにはジギタリス配糖体を含む強心配糖体だけでも30種類以上含まれ、他の化学物質も含むと100種類以上の成分が含まれると言われているからである。因みにホメオパシーと言われる怪しい民間療法は効果のない代替療法とされている。)】
㊻ キョウチクトウ科植物由来抽出物による炎症促進性型M1マクロファージ活性化と破骨細胞分化の抑制 石田千賀他 日本薬理学会年会要旨集95_3-P-164,2022年 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpssuppl/95/0/95_3-P-164/_article/-char/ja/ 。 【2022年 実際有用性研究のための試みもなされていて、これはキョウチクトウ抽出物の抗炎症効果の実験段階の報告である。本来、毒を治療に結び着けようとの発想は正常細胞と癌細胞等との感受性の差を利用するもので正常細胞には一時的に耐えられても毒は毒なので、その抗炎症成分を分離確認しない限り、粗抽出物を人間のサプリに応用しようとの発想はもっての外であるが、結びつけようとする業者がいるのには驚く。】
㊼Food Poisoning by Oleander Skewers: Investigation of a Toxicologic Urban Legend. Jeffrey R. Suchard et al, Journal of Medical Toxicology, Vol 20, p 222–225, (2024). https://link.springer.com/article/10.1007/s13181-024-00993-3 。 【2024年 この著者は2021年にもキョウチクトウの串焼きのホットドッグにはオレアンドリンがほとんど含まれていないと報告している(㊸)。】
㊽ 福岡市が学校のキョウチクトウ伐採 ?2009年12月17日 Gooブログ 筑紫の国から『花つくし日記』 https://blog.goo.ne.jp/shitorin/e/87fc0e4e871fc1781ca39bf413be7dc3 。 【2009年 学校のキョウチクトウ伐採 福岡市教委、一転見送り 「安易に切らないで」指摘受けて朝令暮改。】
㊾ YAHOO!Japan知恵袋:2009/12/11 キョウチクトウ伐採、福岡は国中の笑いものですか? https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1033989595 。 【2009年 福岡市教育委員会の対応は決して馬鹿にできるものではないと思うが、この質問に対する回答の数々が面白い。単なるyesかnoだけの意見で解り合えない溝の典型に見える。】
㊿ 毒がある夾竹桃(キョウチクトウ)をなぜ植える?5つの理由をご紹介します2022年12月11日 https://rs-hamada.net/?p=6713 。 【2022年 有毒にも係らず広く植栽されているその一般的な理由をのべている。】
51 急性中毒への活性炭投与は効果なし 死亡率の低減効果見られず Lancet誌2008年2月16日号より 2008/03/10 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/hotnews/lancet/200803/505682.html 。 【2008年 農薬中毒又はキバナキョウチクトウ中毒患者のRCTで活性炭使用の有無での効果の有意差無しだった。但し治療開始までの平均時間が4時間経っていたのでもっと早かった場合の効果は不明。】
52 水田の(復古化)のためのキョウチクトウを利用したジャンボタニシ駆除の有効性解明. 池田充著 科学研究費助成事業 研究成果報告書(文科省) 令和2年5月25日(2020). https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-19H00312/19H00312_2019_seika.pdf 。 【2020年 バケツ稲栽培でのキョウチクトウ乾燥葉の有効性の検討を行い、有害ジャンボタニシは即座に死滅できた。メダカやオタマジャクシは更に簡単に死滅した。毒性成分のOleandrinは収穫米には検出されなかった。】
53 キョウチクトウ剪定枝混入豚ふん堆肥の施用による作物へのオレアンドリン移行可能性の検討.二宮恵介他 沖縄県畜産研究センター研究報告 第56号p11-16.(2018) https://www.pref.okinawa.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/011/275/56_03_2018_56-03_02-03_kachiku_haisetsubutsu_taihi-kanri_gijutsu.pdf 。 https://www.naro.go.jp/laboratory/karc/prefectural_results/files/30_3_18.pdf 【2018年 豚ふんに粉砕したキョウチクトウ剪定枝を14.3%混ぜて堆肥化(一週間ごとに好気発酵のために切り返し)、3週間後にはOleandrinは21%まで減少した。その3週間目の堆肥の5%を土壌に混入して小松菜を栽培した所、堆肥の濃度のごく一部0.0063μg(堆肥濃度の10万分の1以下)が小松菜に吸収された。Oleandrin測定は高感度のHPLC-MS/MSを使っている。考察では著者もこの要約を載せた農研機構も混入は避けるべきであるとしている。特に農研機構はキョウチクトウ剪定枝の利用を推奨するものではないと釘を刺している。 】
54 オガコ養豚における粉砕剪定枝の利用確立試験(3)キョウチクトウ混入剪定枝の堆肥化処理による効果の検証,嘉数良子他,沖縄県畜産研究センター研究報告,第54号.99-103.(2016) https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010912210.pdf 。 【2016年 前記期論文53.の2年前の論文で、キョウチクトウ剪定枝と乾燥葉を併せた堆肥化の検討である。3週間でOleandrinは1.44%まで減少したと報告している。考察では、Oleandrinは分解され低減したがそれ以外の毒性は不明のままなので更なる検討が必要としている。ここでは成牛450kgの致死量は6.08mgでキョウチクトウ乾燥葉は0.27μg/gのOleandrinを含むとしている。】
55 Toxic potential of oleander derived compost and vegetables grown with oleander soil amendments. Jim Downer et al, Vet Hum Toxicol. 2003 Aug;45(4):219-21. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12882497/ 。 【2003年 Oleandrinは堆肥化によって半減期が15日となり、50日で10%まで分解される。Oleandrinの野菜への吸収は一部に極微量が検出されたほかは検出されなかったとしている。考察ではOleandrinの土壌汚染については更なる研究をしたいと記しているが調べた限りではその後の論文は提出されていないようである。】
56 Outbreak of Oleander (Nerium oleander) Poisoning in Dairy Cattle: Clinical and Food Safety Implications . by Luigi Ceci et al, Toxins 2020, 12(8), 471. https://www.mdpi.com/2072-6651/12/8/471 。 【2020年 イタリアの農場で乳牛50頭のうち13頭が死亡した。解剖して血液中にはOleandrin 1ng/mlだったが臓器中にはその約15倍の濃度のOleandrinが検出された(ほぼ心臓15ng/ml,肝臓16ng/ml)。製造されていた牛乳・チーズ中にも検出された(牛乳1.3ng/ml,チーズ0.8ng/ml)。Oleandrinは脂溶性である。消費者にも影響し得る報告の最初であると言っている。測定法はUHPLC-MS/MSに依った。そのほかキョウチクトウ中毒の概況、症状等についても詳しく説明している資料である。キョウチクトウ中毒の症状は動物種によっても牛個々によっても違うとしている。キョウチクトウ中毒はヒトでは自殺目的が一般的であるが、動物の場合はキョウチクトウの味は苦くて辛いので動物も普通は食べないが偶発事故で頻繁に牛などの動物で発生しているとしている。その症状は、元気がなくなり反芻が無くなり不整脈や下痢だけでなく全身臓器に様々な症状が出得る(牛の場合下痢はあるが嘔吐はない?)。病理学的所見は実験的に中毒させた羊での報告と同じという。幸いなことに人は嘔吐する症状がある事でリスク低減効果があるとしている。牛は感受性が高く致死量は50mg/kgで羊はその5倍の250mg/kg、ヒトの子供は葉1枚でも致死量になり得るとしている。】
57 Toxicity of Oleander Derived Compost. James A Downer et al, EJ Slosson Endowment, University of California, Division of Agriculture and Natural Resources. (1998) https://slosson.ucdavis.edu/newsletters/Downer_199829067.pdf . 【1998年 上記論文55の基礎資料と思われる。キョウチクトウ毒性低下には堆肥化が極めて有効としている。野菜の栽培には堆肥化前のキョウチクトウ粉砕物を使っているが1例を除いてレタス・トマトにOleandrinは検出されなかったと報告している。論文55と57の著者の名前は一部違うが経歴書によれば同一人物である。】
58 ポリエチレン熱分解に及ぼす雰囲気並びに分解温度の影響。山村光夫著,分析化学,1983年32巻4号 p. 228-233. https://www.jstage.jst.go.jp/article/bunsekikagaku1952/32/4/32_4_228/_pdf 。 【1983年 ポリエチレンを空気下の300~800℃で熱分解の実験で、分解生成物はPAHs(ベンゼン・トルエン・スチレン等の芳香族炭化水素)が温度に伴って増加生成しアルデヒドも伴って出現した。】
59 炭化水素熱分解における多環芳香族化合物の生成機構。三枝直路他,化学工学会 研究発表講演要旨集化学工学会第40回秋季大会2008年9月 https://www.jstage.jst.go.jp/article/scej/2008f/0/2008f_0_230/_pdf 。 【2008年 エチレンガス等を高温下で注入してのPAHs生成機構についての研究で1100℃を超えてもPAHsが生成されるようだ。】
60 熱分解プロセスにおけるタールおよびコーク生成機構の解明と反応速度論に関する研究。香束,明広著,2014 年,京都大学 工学博士論文(工博第3909号) https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/189366/1/dkogk03909.pdf 。 【2014年 熱分解プロセスでPAHsがより大きなPAHsに成長する機構についても述べている。】
61 廃木材のリサイクリングに伴う重金属類,PCP,ダイオキシン類及び多環芳香族炭化水素への曝露。浅利美鈴他, 環境化学Vol.13,No.1p77-88.(2003) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jec1991/13/1/13_1_77/_pdf 。 【2003年 廃木材にはヒ素等重金属・防虫防カビ剤等の様々な木材保存剤が含まれている。焼却・リサイクルそれぞれの場面での暴露の程度について検討している。】 62 焼却残さ資源化システムとは?太平洋セメント https://www.taiheiyo-cement.co.jp/service_product/recycle_mw/hai/index.html 。 【2024年時点 焼却に伴って出る焼却残さ(焼却灰や煤塵)のセメント原料への再利用について解説している。】
63 処理方式の検討(資料 5-3)明石市:市政情報>審議会等>設置している審議会等>新ごみ処理施設整備技術支援会議(第1回技術支援会議 配布資料)令和元年10月16日 http://www.city.akashi.lg.jp/kankyou/shigen_junkan_ka/sinnro/documents/1-5-3shorihoushiki.pdf 。 【2019年 可燃ごみの焼却方式の分類と特徴について分かり易く説明している。】
自治体によって異なる対応 その他の資料:
64 愛知県安城市:小学校校庭の夾竹桃の撤去の要望が住民より有ったが撤去せずの返答あり 令和元(2019)年6月 https://www.city.anjo.aichi.jp/shisei/jouhou-hassin/2019koe/0619.html 。 【2019年 小学校校庭のキョウチクトウ撤去依頼の意見に対して、有益な面もあるとして拒否している。いかに福岡県教育委員会の朝令暮改の件が影響しているかを物語っている。キョウチクトウへの愛着者がいかに多くいるか、それ故敵に回したくないとの教育委員会の思惑が働いていることを示している。(㊽参照)】
65 愛知県江南市:剪定枝・草 https://www.city.konan.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/248/eda.pdf 。 【2024年時点 《夾竹桃(キョウチクトウ)の処分について》毒性が強く、堆肥化できないため、受入不可。但し、他の枝草とは別々にし「可燃ごみ」もしくは「焼却場へ持込み(200 円/10kg)」での処分をお願いします、となっている。】
66 佐世保市が指定する「市の花」はどれでしょう?2021年12月11日させぼ通信編集部。 https://sasebo2.com/entertainment/quiz/19400/ 。 【2021年 昭和43(1988)年佐世保市がキョウチクトウを市の花に指定した直後に牛が葉を食べて中毒死して物議を醸し平成14(2005)年市制施行100周年を機にカノコユリに変えた。一方、鹿児島市・千葉市・広島市はキョウチクトウが市の花である。】
67 大阪府:府民の声 公表(詳細) https://www.pref.osaka.lg.jp/cgi-bin/citizen_voice/detail.php?id=16896&site=f-koe2 。 【2022年 公園の夾竹桃の撤去希望の公表のみでそれに対しての回答無し。】
68 栃木県真岡市:夾竹桃(キョウチクトウ)の捨て方・処分方法. https://www.city.moka.lg.jp/kakuka/kankyo/gyomu/gomi/bunbetsu_shushu/11394.html 。 【2024年時点 燃えるゴミで出して良いとしている。】
69 千葉県福津市:家庭ごみ の 出し方 令和6年度保存版 https://www.city.fukutsu.lg.jp/material/files/group/21/R6kateigomi.pdf 。 【2024年時点 庭木の剪定くず・草類:夾竹桃は毒性があるため出せません。剪定くず・草ステーションでも出せないとなっている。但し燃やすごみ項に記載なし。】
70 沖縄県南風原町:平成26年第4回定例会 会議録(第4号-2) http://www.town.haebaru.lg.jp/docs/2016081600013/ 。 【2014年 町内各公園の毒性樹木の管理について(1)と(2)は関連しますので一括して答弁しますとして、一部は撤去し、一部は札を立て清掃員が毎日チェックしていると答弁している。毎日チェックする方は大変だと思う。】
71 キョウチクトウの毒はどのくらい危険?なぜ広島では平和の象徴?蜜を分泌しないキョウチクトウの花は絶滅種に擬態していた!? https://ecological-information.com/archives/2647 。 【2022年 一般的な説明だけれど根拠を示しているところに共感を持てる。】
72 夾竹桃 EGGSEED 2023年7月26日 # 植物図鑑 『有毒編』note https://note.com/eggseed13/m/m3308346cfac1/archive/2023-07 。 【2023年 フランスでの1975年のバーベキュー7人死亡事故以来、欧米諸国では教育プログラム「身の回りの毒性植物」を実施して注意喚起に努めているのに比べて、日本にはこんな大事なプログラムがないと嘆いている。そしてその教育プログラムの実例を示している。 】
73 Behind Puducherry’s suicide problem. 20 Mar 2015,by Ashwaq Masoodi, mint(e-paper) https://www.livemint.com/Politics/PqUjAR1Fn62kjeCsM0ay8M/Waves-of-despair.html 。 【2015年 南インド東海岸の元フランス植民地である通称ポンディシェリー(プドウチェリー)での新聞Mintの報道(2015年3月20日)。インドでは若者の自殺率が世界で最も高いとWHOは指摘している。特に当地域ではインド平均の3倍自殺が多く、そのよく知られている自殺方法の一つであるキバナキョウチクトウを食べて20歳の女性が家庭内不和で自殺したことをきっかけに、その背景について報告している。特に若者の自殺が多く、自殺に対する偏見があるために実際はもっと多いかもしれないという。高所得国の自殺の90%が精神ストレスによるとされるがインドでは60%しかなく自殺の他の要因が多く複雑に絡み合っている結果という。当地域の識字率は85.8%と全国平均の74.04%より高く、観光地としても有名な地域である。大学院生や博士号取得者や教授さえ自殺しているという。ポンディシェリでは自殺率が高いにもかかわらず、この問題に関して証拠に基づいた実質的な研究はこれまで行われていない、とこの新聞は訴えている。】
74 Fatal Oleander Toxicosis in Two Miniature Horses. J Butler et al, J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Nov/Dec;52(6):398-402. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27685366/ 。 【2016年 キョウチクトウ中毒で馬が死亡、1頭は3日後に死亡、もう一頭は回復見込み無く安楽死させた。多胃動物の牛と違い、同じ単胃動物でも人は嘔吐できるのに反して馬は嘔吐できないという。】
75 Retrospective study of cattle poisonings in California: recognition, diagnosis, and treatment. Anita Varga et al, Vet Med (Auckl). 2012; 3: 111–127. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6065581/ . 【2013年 米国カリフォルニア州で2011年までの12年間に届出された牛中毒例1199例(乳牛55%、肉牛41%)についての分析結果の報告である。中毒の原因が分かったのは13.5%にしかならず、そのうち最も多かったのは亜硝酸塩中毒で次がキョウチクトウ中毒とゴシポール中毒だったという(ゴシポール:木綿植物が含む黄色の有毒色素で食用油の粗綿実油に含まれる。精製綿実油は除去されている。但しその絞り粕は飼料に再利用され飼料への配合割合に注意を払いながら使っているという。人の精子に障害を与えるので中国のある地域では綿実油を使っていた故に出生率が低かった。実際、男性不妊薬にも使われた)。家畜の食用肉自体や生産牛乳への混入まで配慮を要し、ひいてはヒトの健康にも係る事なので、この報告は正確な診断と治療と対処をすべき獣医にとっては大切な意味を持つとしている。新規発生を予防・生産牛肉や牛乳の摂取禁止措置・適切な治療等役割は多岐にわたるが、解毒剤も乏しく費用も手間もかかると言っている。80%以上が原因不明とは驚きだ。】
76 重質油の熱分解技術(特集 重質油対策技術の開発)吉井茂雄他 エ ネ ル ギ ー ・ 資 源 Vol.4No.2(1983)p139-144. http://jser.gr.jp/kaiin/JSER_BOOK/1983/4-139.pdf 。 【熱分解および生成物等について分かり易く説明している。一般に1300℃の石炭乾留の生成物は大きなバラツキあるが大略コークス60%・ガス30%・タール5%・灰分10%とも言われる。ここでは1100℃以上でカーボンブラック(炭素純度99%)になるという。熱分解ではガス・タール等の重縮合でPAHsも生成する。カーボンブラックであってもPAHsを含む。】
77 1.炭素と黒鉛の違い~カーボンとグラファイトの違い(炭素入門編)株式会社レイホー製作所 https://www.0ho.co.jp/carbon/p1/ 。 【分かり易くその違いを説明している。黒鉛(グラファイト)は2700℃以上の無酸素下で作るという。】
78 硝酸塩中毒をご存じですか?(家保通信平成17年度 第3号)熊本県天草家畜保健衛生所 https://www.pref.kumamoto.jp/uploaded/attachment/104922.pdf 。 【硝酸塩/亜硝酸塩の急性中毒で、牛のヘモグロビンがメトヘモグロビンになり、酷い場合は酸欠で急死することもあると啓発している。】
79 土壌有機物と農業生産との関係についての総説 松﨑守夫 農研機構研究報告2021年6号p.1-9 https://www.jstage.jst.go.jp/article/naroj/2021/6/2021_1/_pdf/-char/ja 。 【窒素飢餓、窒素過剰についても述べている。】
80 飼料中の硝酸態窒素―中毒と対策― 高橋潤一 牧草と園芸第40巻第6号p5-9(1992). https://www.snowseed.co.jp/wp/wp-content/uploads/grass/grass_199206_03.pdf 。 【乳牛の硝酸塩中毒が米国で1937年報告されて以来、今も相変わらず死亡報告例が後を絶たない。日本でも乳牛用の輸入粗飼料が利用拡大しているが、急性中毒死が報告されない限り意外にも見過ごされて対策もしていないという。亜急性中毒の場合は臨床症状が表面化しないので判別が難しい。専門書や実用書でも紹介されているが必ずしもその本質が理解されていないという。その解説をしている。(その後平成19年に硝酸態窒素を含む輸入乾牧草を原因とする牛の中毒事例(8 頭死亡)が報告されている。「硝酸態窒素及び亜硝酸態窒素」農林水産省)】
アナフィラキシー治療のアドレナリン使用・・と解釈変更してしまう不思議さについて、 ― 2024年07月31日
(長文で失礼します)
アナフィラキシー治療のアドレナリン使用にあたって、「筋注する」が「筋注でなければならない」と変わったり「最大投与量0.5ml」が単なる「0.5mg」に変わったと解釈変更してしまう不思議さについて、
これは、日常臨床で体験している中での解釈と情報からのみ得た解釈とでは具体性が異なるので解釈変更してしまうのも止むを得ないことかも知れないが、アナフィラキシー対応は個々の重症度等でアドレナリン量の調節が必要であるし、緊急を要し場合によっては副反応にも生死にも直接係る問題でもあるし、無視できないことも含まれていると思われるので敢えて調べ言及してみた。
日本ではエピペンが2003年に厚労省から正式認可されるまではアナイラキシーリスクの高い林業者等には費用は病院持ち出しで普通の1mlシリンジにアドレナリン0.5mgを入れて本人に携行させていた。10円にも満たない安価な薬なのでエピペンが出来て(大人用0.3mg)1本1万円でしかも登録しなければ医師も処方できないとあって初期は日本では不評であった。しかし0.3mgという絶妙な量(効果もあり副反応の心配も無視できる)にして製品化したことには見事であると思い、アメリカ人は商売気があるなあと感心していた。薬の原価はゼロに近いものなので当時何故日本人は考え付かなかったのかとさえ思ったが、今や新型コロナワクチン注射など集団接種会場等のリスク現場ではアドレナリンがあるのにもかかわらずエピペンも備えないと後ろめたささえ感じるような雰囲気になっている。エピペンの使用の安心感はその充填量(大人用0.3mg,小児用0.15mg)にも無縁ではないと思っているのは、アドレナリンへの感受性は個人により更には同一人でもその時の病態等で変わり得るからである。例えば大人用ならば0.3mgという量は動悸等副反応がmax出ても心配するほどにはならない一方、1mgでは死に至る副反応リスクもあり得るし、0.5mgでも感受性の高い患者は“口から心臓が飛び出るほどに動悸がひどい”と効き過ぎることも実際あるからである。喘息患者にはアドレナリンなどβ刺激剤の内服・注射・吸入等が今でも普通に使われているが(β2-selective剤が普通)、大人でも感受性の高い患者はたとえ半量等の小児量でも手指振戦や動機は時に日常的に専門医ならば経験する事である。そして当然ながら量調節が必要となる(難吸収性のステロイド合剤が開発され製品化されてきて発作コントロールも容易になり喘息難治化率も減少してからは出会う機会も少なくなったであろうが、アドレナリンのβ効果は気管支拡張とともに動悸・頻脈・手指振戦は最も身近な過剰症状であるし薬が効いている証拠でもある。
※過剰症状出現は内服であろうが注射であろうが吸入であろうが通常使用量でも出るときは出る。手指振戦は気管支拡張と同じβ2効果とされている。(※ →2024.8.10追加)。
上記のような状況下でまず、医療の在り方はその時代の良識範囲のみで許可され得るものであることが前提である。その前提が崩れないように社会の認識を擦り合わせておく必要があることに誰も異論はないと思われるので、表題のように良識範囲の認識がずれかねない杞憂を感じ敢えて取り上げたいと思う。これは医療裁判にもかかわる問題と思っている(※※後記)。
アナフィラキシー対応の臨床現場では状況に応じた柔軟な姿勢が成功のカギとなるのは言うまでもない。現場の融通性なくしてアドレナリン使用量0.5mgと機械的に固定した場合について、および、皮下注でなく筋注に機械的に限定した場合の支障や問題点について分けて取り上げる。
まず、アドレナリン使用量が0.5mgに変わったという認識が周知され固定化された場合、当然のことながら機械的に0.5mg使用が当てはめられかねないことは容易に想像がつく。それは重症・軽症に係らず適用されかねない。かつて50数年前に “ペニシリンショックはアドレナリン半筒と覚えておきたまえ“ と学生時代に教科書的に教えられ、そのままをロボットの如く機械的に当てはめた医師になりたての初期の頃と変わらないことになる。0.5mgでも99%大きな問題は出ないと思われるがその中には副反応で余分な負荷を患者に与えかねないということをも内在している。それよりもっと大きく大切で注意すべき問題は、反応不十分の場合は複数回の追加を考慮しなければいけないという事である。そのことこそ現場対応での必須要件でありそれを怠ると生命のリスクが再燃しかねない。このことにはだれも異存はないと思う。それは0.2mg/1回量でも0.3mg/1回量でも0.5mg/1回量でも、1回使用量云々を超えた必須の事項であり1回量云々の問題ではない。現場状況に合わせた柔軟な対応をしてこそ真の有効な医療になる。
日本のアナフィラキシーガイドライン2022では最大投与量0.5mg(p.21)とした中での表14のように簡易化しても良いと言っているのであって表14のみ取り上げて13歳以上の子供を含む大人は0.5mgに変わったと受け取られかねない表現、しかもご丁寧に体重50kgでは0.3mgでは足りないかもしれないとしている学会グループ等が目につくがこれは誤解の元である(⑤⑥⑦)。前述のように0.5mgでも効き過ぎるときもあれば不足のこともあるので、足りなければ追加すればよいだけの話である。エピペンは0.3mg製剤しかないので使用を迷わせかねないもとになる表現である。エピペンを使って不十分ならば同成分のアドレナリンを追加すればよいだけの話である。
アドレナリン注射時のヒトの体内動態の論文は数少なく一様に取り上げられるのはSimonsの論文である(①)。アナフィラキシーガイドライン2022にもアドレナリン血中濃度は筋注後10分程度で最高になり40分程度で半減すると引用されている(p.21)。これは外因性のアドレナリンの血中濃度が最高になるとは言っていないが、何故か外因性のものの血行動態と勘違いしているのではないかと思わせるような医師等専門家の意見を聞くことが多い。これはアドレナリン代謝は体内で速やかに代謝されるという添付文書の記述にも医薬品インタビューホームの記述にも矛盾するし(②)、これまで一般的に速やかに代謝されて血中半減期は約2-3分と言われてきたことにも矛盾する(③)。AHAガイドライン2020ではCPR(心肺蘇生)中は3-5分毎にアドレナリン1mg静注としている。
ヒトでの資料が少ない中で上記Simonsの論文は貴重であり学ぶことが多いが、彼らがDiscussionで述べていることには違和感を感ずる点もある。その一つは投与前に内因性のアドレナリンをチェックしているので測定の上昇は外因性のアドレナリンであるというように思い込んでいるのではないかという違和感である。この解釈が変だと思うのには現場で経験していれば直ぐ分かることだが、複数のアドレナリン投与法がある中で0.2mlづつ頻回に行う方法もあり例えば0.2mlを20-30秒毎に5回行って計1mlになっても副反応は殆どでないが1回に1mg行えば筋注であろうが皮下注であろうが致死的になり得る危険があることは全ての医師が承知の如くである。(1回当り0.2ml・0.3ml・0.5mlと症例の重症度によって普段使い分けをしていても血圧低下や起き上がれなくなるほどの重症症例では意識があっても迷わず0.5ml施行は当然であるし、逆にCPA等以外は絶対0.5mgを越えない)。0.2mlづつ20-30秒ごとに分割投与すれば計1mgになっても副反応がなく1回投与で1mg行えば致死的リスクが発生し得ることから考えれば、アドレナリン注射後の上昇には内因性アドレナリン分泌も関与しているはずであることは容易に推定できると思う。未体験であれば実際行ってみれば直ぐ解る事である。わずかな量違いに見えるかもしれないが逆に過量についても実際1mg1回投与で事故も起きている(⑧⑨⑩)。Imgと0.5mgでは天と地ほどもその効果は違うのである。10分後20分後でも血中アドレナリン濃度が高く40分後でも半減する程度に高いというのも理解できるのである。また8分経過しなければアドレナリンが効いてこないという解釈も聞くことがあるがこれも間違いであることは、論文①の血中濃度経過グラフをみれば明らかなように、皮下注も筋注も濃度の差こそあれ最初のピークは2-3分の短時間にあると思われ、筋注・皮下注の発現時間の違いはなく同じであることが解る。実際医薬品インタビューフォームでも心血管系への反応は直ちにとなっている(②)。Simonsの論文①の意図は序文で述べているように、皮下注より筋注の方が速く吸収されるのではないかという仮説が前提になっていて、結果もその前提に矛盾しないと言っているのでそれに異を唱えるつもりはない。この論文によればもともと米国でも皮下注をしていたことに対して筋注の方が好ましいと言っているので、このことにも異を唱えるつもりはないが、このデータをもって皮下注では駄目だと結論付けるのが間違いだと言いたいだけである。要するに筋注でも皮下注でも現場の裁量で選べばよいのである。在野の仕事現場でいきなりアナフィラキシーが発現してエピペンを持ち合わせていたらたとえズボンの上からでも良いから大腿(大腿外側広筋)に筋注すればよいし、病院の診察台の上にいれば上腕の衣服を捲り上げて筋注でも皮下注でもどちらでも良いから速やかにまず1回目の注射をすればよいのである。
なお論文①にもある様に筋注でも皮下注でも強度の違いはあれ注射2-3分の短時間で速やかな血中濃度ピークが出現して脈拍上昇等も付随するという所見に対しては、その解釈が、外因性アドレナリンが吸収されたためなのか神経反射のためなのか内因性アドレナリン分泌も係るのか等については未だ未解明の点が残っているようである。
次に、皮下注でなく筋注に機械的に限定した場合の支障や問題点について取り上げる。
アドレナリンは日本人(高峰譲吉&上中啓三)によって1900年に発見されて、論文①にもある様にアナフィラキシー治療に使用されるようになったのはその後で、私が医師になった1970年代初めにはもう当たり前にアナフィラキシー治療に使われていた。当時は主に皮下注で行われていた。
アドレナリン注射だけでなくワクチン注射も特に日本においては小児の大腿四頭筋拘縮症の発生に凝りて、ワクチン注射までも皮下注に限定されるようになっていて小児は筋注の方がやり易いようで日本小児科学会等から筋注も認めてくれと言うようになっていた(⑱)。ところがいつの間にか刷り替えられて感染症医等から筋注にすべきという声の方が大きくて、今やワクチンの注射は筋注に限定するかのように行政府までも動かされるようになってしまった。これも日本の実態を無視した一方的な流れに傾きつつある現状がある。若くて健康な人は筋注・皮下注どちらでもよいが高齢者の一部には筋注したくても筋注できる筋肉がない人もいるのである(高齢者施設の実態は⑪⑫⑬参照)。免疫力の落ちた高齢者こそ優先的にすべきだとの意見と矛盾もしている。
例えばワクチン添付文書の記載が「筋注又は皮下注」になっていれば問題はないのだが、特に最近の新型コロナワクチン導入初期には、筋注と皮下注は天と地ほどに効果が違うと一部の医療界から喧伝されて筋注でなければ駄目だと社会までもが動かされるようになってしまった。血中吸収に違いは有れども免疫効果には大差がないことは免疫の専門家に聞いてもらえばわかることである。感染症医は免疫の専門家ではない。日本の高齢介護施設入所者は筋注限定されると約1/3は該当しなくなるという実態が日本にはあることが意外と知られていない。
筋注皮下注問題はアナフィラキシー時のアドレナリンについても同様で、既に述べた如くアドレナリンへの感受性は個々で異なりそのメカニズムは必ずしも明確にはなっていないが、CPA状態ではアドレナリン1mg静注してさえさらに3-5分毎の追加が必要だとされる如く病態によってもその使用量も回数も異なることは言うを俟たない。言い方を変えればアドレナリンの血中濃度だけで効果の判断もできないとも言えるのである。そのメカニズムはいまだに不明の点があるようで、かつてacidosisでは効かないとも言われたがその根拠が正確なのかどうかも分からない。とにかく臨床的に皮下注・筋注どちらも有効なことは前述の如く明らかなので、どちらも許容すべきである。要するに、皮下注でも筋注でもどちらでも良いから引き続くアナフィラキシー対応を次々と先手を打って打ち出すことこそ必須であると言うに尽きる。また、アナフィラキシー治療にアドレナリン注射が極めて大きい役割を持つのは確実であるが、一方、心肺停止に至る程の重症者の生死にアドレナリン注射の使用の有無をもって効果を絶対視することにも疑問符が付くのは英国での大規模試験の結果を見れば分かる(⑭a,⑭b)。救急入院前の早期からCPA患者にアドレナリン投与してもPlaceboと比べて生存率に有意差はなく、逆に重度の神経障害後遺症発生はアドレナリン使用群の方が高かったのである。
(※偉そうなことを言って申し訳ないが、意見を述べる以上その土台は明らかにしておかねばならないので茲に述べておく。自分は元アレルギー専門医であり、数年前に不要になったと自己判断してその専門医は返納してしまったが今でも日本アレルギー学会から「功労会員の証」は受けている。1972年に医師になり以来40數年に亘ってアレルギー・喘息診療に従事してきて毎週のアレルギー外来等では軽症から急速な一時的心肺停止した重症例に至るまでアナフィラキシーや重症/難治性/喘息も多く現場で診てきたと自負している。急激な重症喘息発作とアナフィラキシーの鑑別の困難症例も勿論ある。そして当然アドレナリンは極めて有効な武器の一つで無数回といって良い程に実際行ってきたが、その投与法・投与量・効果の強弱程度等も症例毎に異なることも体感してきた。そして軽症のアナフィラキシーの場合と心肺停止に至る程の重症の場合ではその使用量・使用法は当然異なってくる。そして、だらだらと慢性状態の中での悪化なのかその直前は健康であったのが重症急変したのか等の病態や環境状況によってもその効果も対応も微妙に異なってくることも理解できていたつもりである。例えば症状が無い患者がいきなりアナフィラキシーや重症喘息発作等急激に発症悪化した場合はアドレナリンが極めて良く効く一方、慢性の前者の急激悪化重症の場合はアドレナリンの効果は極めて悪い、等の違いがあり、難治性喘息かつてintractable asthmaと呼称していたが、今は重症喘息発作と難治性喘息発作は却って区別が曖昧になっている。ATSやERSに合わせて難治性喘息をrefractory asthmaと再定義するようになっている(『難治性喘息 診断と治療の手引き2019(日本呼吸器学会編)』)。
資料:
①Epinephrine absorption in children with a history of anaphylaxis. FE Simons, JR Roberts, Xiaochen Gu, KJ Simons. J Allergy Clin Immunol 1998 Jan;101(1 Pt 1):33-7. https://www.jacionline.org/article/S0091-6749(98)70190-3/fulltext 。
【アナフィラキー既往のある小児計17人についてアドレナリン筋注・皮下注のグループ分けの比較をしたデータを提示して、筋注の方が吸収効率が良いと考察している。】
②アドレナリン注0.1%の医薬品インタビューフォーム2018年5月改訂テルモ(製薬企業からの情報提供書) Ⅵ.薬効薬理に関する項目p10. https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1&yjcode=2451402G1040 。
【効果発現時間: 心血管系:直ちに,気管支拡張:変動しやすい(筋注),6~15min(皮下注)。最大効果発現時間:気管支拡張:0.3hr(皮下注)。効果持続時間:心血管系:1~2min,気管支拡張:1~4hr(筋注,皮下注)。アドレナリン添付文書では交感神経細胞内に取り込まれるかあるいは組織内で主としてMAO、COMTにより速やかに・・代謝され不活性化される、とある。今回テルモか第一三共かで表現が微妙に異なることに気付いた。】
③院外心肺停止傷病者に対するアドレナリン投与間隔の社会復帰に与える影響 日臨救急医会誌(JJSEM)2020;23:551-8 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/23/4/23_551/_pdf/-char/ja 。
【アドレナリンの消失半減期は約 2 〜 3 分。心肺停止の場合は5分以内の再投与の方が予後が良かった。】
④心肺蘇生(CPR)と救急心血管治療(ECC)に関するAHAガイドライン 2020(ハイライト) https://cpr.heart.org/-/media/cpr-files/cpr-guidelines-files/highlights/hghlghts_2020eccguidelines_japanese.pdf 。
【CPR処置中は3-5分毎にアドレナリン静注をするフローチャートを提示し、CPR中のアドレナリン1mg静注は3-5分毎に行うとなっている。】
⑤アドレナリン(ボスミン)筋注の推奨投与量が変更になりました2023.1.31埼玉協同病院薬剤科DIニュース https://kyoudou-hp.com/DInews/2023/642.pdf 。
【誤解されやすい表現になっている】
⑥アナフィラキシーガイドライン改訂2022(2023_0301版)弘前大学医学部附属病院に高度救命救急センター2024年1月12日 https://emergency-hirosaki.com/case-reports-papers/%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%AC%E3%82%A4%E3%83%89%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E6%94%B9%E8%A8%822022/ 。
【薬物治療:第一選択薬はアドレナリン筋注です筋注!これでは筋注でなければ駄目だと言っているように見える。】
⑦ワクチン接種会場におけるアナフィラキシー対応簡易チャート公開のお知らせ( 2023/6/14 大人用を改変)日本救急医学会 https://www.jaam.jp/info/2021/info-20210622.html 。
【大人の場合はアドレナリン0.5mgに変更になったと言っている。エピペンは50kg成人に対しては容量が少ないことを念頭に置くこと、と添え書きをしている。】
⑧救急活動時の救急救命処置による事故調査・検証報告書 令和4年2月15日千葉市救急業務検討委員会 https://www.city.chiba.jp/sogoseisaku/shichokoshitsu/hisho/hodo/documents/220311-3-2.pdf 。
【エビを食べた10代女性にアドレナリン1A(1mg)静注して心室細動 心肺停止した2021年に起きた事故報告書】
⑨「アドレナリン静注で心停止」した事故を振り返る2022/03/24日経メディカル https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/series/yakushiji/202203/574371.html 。
【前記2021年のアドレナリン1mg静注事故について】
⑩アナフィラキシー症状で搬送中の10代女性、救急隊員の投薬ミスで心肺停止に
2021/10/08 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/national/20211008-OYT1T50012/ 。
【前記2021年のアドレナリン1mg静注事故について】
⑪皮下注か筋注かで気になったのでちょっと一言。2020年9月19日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02xnxzq2fn9JjCdzNp7zUAT2VMgVMtGdKJqMwQvHQnv5d64TGAee39wj86pNb14Vsnl?__cft__[0]=AZVSKbzOfE6LWxuV4XJHhm9-cSOH2Njtd3SpIS1WbcZGFshe38zjuyYL0AK_nyVHokkpFi0vPTm9K4wj_zqwTkcRPA84Pyelqqu_aAYnpos5hlTQHjWXxIxMUR4FXoCmnqU&__tn__=%2CO%2CP-R 。
⑫ワクチン筋注、たかが筋注されど筋注:古くて新しい問題。2022年9月6日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02wYERt41srBnPsZk8gA1LU91FjQrZsgonCmtLUP7k4xr9yP8zaYaKCXPM3deYyw22l?__cft__[0]=AZW8XaE_lhr60erX-v0zTCMUL22OAh9URNGQfdYDvZ6P3rcG3qdQVT-PQEPDBT22a0VdJVPBEW_ofJio70f_tPQL8004XxwlLRPLmNWSchdV2tVxiiqwVZ2FA2lDi5x76gI&__tn__=%2CO%2CP-R 。
⑬・・筋注・皮下注とで免疫効果は違わない・・2022年6月23日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid0wnbTDB2mt8ZFK5pdS3vwVrQ78u7KQAVvPXEDrSDUBW64LjSrqwqDpuEFSif4ZbQl?__cft__[0]=AZVuA-ePbDEzNRR0gQW9n-s_jH9cT8-Vegw51LqChGO6zLa-l4-J5sOARFKtzr5YUyRSVHInuRnznHFMI-vc6ZoCZXvff8I2bkwoCHFPs2EK6D71ck6chFJdvrgtnm0CD74&__tn__=%2CO%2CP-R 。
⑭a Perkins GD, Ji C, Deakin CD, et al. A Randomized Trial of Epinephrine in Out-of-Hospital Cardiac Arrest. N Engl J Med. 2018;379(8):711-21. https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1806842?url_ver=Z39.88-2003&rfr_id=ori:rid:crossref.org&rfr_dat=cr_pub%20%200www.ncbi.nlm.nih.gov 。
⑭b Haywood KL, Ji C, Quinn T, et al. Long term outcomes of participants in the PARAMEDIC2 randomised trial of adrenaline in out-of-hospital cardiac arrest. Resuscitation. 2021;160:84-93. A Randomized Trial of Epinephrine in Out-of-Hospital Cardiac Arrest https://www.resuscitationjournal.com/article/S0300-9572(21)00028-9/abstract 。
【⑭a:英国でのPARAMEDIC2試験で、2014年から3年間にわたって救急入院前からのアドレナリン使用の効果をPlaceboと比較した。計8014人に及ぶ大規模試験である。CPA患者に救急入院前からアドレナリンかplaceboを使った。30日後の生存は3.2%対2.4%と改善傾向がアドレナリン群で見られたが有意差無し、神経学的予後良好な患者の割合は更に差がなくなり2.2%対1.9%で有意差無し。しかも神経学的に強い障害が残ったのは31.0%対17.8%とアドレナリン群で多くみられた。
⑭b:さらに12か月後迄のフォローアップ結果が報告された。6か月後・12か月後の生存率はそれぞれ2.9%対2.2%・2.7%対2.0%で、神経学的予後良好の患者は6か月後で2.0%対1.5%で更に低く有意差もない。病院に到着する前からアドレナリンを使ってもその効果は絶対ではないことを示したデータである。】
其の他関連資料:
⑮アドレナリン製剤の使用上の注意の改訂について 平成30年8月3日 医薬安全対策課 厚労省 https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000341843.pdf 。
【アナフィラキシー時のアドレナリン併用は抗精神薬との併用禁忌が従来あり、救急医等が代替薬としてピトレッシン等様々に主張工夫していた時期があったがどれも現実的でなく、やっと平成30(2018)年に禁忌項目が削除され、救急の現場で抗精神薬を使っていても堂々とアドレナリンを使えるようになった。】
⑯Dose-dependent vasopressor response to epinephrine during CPR in human beings Ann Emerg Med. 1989 Sep;18(9):920-6 https://www.annemergmed.com/article/S0196-0644(89)80453-6/abstract 。
【CPR試行中に5分間隔でアドレナリン1mg・3mg・5mg投与を行ったら量依存的に血圧上昇した。】
⑰マネーゲームと化した米薬価事情 仲野博文 尼崎労基協会 第374号12月号p9 平成28年11月25日 https://web.archive.org/web/20211125191554/http://www.amaroukyo.com/wp-content/uploads/2016/11/2812.pdf 。
【1987年にFDAに認可されたエピペンはその後メルク社→マイラン社に買収されて、60ドル→600ドルに値上げされ、マネーゲームに使われ米国で社会問題にまでなったと報告している。日本では2003年に厚労省に認可されて2011年薬価収載されるまでは自費でしかも許可を得た医師のみが処方できた。新型コロナワクチン注射によるアナフィラキシー対応で皮肉にも広く人口に膾炙されて、するかしないかで裁判沙汰にもなるようになった。】
⑱要望書:不活化ワクチンの筋肉内注射の添付文書への記載の変更について 日本小児科学会 平成23年6月16日 https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_1106273.pdf 。
【インフルエンザワクチンなど不活化ワクチン接種時の接種方法として添付文書に、皮下接種に加えて、筋肉内注射で行うことも可能とする記載を要望する、と厚労大臣に要望している。小児科学会は筋注に変更して欲しいと言っているのではなく皮下注とともに筋注も許可してほしいと言っているのである。なお生ワクチンは米国でも皮下注。】
※※(2024/8/30追記)
上記私見を書くきっかけになったのは下記2つの事例をニュースで知ったためであり、これではまともな医療が出来なくなるのではないかと恐れたためである。その前までは1994年法医学会ガイドラインが出て以来日本医師会を含む多くの学会で喧々諤々の議論がなされ、それでも何でも警察に届出るようにとなっていて別の様々な歪みが出ていて多くの問題があったが、議論後の2015年に出来た今の医療事故調査制度は逆方向に大きく振れてしまっている現状がある。
〇愛知 愛西 ワクチン接種後女性死亡 遺族が市を提訴へ2023年11月23日NHK https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20231123/3000032905.html 。
新型コロナワクチン死亡損害賠償訴訟 愛知・愛西市は争う姿勢2024年2月9日NHK https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20240209/3000034151.html 。
【上記の2つのニュースは、2022.11.5.に起きた新型コロナワクチン集団接種会場で起きた短時間で死亡した事例の公式報告書が2023.9.26.公表されたのを受けて家族が愛西市を訴えた2023.11.23.及び2024.2.9.の裁判のニュース。この報告書が訴えのきっかけになったと思われる裁判であり、ご家族の気持ちを逆なでするような稚拙な思い込みによる公式報告書であった。一方医療側も、これが「自然死」であるはずはないが、原因究明の解剖はしていなかった。この事例を受け入れた救急病院が死後の解剖をしていないのは現在の医療事故調査制度(第3者による死因究明組織であるべき、のはずが頓挫して届出は第3者でない従来の警察になったままになっている)が歪められた解釈をされたためとしか考えられない。換言すれば今の医療事故調査制度は返って改悪された状態のままである。】
〇コロナワクチン接種後に男性死亡 遺族が国や神戸市など提訴 2024/6/3 神戸新聞 https://www.kobe-np.co.jp/news/society/202406/0017729399.shtml 。
【この死亡例も法医解剖であれ行政解剖であれ病理解剖であれ原因究明の解剖をしていない。これは死亡診断書の記載ルール上からは「自然死」と判断したとしか思われない。常識では考えられない判断だがそのもとにあるのは、2015年から新たに施行された医療事故調査制度であり、それが歪んで解釈された結果と思われる。
抑々病理解剖では家族が嫌がるのを医療側がどうにか説得してやっと解剖できるというのが正常の道筋であり、一方、法医解剖では遺族が拒否した場合は現場の刑事と病院側が相談して犯罪性はゼロなので行わないことも止むを得ないと判断しても現場を知らない決定権のある警察上司に現場刑事がお伺いを立てるのであるが、その上司は万が一の自己保身のためと思われるが犯罪性がゼロであっても警察に届出された以上は法医解剖が必要と裁判所の許可を得てでも行えと強権を発動する、これが私の多く経験した現場の実態であった。ところがこの2つの裁判例の場合は本末転倒で逆に解剖の未施行が医療側の責任として責められている。】
(以上、終わり)
新型コロナ感染症(COVID-19)罹患患者からのウイルス感染にどこまで気を付けるべきか、についての振り返り ― 2024年07月12日
初期の武漢株による発生初期には肺胞への親和性が強く症状の有無に係らず感染者の半数に間質性肺炎像が認められるとの驚くべき報告が自衛隊中央病院よりなされて(2020年6月、1/3弱が重症、2/3は軽症/無症状)、事実俳優の志村けんが急死してその前後も本人の自覚が乏しい中で急死する患者が相次ぎ世界を席巻し、happy anoxiaと恐れられた。しかも肺だけでなく全身のあらゆる臓器に侵入傷害しその死因も多彩であった。しかしウイルス変異のサイクルが激しくわずか数年で肺胞をはじめとした全身への毒性が軽減してきているように見え、その感染対策への考え方も時々刻々と次々に変わり議論も百出であった。
中国武漢での初発が2019年12月で日本への初発例は2020年1月15日に確認されて以来、その後の5か月間に日本国内でも668人が死亡したとされている。
そしてウイルス自体も変異が激しく弱毒化に並行してワクチン行政も進み、昨年2023年5月8日からは感染症類型も5類に変更となっている。手放しで安心するには未だ時期尚早の段階であるが、これまでの事実をもとに現段階でのCOVID-19患者からの感染リスクの程度についてまとめてみる。
A: officialには5類になって以降は感染前後の対応が個人の判断に任されて「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」が登校・登園・出勤を控える公的な推奨期間とされた(①)。従って出勤は6日目から/7日目からに設定していることが多いと思われ、症状があれば10日までの欠勤も認めている職場等が多いのではないかと思われる。現に症状が残っていてもマスク・手洗いをはじめとした基本予防策を守っていれば出勤しても他人に移してしまう心配はないとされるようになってきている。
B:COVID-19患者からのウイルス排出量の程度と期間について、
イギリスでの健康人での2回の人体実験の報告(初回②:未感染者2022年・2回目③:既感染者2024年)からは、健康人未感染者の鼻腔にCOVID-CoV-2のウイルス(10TCID50)を直接注入しても感染したのは半数(18人/34人中)で発症しても軽中等症(16/18人中)、感染しても11%(2/18人中)は無症状だったという。しかも2回目実験の免疫獲得済の健康人ではその希釈系列max1万倍までのウイルス量を鼻腔に直接注入しても発症したのは何と全体の14%(5人/36人中)のみでしかも一過性の軽症だった(1x10^5TCID50の最大ウイルス量でも一過性感染は8例中1例のみ、一過性感染とウイルス量の相関無し)。しかもその後に変異株のオミクロン株にも罹患した者の発症者が39%(14/36)と増えたもののすべて軽症だったという。
この実験からはかなり多くのウイルスを吸入してもすべてが発症するわけではないこと、免疫効果は著明であること、変異株オミクロン株へのワクチン効果もあること、等を示していた。発症するヒトと発症しないヒトの違い、一部のヒトが何故重症化するのか、なぜ後遺症が出るヒトがいるのか等なお未解明部分が多いようだが、自然免疫能と獲得免疫能とのバランスや違いにあるとの推定もあるようだ④。
これは一般的な病原体にも言えることかもしれないがCOVID-19も、多量のウイルスを吸入しても発症しないヒトがいるという事実を上記実験で確認したことになる。
ウイルス量Ct値30≒PCR10000コピー≒10TCID50なので、10000コピー中のviableなウイルスは10-100個(1/100~1/1000)位という(⑤⑥⑦但し標準化や精度管理不明)。また上記人体実験で希釈系列max10万TCID50のviableウイルスを鼻腔内注入しても発症したのは全体の14%に過ぎないということは言い換えれば感染性を持った新型コロナウイルス粒子10~100万個が体内に入っても半数しか発病しないということである(但し免疫があった場合!)。その半数も大部分の人がカゼ程度で済んでしまうのに(実験上重症者ゼロ)、臨床現場では極一部でなぜ死に至るほどの重症になるのか、あるいは後遺症が残ってしまうのか、については今尚未解明の点が多い。
暴露ウイルス量と感染・発症との関係では暴露ウイルス量が多い方が感染・発症確率は上がるとされている(⑧)。この資料図9によれば10^10コピー/mlのウイルス量排出での他人への感染確率は20%位という。感染リスクは従って日常生活においては神経質すぎるのも楽観的過ぎるのも良くない。いわゆる中庸をどう保つかが実生活のポイントということになる。マスコミで特別扱いされた不織布マスクも呼気の湿気で静電効果を失えば(N95マスクは更に機能低下)普通の布マスクと効果は同じか却って機能低下してしまうのである。数時間毎に交換しなければ効果が出ない不織布マスクはSDGsの理念にも反する。このことを考えれば不織布マスクに拘る必要はないのである。にもかかわらず現実は不織布マスクが定番になって今も世の中を席巻してしまっているのは皮肉としか言いようがない。(⑨⑩⑪⑫⑬)。
C:ウイルス排出が感染リスクに直接結びつく訳ではないという事実について(SRAS-CoV-2とノロウイルスの比較も含めて)、
SARS-CoV-2は変異が激しくその発症確率も時間とともに変化し得るので、各時点での発症確率はその都度検証する必要があるがこれまでのデータから判断すれば、
英国の初回人体実験②からは、発症確率は10TCID50のウイルス量で50%であった。これは免疫がない場合で免疫がある場合(既感染±ワクチン)は更に低く発症確率はウイルス量が更に多くても全体の14%しか感染しなかった。
一方ノロウイルスは、10~100個のウイルス量で感染成立するとは公的に言い古されてきていたことである(⑭⑮)。これは素人目に分かり易い説明であるが正確に言うと⑮によれば、50%発症確率は10^6(百万)コピー、10%発症確率は10^3(1000)コピー、70%発症確率は10^8(1億)コピーである。PCRはウイルス断片も含まれるのでviableなウイルス粒子はもっとずっと少ないはずであるが参考にはなる。要するにノロウイルス10~100個で感染すると言ってもほんの一部のヒト数%が感染するだけということである。しかも感染しても必ずしも発症する訳でもないのである。
50%感染確率で比較すると、SARS-CoV-2は1万コピー、ノロウイルスは100万コピーとなる。感染力が強いとされるノロウイルスよりも100倍感染力が強いことになる。しかしPCRはウイルス粒子断片も含むので感染性ウイルス粒子の比較ではないので比較の価値があるかどうかは疑わしいが参考にはなる。
D:空気感染の定義について、
SARS発生の時もそうだったが今回のCOVID-19も早期より空気感染し得るという説が学会を含めて出たり消えたりしていた(⑯⑰⑱)。
COVID-19発生前までは空気感染(=飛沫核感染)が日本で公式に認められていたのは結核・麻疹・水痘の3つのみであった。
これまで空気感染という言葉については特別な感覚・意味合いを医療者は持っていた。同じ部屋空間の共有が不可とされた故、結核は別棟の療養所または陰圧病室と定められていたし、麻疹の子供が同じ病院内待合室にいたのが分かると病院内は大騒ぎしたし、水痘は殆どのヒトが既感染済なので普通の病院は気にしなかったが免疫能低下の白血病病棟等で発生すればパニックにさえなったという。医療者の空気感染の認識はそうであった。
2003年のSARS発生時もその問題は燻ぶっていたが今回2020年からのCOVID-19発生ではとうとう用語の曖昧さ故に放置出来なくなり、エロゾル感染やマイクロ飛沫感染等新たな無定義のままの学術語が独り歩きして飛び交うようになった。そしてついに最近(2024年4月)WHOからも用語の共通認識を図るための新定義の試みが出てきた⑲。願ってもないことである。
しかし統一見解には未だ程遠いような印象を受ける。従来のように感染粒子の大きさで区別するという考え方からは脱却して新たな視点からその感染様式を決めようと努力しているのは確かのようだ。そのIRPs(infectious respiratory particles)という別表現には対立意見もあるようで意見調整にはなお時間が必要のように見える。短時間か長時間の感染性をその空間が保っているかどうかで現場対応は大きく異なってくるが、このIRPsには時間の概念がないように見える。これだけでも意見統一はできないのではないかと思える。
今の所、尾身茂氏が示していた【・・2.7.30.の政府のアドバイザリーボード資料「新型コロナウイルス感染症はこうした経路で広がっています」の中では異なる概念であると明示している。空気感染が長時間・長距離まで感染が広がり得るのに対してエアロゾル感染は、3密等の一定条件下で起こり得る少し長い時間・少し長い距離にまで感染が拡がり得る場合を指すと言っていた(意訳)、この言葉が定着した今これがofficialな見解になるのだと思う。本書を読んで初めてその定義を知った。・・(資料⑳より)】これが日本の当面の妥当な考え方と思われる。
以下資料:
①新 型 コ ロ ナ ウ イ ル ス 療 養 に 関 す る Q & A(厚労省) https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001093929.pdf 。
②Safety, tolerability and viral kinetics during SARS-CoV-2 human challenge in young adults. Nat Med. 2022 May;28(5):1031-1041. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35361992/ 。
③Safety, tolerability, viral kinetics, and immune correlates of protection in healthy, seropositive UK adults inoculated with SARS-CoV-2: a single-centre, open-label, phase 1 controlled human infection study. Lancet Microbe 26/04/2024 https://www.immunology.ox.ac.uk/publications/1994167 。
④宮坂 昌之氏情報: https://www.facebook.com/masayuki.miyasaka.9/posts/pfbid0LBuoq3FUQLNAciRomhxiEHm6FcSXF395J7RKdXMkk193mjFGHFTFbmDJZXe2a798l?__cft__[0]=AZXh4nC6Iy-hHTmMqEjvwU1FKLm4d5m5wVNHBhH5rg3NAw45GD5s-9_wAr0IxSX5MgFBF4aFqGbkQMgLO1Bl3Zjv1xmDeZjXSP7zvoIZs1MIpb8eBRTpOkDvIgZGeUgPgQaIxWiMXTGYPcQZMVelGZ8odsym4BcJ-A-NOPj39HgZzg&__tn__=%2CO%2CP-R 。
⑤検体中のSARS-CoV-2ウイルスコピー数とウイルス力価に係る考察 (IASR Vol.42 p22-24: 2021年1月号)国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/2502-idsc/iasr-in/10133-491d01.html 。
⑥富山県内新型コロナウイルス感染症患者からのウイルス分離解析―富山県衛生研究所(IASR Vol. 42 p84-86: 2021年4月号)国立感染症研究所 https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2502-idsc/iasr-in/10303-494d03.html 。
⑦ウイルス学エピソード(5)ウイルスの個数って数えられる? 令和2年6月26日 神奈川県衛生研究所 https://www.pref.kanagawa.jp/sys/eiken/002_kensa/02_virology/virology_episode_05.html 。
⑧厚労省:第56回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和3年10月20日)資料3-7 舘田先生提出資料(図9) https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00294.html#h2_free10 。
⑨N95マスクのアルコールによる消毒は禁忌 2020/04/24 西村 秀一(仙台医療センター)日経メディカル https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t344/202004/565271.html 。
⑩マスクはどうやってウイルスをろ過してる?2020年5月24日 https://infipwr.com/2020/05/24/maskfilter/ 。
⑪電気通信大学 石垣 陽:マスクの安全を守る静電気技術 http://www.i-s-l.org/shupan/pdf/SE202_3_open.pdf 。
⑫東京大学生産技術研究所:「マスク・チャージャー」の開発――静電気の力でマスクをパワーアップ2023.04.26 https://www.iis.u-tokyo.ac.jp/ja/news/4207/ 。
⑬新型コロナウイルスでのマスク不足について。新型コロナウイルス生存期間。BSL-4。 ―2020年02月28日 https://ku-wab.asablo.jp/blog/2020/02/28/9218715 。
⑭厚労省:ノロウイルスによる食中毒の現状と対策について 平成27年国立医薬品食品衛生研究所 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000105662.pdf 。
⑮国土交通省:参考資料編 参考6.ノロウイルスの用量反応p70 https://www.mlit.go.jp/common/000116093.pdf 。
⑯新型コロナは"空気感染"です(第61回日本臨床ウイルス学会)仙台医療センター西村秀一氏が学会で講演2020年11月06日 メディカルトリビューン https://medical-tribune.co.jp/news/2020/1106533287/?utm_source=mail&utm_medium=recent&utm_campaign=mailmag201107 。
⑰オーストラリア:Airborne transmission of SARS-CoV-2: The world should face the reality(2020年6月) https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S016041202031254X?via%3Dihub 。
⑱新型コロナの、空気感染・エアゾル感染・マイクロ飛沫感染? 言葉の定義を巡って https://ku-wab.asablo.jp/blog/2020/11/18/9317806 。
⑲WHO:Global technical consultation report on proposed terminology for pathogens that transmit through the air 18 April 2024 https://www.who.int/publications/m/item/global-technical-consultation-report-on-proposed-terminology-for-pathogens-that-transmit-through-the-air 。
⑳尾身茂著「1100日間の葛藤」を購入して、わが身を振り返る https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02FCir8PTCV9p1k2EkKuv43T32g9jb7UmWPDRudHFWW6xyNBBT1ArHzbQ8L6biF1YJl?__cft__[0]=AZUtT06p1yfDHAR92krqzvHi-RIiiXmsSkcqG0OigXKnMsSTMPoNMV3HLPcTLIg0yJIqvhOJi_UfLvcoYErz9PNkIHoL41IVXzgw1XWbMkGyg0wPZW9hLEE5uHnqAroBlI4&__tn__=%2CO%2CP-R 。
(追加)
㉑Timing and Predictors of Loss of Infectivity Among Healthcare Workers With Mild Primary and Recurrent COVID-19: A Prospective Observational Cohort Study. Clin Infect Dis. 2024 Mar 20;78(3):613-624. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37675577/ 。
【人員不足もあり医療従事者は一定の条件で5日間での出勤可能の判断が既にCDC等や日本でも許可されていた中での検証研究。カナダの大規模病院20施設の観察研究データで、2022年2月から約1年間のCOVID-19発症の軽症患者121名について感染性ウイルスの排出持続期間をウイルス分離培養にて調査した。 結果:発症日を1日目としてウイルス培養陽性率は5日目71.9%,7日目46.7%,10日目18.2%であった。即ち10日目でも18.2%は感染性ウイルスをなお排出していた。なお、10日目でもウイルス抗原検査では34.2%が陽性、RT-PCRでは61.2%が陽性であった。ウイルス培養陽性期間と症状の有無・抗原検査結果の関連はなかったが、既往感染は感染ウイルス排出期間を短縮していて10日目は0%だった。(私見では、たとえウイルス排出していてもマスク・手洗い等スタンダードプレコーションを守っていればヒトに移すことは無いと分かってきているので、無症状ならば出勤停止期間を10日以上に延長する必要はないと思う。実際そう実践してきていて問題は起きていない。)】
極く最近製品化されたPCV20に関連して思うこと ― 2024年06月24日
極く最近製品化されたPCV20に関連して思うこと
【新しく導入されるワクチン ~多価結合型肺炎球菌ワクチン~ 千葉大学真菌医学研究センター感染症制御分野特任助教・竹内典子 2024年6月20日 https://medical-tribune.co.jp/rensai/2024/0620563339/index.html?_login=1#_login 。】
上記資料によれば、肺炎球菌ワクチンについてはこれまでにない血清型置換が進んできておりPCV13(プレベナー)に含まれない血清型の成人IPDが最近は2/3に上るという。
そして現在、既に更に多価のPCV20が製品化されて小児IPDには今年2024年3月に認可済となり、大人にも5月現在承認申請中であるという。
ワクチンの用法が小児に対しては「皮下注ないし筋注」と筋注が加わったのは喜ばしいことではあるが、高齢者等大人の場合はワクチン添付文書の用法の傾向が最近は逆に筋注限定になってきているのが気になっている。
筋注できなければ皮下注でも良いのではないかとの意見もあるがそれは社会通念上容認されている場合である。添付文書に沿わなくても許されるのはその時代の医学の常識レベルにかなっている場合の話だと思っている。
ところが新型コロナワクチンの初期の頃が典型的であったように、世間の専門家たちの常識が筋注と皮下注は天と地ほどに違う、免疫効果も違うとの意見が圧倒的であった。免疫の専門家に聞いた所エビデンスがないだけでどちらも大きな違いはないとの答えで医学的には問題ないとは後日に判断できたが、当時は社会通念上は許容される雰囲気ではなかった。
そのため万が一の訴訟問題を考えてエコー検査でワクチン対象者全員の確認をした所、介護施設入所者の場合は当時約1/3が医学的に筋注不可能言い換えれば「見做し筋注」(医学的には皮下注になって仕舞うということ)になって仕舞うことが解った。従って第1回目の新型コロナワクチンは希望の有無とは別に医学的にワクチンの適応なしと判定した。その後2回、3回と接種が続く中で世間では高齢者の接種率が上昇してきて見做し筋注を容認している社会の実態が明らかになってからは自分でも見做し筋注を行うようになった。
西欧では肥満等のために筋注の針の短かさを気にしているが日本の高齢者の筋注では別の問題が出るので、用法は我が国の実態を見て判断すべきことである。
新型コロナワクチンだけでなく、高齢者に特に必要なワクチンと謳われながらPCV13やRSVワクチン等見ても最近のワクチン行政は筋注限定に傾いてきているのは明らかである。ワクチン認可担当官は是非一考して頂きたいと思っている。そして法曹界との認識の不一致がないような努力もお願いしたい。
(愛西市ワクチン死亡の件)メモ ― 2024年06月03日
2022年11月5日の新型コロナワクチン接種直後に死亡した42才女性の報告書が2023年9月26日に愛西市医療事故調査委員会から出た。この報告書のニュースをチェックしていたら、何か気になる言葉がいくつか出てきた。新型コロナワクチンに係る健康被害救済については、その制度は既に決まっていて粛々と進めればいいはずなのになぜスムースに行っていないのか改めて調べてみた。第3者委員会もその行政対応もマスコミの報道姿勢も旧態依然のようだ、と思うようになり、疑問もいくつか出てきた。
第1に、事故補償するのは当然だしその方法も額も決まっている(⑥⑦死亡一時金4420万円等)筈なのに、遺族はともかく愛西市はなぜ争う姿勢になってしまったのか(③)。ましてやご家族は「僕はワクチンがだめだと思っているわけではなく・・接種を行っていかないといけないと思っている。・・」等(⑨)と理解を示しているのにも関わらずである。
市もマスコミも弁護士も分かりやすい説明が何故できないのか、不思議だ。(事故直後の2022/11/11第88回厚労省部会評価ではγであったが2023/3/10第92回部会評価はαに既になっている(⑧⑱)。因みに初めのγは救命担当医が其の他に判定したので当然である。γ:評価不能、α:因果関係否定できず。)
第2に、医療事故調査制度は新たな制度になったはずである(⑬⑭⑮⑯)。それなのにこんな判り切った事故でなぜ争わねばならないのか。
第3に、なぜ今更日本法医学会ガイドラインが出てくるのか(⑰)※詳細後記。
第4に、原告の言い分がなぜ個人的責任追及に傾いてしまったのか、市側の言い訳がましい説明が却って仇になっているのではないか(③)。責任追及は誰にでも陥りやすい思い込みであるがそれを乗り越えるために多くの時間を費やして医療事故調査制度が生み出されたのではなかったのか、見本となったのは医療事故と類似の航空機事故だったはずである(決して起きてはいけないが起き得る可能性を秘めているという意味で類似)。
第5に、この報告書はアナフィラキシーとほぼ断定しているように見えるが、たとえアナフィラキシーだったとしても極めて特殊な形のアナフィラキシーであり医学的には追及すべき多くの未知の点を内蔵している特殊例であるのは(⑩⑪)の報告を見ても明らかである。だから中途半端に断定せずご家族にも分かりやすい説明をすべきではないのかとも思う。(自分には切り口によってサイトカインストームにも悪性症候群にも特殊なアナフィラキシーにも見えるがどれもなお説明し難い未知のメカニズムが潜んでいるように映る。)
第6に、この方はワクチン注射後7分で咳等症状が出始めて症状出現後9分で心肺停止している。このわずか9分間には呼吸促拍あるも呼吸音に異常なし・血圧(脈診)状況は不明であるが、現場の医師はアナフィラキシー以外の病態の可能性が高いと判断している。呼吸促拍の程度が不明であるがそのような現場で、アドレナリン注射しなかったのが悪いと決めつけるのは偉そうなことを言って申し訳ないがこの報告書も短絡思考過ぎるとさえ感ずる。【自分でも過去に忘れられない同様な例を経験しているが恐ろしい程強迫的な呼吸促拍で極深く極速い呼吸であった(⑫)。想像を超える深く速い強制換気の過呼吸で鬼気迫るものがあった。その時思ったのはアドレナリンではなく手元にないダントリウムだった。あの状況下ではアドレナリン選択は今振り返ってもできないと思う。】
前述のように航空機事故と医療事故はあってはならないが有り得るという宿命を背負っている点で似ている。法学系も医療系これに異を唱える者はいないはずである。そしてこの30數年航空機事故対応を見習って責任追及か再発予防かの問題を克服すべく多くの議論を重ねてきたはずである。航空機事故では自己責任よりも再発予防に力点を置いて、既に世界的に対応方針が確立されているのに対して日本の医療事故問題は対照的で相変わらず進歩していないのはなぜか。
事故被害者には当然補償されるべきであること、過誤の有無に係らず事故調査においては再発予防目的の原因追及こそが大事であること、警察ではない独立した第3者委員会が事故原因調査すべきであること、事故調査の主目的は責任追及ではなく再発防止である事、第3者委員会の原因調査結果を責任追及に使ってはならないこと、これらは皆の共有認識であるのは間違いないようだ(㉙㉞)。
しかし現実は、平成6年日本法医医学会異状死ガイドラインができる頃多くの殆どの日本の他学会も足並みを揃えて類似のガイドラインを発表したにも係らずまもなく問題に気付き取り下げたのに比べて、日本法医学会ガイドラインのみ変えていない。平成14年に見直し見解は発表してはいるが今も固執し変えていない(㉞p.12~)。他学会との溝は未だに埋まっていない(同㉞p.25~)。そして医師法21条の異状死と異状死体の区別を平成24年に一旦認めた厚労省も逆戻りしているように見える(㉛㉝)。即ち医師法21条の届出は異状死体の事なので異常死の届出義務の事ではないと勝手に医療側が縮小解釈したのが間違いであって、行政上、同条の法的解釈には元々変わりはなく「死因判定のための外表検査」であり初診も再診もない「検案」には医師の本来の使命に基づき「医師の個別の異状判断」で警察届出義務があるとし、医療者側が言う拡大解釈の意味を元々含んでいるとの解釈である。要するに良識ある医師の本来の使命を自覚して異状死体を含む異状死は警察への届出義務がある事を忘れるなと言っている。事実、死亡診断書書式には病死・自然死以外はすべて異状死になっている。こういう捉え方をするのかと感心する。そして異状死には検視(法律用語、刑事手続きへの移行)への連続性の実態がある。
自分でも勿論日本法医学会異状死ガイドラインには従っている中で問題意識を抱えていてその対策の在り方の暗中模索下で調べたり聞いたりするうちに、ある裁判官に聞いたことがあるがその裁判官は、法医学会のガイドラインは間違っていないと私は思う、と言っていた。考え方の違いに呆然としたことがあった。法学系の捉え方が医療過誤を隠蔽しようとの前提で医療系が考えているとの邪推はないとは思うが法学系の視点が医療系とは根本的に違っているのは確かのようだ。他学会は一致して捜査機関である警察への届出には問題があると言っているのであって、再発防止のための届出には喜んで応ずることは各学会の異状死届出に積極的に応じた多くの学会ガイドライン作成ブームが起きたかつてのことを見れば明らかである。殆どの医療者には医療事故の原因究明への協力姿勢がある事は間違いない。時代の進歩で犯罪性の有無に無関係に「死因究明すべき死である異状死」があるという法学系主張はその通りであり誰も異は唱えないし、問題はそこではない。
捜査機関である警察の性(さが)は、たとえ法学系の方が警察への異状死届出と法的手段とは無関係で死因追及は相互利益にも通じる、と言っても現実には警察には責任追及(犯罪追及)バイアスという消えようのない視点が自覚の有無に係らず染み着いており、その視点は変えようがないという現実と、届出側はそれを避けようがないという現実があると自分でも体で感じてきた。
日本法医学会異状死ガイドラインが主張するような解釈の裏に潜む医療事故を隠蔽するのではないかとの危惧は分けて考えるべき問題である。
医療事故調査制度は9年前にすでに制度化されてはいるものの、異状死の届出制度が理想通り機能していないのは医師法第2条の解釈(異状死体)が拡大解釈に戻りかつ「医療安全」と「責任追及」の区分けも元に戻ってしまったためのように見える(※後記)。
今、政府の方針も揺り戻されているという現実を思う時に、H27年北海道医師会講演での黒木弁護士らが予言した医療界の自助努力によっては逆戻りもあり得るとの予言は我々も噛み締めなければならないのかもしれない(・・医療界の自助努力により、有効な事故調査と再発防止対策がなされ、医療関連の死亡については医療事故調査制度に委ねることが適切であるという状況になれば、警察に届け出る異状死届出の範囲を縮小する方向での法改正が行われるでしょう。・・)。
以下資料:
①愛西市:新型コロナウイルスワクチン集団接種会場で発生した死亡事案について 2023/9/27 https://www.city.aisai.lg.jp/contents_detail.php?frmId=14866 。
②NHK:新型コロナ ワクチン接種直後に女性死亡 遺族が市を提訴 愛知 2023/11/30 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20231130/k10014273511000.html 。
③NHK:東海NEWS WEB 新型コロナワクチン死亡損害賠償訴訟 愛知・愛西市は争う姿勢 2024/2/9 https://www3.nhk.or.jp/tokai-news/20240209/3000034151.html 。
④厚生労働省による COVID-19 ワクチン有害事象の関連性認定に関する考察 鈴村 泰 http://cont.o.oo7.jp/51_1/p91-101.pdf 。
⑤NHK:新型コロナワクチン接種後死亡 遺族らが国に賠償求め提訴 2024/4/17 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240417/k10014424721000.html 。
⑥厚生労働省:新型コロナワクチンに係る健康被害救済について(分科会資料) 2021/12/9 https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000864824.pdf 。
⑦愛知県:新型コロナワクチン副反応等見舞金について 2024/4/24 https://www.pref.aichi.jp/site/covid19-aichi/hukuhannoutoumimaikin.html 。
⑧厚労省:ホーム > 政策について > 審議会・研究会等 > 厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_284075.html (第88回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第18回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)令和4年11月11日(金)13:00~15:00WEB会議 合同会議 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000208910_00055.html 。資料1-3-1別添 https://www.mhlw.go.jp/content/10601000/001011732.pdf 。)第88回議事録及び資料参照。
⑨NHK:愛知 コロナワクチン接種直後に死亡 調査委が検証結果公表2023年9月26日 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230926/k10014207301000.html 。
⑩Four cases of cytokine storm after COVID-19 vaccination: Case report Front Immunol. 2022 Aug 15:13:967226. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36045681/ .。
⑪コロナワクチン接種後死亡剖検例報告 大学病院医療情報ネットワークセンター https://square.umin.ac.jp/~massie-tmd/nagao_masataka.html 。
⑫オミクロン株BA.4/5ワクチン注射直後に急変した事例は悪性症候群? https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02iE7SDPnmbH4RazBkpy2H1cYrDf61JtF3pU3GHd4quiJhmKxhhHBwcMxGhrM7P1tsl?__cft__[0]=AZWAgZ8D6zH4QErytUSC-JNldPj6pjPcDu7MBMo-mGYKEFFTrwjoCbr6jfD1wZ3uKnPO6Wtg079dYWI74is-oEKqh-uvpmcVa5cnVONix98y9pLU_ZDICuyGya3tLxgB4Ow&__tn__=%2CO%2CP-R 。
⑬社会技術研究論文集 Vol.1, 188-197, Oct. 2003 事故調査における情報の取扱いを巡って~日米の航空事故調査を素材に~ 服部 健吾 https://www.jstage.jst.go.jp/article/sociotechnica/1/0/1_0_188/_pdf 。
⑭医療の安全に関する諸問題について 日本学術会議第7部報告 平成14年11月26日https://www.jstage.jst.go.jp/article/sociotechnica/1/0/1_0_188/_pdf 。
⑮医療事故調査制度について(平成26年6月18日に成立した)厚生労働省https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061201.html 。
⑯医療事故調査制度の概要 一般社団法人 日本医療安全調査機構(医療事故調査・支援センター) https://www.medsafe.or.jp/modules/about/index.php?content_id=24 。
⑰死亡診断書記入マニュアル 「法医学的異状」等は削除――医師法21条の「拡大解釈」是正へ(東京保険医協会2015年04月15日) https://www.hokeni.org/docs/2016111200077/ 。
⑱厚生科学審議会 (予防接種・ワクチン分科会 副反応検討部会) https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-kousei_284075.html (第92回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会、令和4年度第27回薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(合同開催)令和5年3月10日の項の議事録及び資料1-3-1 新型コロナワクチン接種後の死亡として報告された事例の概要(コミナティ筋注)別紙1 p.272参照)
⑲医療事故と航空事故、共通点は多々 - 高本孝一氏に聞く◆Vol.4 2013年9月10日 https://www.m3.com/news/open/iryoishin/178753 。
⑳第3回 医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会2012年4月27日資料3 医療版事故調査機関の早期設立 https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000028iv0-att/2r98520000028izp.pdf 。
㉑東京保険医協会:【主張】医療事故調査制度をめぐって――真の意味での「医療安全」を 2014年11月25日 https://www.hokeni.org/docs/2016042700097/ 。
㉒異状死に関する厚生労働省の解釈について 日大医誌 74 (4): 192–194 (2015) https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/74/4/74_192/_pdf/-char/ja 。【異状死に対する厚労省の新たな解釈としての判断が示されたのは平成24(2012)年10月26日に開催された厚生労働省の「医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会」第 8 回会合の・・出席した田原克志医制局医事課長は医師法第21条について・・外表異状のない死
体については警察への届け出は不要との判断(以後,厚労省解釈・・】
㉓日本医事新報:異状死の届出 https://www.jmedj.co.jp/files/item/books%20PDF/978-4-7849-4978-6.pdf 。
㉔日本医事新報:識者の眼】「医師法21条の届出義務は『異状死』ではなく『異状死体』である」小田原良治No.5179 (2023年07月29日発行) P.66 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=22335
㉕東京都保健医療局:異状死の届出の判断基準(医療機関向け) https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kansatsu/iryou.files/todokedekijun.pdf 。【・・診療行為中の予期せぬ死・・なし崩し的に異状死は警察に届出となっている。】
㉖千葉大学法医学教室: 異状死なんでも相談(千葉県限定) https://www.m.chiba-u.ac.jp/class/houi/topics/topics-5.html 。【厚生労働省から毎年発刊されている死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルでは・・死体外表に異常がない場合異状死届け出は不要であるといった異説が出るなど・・この件につきましては、厚生労働省に問い合わせたところ、届け出るべき異状死は従来と変更ないとの回答を受けております・・、とある。】
㉗4学会共同声明 診療行為に関連した患者死亡の届出について~中立的専門機関の創設に向けて~平成16年4月 https://pathology.or.jp/news/rijichou/4kyodoseimei.html 。
㉘日本麻酔・医事法制研究会:診療行為に関連した死亡に係る死因究明等の在り方に関する検討会”に対する日本麻酔科学会事故調 WG の活動について日臨麻会誌 Vol.29 No.7/Nov. 2009 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsca/29/7/29_7_890/_pdf/-char/en 。
㉙日本医師会医療事故責任問題検討委員会:医療事故に対する刑事責任のあり方について平成19年5月 https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/05/dl/s0511-3k.pdf 。
㉚Vol.317 「異状死」の定義はいらない~無用な警察届出回避のために その2~医療ガバナンス学会2011年11月17日 http://medg.jp/mt/?p=1520 。
㉛医師による異状死体の届出の徹底について 及びその通知に関する質疑応答集 (Q&A) について(全日本病院協会資料) https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2019/190508_6.pdf 。
㉜日本学術会議:報 告 異状死等について―日本学術会議の見解と提言― https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1030-7.pdf 。
㉝厚労省:平成3年度版死亡診断書(死体検案書)記入マニュアルの追補について(全日本病院協会資料) https://www.ajha.or.jp/topics/admininfo/pdf/2019/190508_5.pdf 。
㉞厚労省資料別紙3関連学会の提言等:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/12/dl/s1227-8a_0003.pdf 。
2.日本法医学会「異状死ガイドライン」についての見解(平成14年)p.12~。
6.診療行為に関連した患者死亡の届出について~中立的専門機関の創設に向けて~(平成 16 年9月)同p.25~。
㉟北海道医師会顧問弁護士黒木俊郎&武市尚子:第29回医療事故調査制度と異常死届出(2015/10/1北海道医報第1165号) http://www.kurokilaw.com/qanda/ijiqanda29.pdf 。
㊲NHK:HUMAN ドキュメント&クローズアップ現代 へのコメント https://www.facebook.com/NHKgendai/posts/586189844855869?comment_id=586519434822910
㊳日本医療安全調査機構:制度運営上の現状と課題(平成31年) https://www.medsafe.or.jp/uploads/uploads/files/soumu01/R01unei/01/01_02_shiryo/shiryo05-1.pdf 。
㊴医療の場では、「予期」と「予見」は法的に違うと、医師は現場の基本認識として捉えておいた方が良いと思う。2023年8月4日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02P13nWqwZybbE5E8p32deSKj7Mnc9tdVXbbWNKaobjNenCHg7ow7b18hSCwkcDSGjl?__cft__[0]=AZUZNV62_iXjYyXIBHZhhooD2ZNvsDRuHr9YlaFsccpKFM1k4tvfuM5jQNPn5UjMgvwblKRqkfWms46wozMzgel13fM9AqNbcYzypVGQNcf1Un-sVdbeKcE7TnzI-PEabZQ&__tn__=%2CO%2CP-R 。
㊵医療事故調査制度が責任追及に使われているという現実・・・2023年11月26日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid033ve7HdTm5BeAVip6bJQDBqYC1XfRpMeXyUrBBAfj7YHm3mFK9Na6e9ak4Dfcpb9Gl?__cft__[0]=AZUFnm61sDUHtmEvS7QRWvObE5433e8KrblnYtoq52Muuwxq5QjFreUppiQ6chbwFJ8Z7dZZUnpDB3KSZ3Wchjflnf0AZNidZWWxFFAyGtpmuUeHkY5nf5cwHlgg6qmY0aA&__tn__=%2CO%2CP-R 。
※ 日本法医学会異状死ガイドライン(以下「法医ガイド」)にofficialにも従えとの記載が平成27(2015)年版死亡診断書記入マニュアルから削除されてより、その法医ガイドは一学会の考えに過ぎない考え方になったと一般に捉えられるようになり、実際自分でもその弊害がやっと無くなったと思っていた。そして医療事故調査制度が前年創設・同27年施行されるようになり、まともな医療体制に戻ると思っていた。その後報告数が少なくなり(㊳)行き過ぎではないかと自分でも感じていたのは確かではあったが、今回変だと思い調べてみたら平成31(2019)年にそれを揺り戻す動きが厚労省医政局から出ていた(㉛医師法解釈は変えていないと強弁しているが)。平成31年版死亡診断書記入マニュアルも変わった(㉝、医師法21条は異状死体であるとの添え書きが消えた)。
医療事故調査制度も本来の機能は未だに発揮出来ていないように見える。今、旧態依然と言っても良い程変わっていないように見える。これは㉛㉝㊳の資料を見ればわずか4年の間に揺り戻されたかに見える状況がぼんやり浮かび上がる。あくまでも医師法21条の解釈は変わらないと言いながら、実態は揺り戻されていることは東京都・千葉県の指導(㉕㉖)や死亡診断書追補(㉝)と書式の病名の項を見れば明らかである。医師法21条の解釈は変わっていない(㉛)と言いながらなし崩し的に病死・自然死以外は警察に届出ることになっているからである。あたかも日本国憲法9条の解釈で実質軍隊を自衛隊と呼び矛盾はないとの解釈で、法の本来の趣旨から外れても法解釈で乗り切ることと同じに映る。行政権限のゴリ押しで、言い方が失礼だが素人目には詭弁のようにも映る。また法治国家故に法学的思考が上位かもしれないが医療系思考への歩み寄りや提案等の謙虚さが欲しいというのは言い過ぎであろうか。
東京都の監察医制度の実態は判らないが日本の他の地域では制度上の問題で、「検案の役割」と「検視の役割」を区分けできていない、具体的に言えば犯罪性はゼロでご家族も強く法医/病理解剖を拒否している状況で現場の解剖諦めの判断を刑事・病院双方確認し合っても念のためと警察の上司決定権者(担当課長?)に連絡すると上司は裁判所の許可をとってでもやれとなり現場の刑事も態度が180度変わる、現場を知らない上司の万一を考えての自己防衛である。その立場であれば自分でもそうすると思うので非難するつもりはないし制度の問題である。犯罪性の有無を超えた警察のゴリ押しの弊害があるのである。
この点が、警察への届出は犯罪性の有無とは無関係であると法学系から言われても、医学系からは現実と矛盾していると捉えられてしまう問題であろう。
議論百出の頃の、医療法21条は異状死体についてなので、作成すべきは「異状死体検案届出ガイドライ ン」である(㉚)、という主張は素人にも理解しやすい表現であったが、今はもう「異状死と異状死体の区別」の議論は消えたようだ。「予期と予見の区別」も曖昧模糊の表現に変わってしまったようだ(㊴)。この点、良識府とされる日本学術会議の平成17年提言は罪が深い(㉜)。医療安全の観点での言葉と責任追及の観点での言葉の違いを敢て曖昧模糊としてしまったように思えるからである。
平成6年以降の医師法21条の拡大解釈による混乱以来の歴史的背景は㉑㉒㉓㉔㉘㉙に略記されている。それらによれば、医師法21条の解釈はそれまで司法警察への協力姿勢がもっぱらであったものが、1991年厚生省「腎移植医療の社会システムに関する研究班」が「異状死体の定義とわが国の検案体制」の報告書の中で、異状死体とは「確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外のすべての死体」と定義したことから解釈が一変したといい、そしてそれは1994年の日本法医学会異状死ガイドラインに繋がるという。多くの他の学会も同様なガイドラインを一時発表したがあまりにも問題が大きいために日本法医学会を除きすべてまもなく取り下げたという経緯があった。法医学会ガイドラインのみ現在に至るまで今もその正当性を主張し、他学会や日本医師会とは共有できていない(㉙㉞)。
抑々、日本法医学会異状死ガイドラインが出来た頃、他学会は同様なガイドラインを発表したもののまもなく取り下げて、多くの他学会を含む医療界からその問題点が逆に多く取り上げられるようになり医師法第2条は異状死体についてであると厚労省が平成24年に認め、更に日本医師会には日本法医学会異状死ガイドラインに従えとは言っていないと厚労省が居直って以来、日本医師会は攻撃の矛を収めて問題は鎮静化に向かったように見えた。しかしその後も「厚労省死亡診断書記入マニュアル」及び「厚生労働省リスクマネージメントスタンダードマニュアル作成指針(2000年 国立病院機構向け)」にはその記載がなお残っていた。上記の平成27年度版「死亡診断書記入マニュアル」からその項が削除されたことで名実ともに法医学会異状死ガイドラインはofficialな見解ではなくなった。しかし再びH31年には医師法21条の異状死体は拡大解釈に実態的には戻っていた。法医系主張に行政が沿ったといえる。問題は揺り戻されているが、これらは必ずしも周知されていない。
とにかく現在は、病院等管理者は「異状死」は警察と医療事故調査・支援センターの双方へ報告義務があり、「予期しなかった死」は医療事故調査・支援センターに報告義務があるという。医師の手間は却って増えている。その予期しなかった死とは省令(医療法施行規則第1条十の二)の項に該当するもので医療法改正で決まったものである。病院等管理者が報告義務を負う「予期しなかった死」とは、事前に説明・文書化・予期していることの管理者確認、この3つを満たさなかった場合を言う。即ち、事前説明には万万が一のリスクも文書化したどこかに記載しておかないと報告義務を負うことになる、管理者が「予期していたと判断した」だけでは駄目である、ということが今回調べて判った。
また、現在異状死を警察に変わって届出ることができる頼りになる第3者機関は日本にはまだないようだ(㊵)。かつては予期できたと言えばなぜ事前から対応しなかったと責められ今は予期できなかったと言えば警察届出義務も課せられかねない状況になっている(かつては医師不足のためにレントゲン造影剤検査等はナースに任せ各病院が緊急Drコールで凌いだが行政ルールの建前は原則Dr立合いだった)。
理由はともかく法学系側へ行政が組して警察に届けるべき異状死は元に戻ったと考えるべきと感じたが、以前にお産難民出現のきっかけとなった横浜の産科病院への警察捜査が大きな社会問題になった時その警察担当課長が条文通り行動しただけと居直ったりすることは今後は無くなるのではないかと思う。
日本呼吸器学会WEB視聴してー ③ ― 2024年04月30日
<第64回日本呼吸器学会学術講演会2024/4/5-7。招待講演1 睡眠の謎に挑む~原理の追求から社会実装まで~(講師:柳沢正史、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構、4月5日8:30AM~) をWEB参加で視聴した
この招待講演は面白かったので、Webでもう一度聞こうと思っていて保留のままにしていたら本日(2024/4/30)NHKテレビのあさイチで柳沢正史先生が登場して、睡眠特集を行っていた(あさイチ ぐっすり寝たい!睡眠改善SP[総合] 2024年04月30日 午前8:15 ~ 午前9:55 (1時間40分))。実用的な話だったので気持ちが覚めて学会の方の再視聴はやめることにした。そして遥か昔高校生の頃にどう生きるべきか、体のコントロールはどうすべきか、夜眠るべきか昼眠るべきか何時間眠るべきか、食事は何回採るべきか、口の中に手を入れて嘔吐してみたり等たわいもないことでも本人にとっては深刻だったことに悩んで沖ヨガ、催眠術、睡眠等にのめり込んでいた頃を思い出した。
<ぐっすり寝たい!睡眠改善SP 初回放送日:2024年4月30日 https://www.nhk.jp/p/asaichi/ts/KV93JMQRY8/episode/te/MYXNZQVNV1/ 。>
日本呼吸器学会WEB視聴してー ② ― 2024年04月25日
<第64回日本呼吸器学会学術講演会2024/4/5-7。会長特別企画7 中枢気道粘液栓がもたらす閉塞性肺疾患病態のパラダイムシフト> をWEB参加で視聴した
はじめボーッと聞いていたが、5人目の小熊剛教授(東海大学)の講演にはっとした。ABPA/ABPMの気道粘液栓のCT値は70と高くHAM(high attenuation mucus高吸収粘液栓)と名付けていた。血液(≒45)はおろか筋組織(≒60位、水=0,骨=1000,空気=-1000,)より高いというのである。ABPA/ABPMという名称も某学会でABPA以外をABPMと定義したので表現をABPMではなくABPA/ABPMとしたとのことであった(これまではABPAはABPMの一部と考える言い方が多かったと思う)。言葉は人によって定義やイメージが微妙に違うことが多く、北岡裕子教授(東京農工大学)が“中枢気道/末梢気道の言葉のイメージが使う人によって違っている印象を受けるがどう考えるか”との質問があり、司会者が戸惑う中で聴衆席から桑平一郎先生?が答えていたのが面白かった。北岡教授は拘りの強い方で若い頃より皆から距離を置かれていたことを思い出した。上記の場合は北岡教授の問いかけに賛成と言っていてその謂れは自分も別の所で言及しているので見てほしいと言っていた(オンライン開催4 Legendから学ぶ呼吸器病学のみらい3 末梢気道病変のみかた~日常診療に活かす呼吸機能検査からのアプローチ~、桑平一郎(総合東京病院呼吸器疾患センター))。これによれば末梢気道という言葉は1968年Macklemらが外径2mmのカテをヒト肺の気道に入れて内圧測定したのに由来し、以来内径2㎜φ以下を末梢気道という表現を使うようになったのが初めとのことである。末梢気道/中枢気道、上気道/下気道等、微妙に使い方が人によって違うこれまでの違和感についてはこの質問が留飲を下げてくれた。呼気ガス測定FINO→FiNOとの慣習表現も然りである(PaO2とPACO2の違いは受け入れられており大文字小文字の違いを区別すべきと今でも思っている。東北大滝島教授らの頃決まった?)。また桑平Drは閉塞気道の末梢がintactと考えると実験上矛盾が出てくるので単一指標のみで病態を判断するのは危険であるとも言って逆に質問もしていたので成程と思った。
いくつかの新鮮表現にも教えられた。ABPA/ABPMのHAMが吸引除去し難いのは腐生付着ゆえだと表現していた。腐生という言葉には、成程と思った。気道粘液栓は昔からmucoid impaction等と表現されていたがその性質が様々であることは臨床現場では良く経験しCT登場で気管支内小塊も見つかるようになってからは特にそうだった。簡単に喀出で消えるものから気管支鏡下で吸引圧を強くしても取り難いものまで様々だった。昔、喘息発作死を経験したDrから“緊張性気胸はないにも係らずアンビュ揉んでも空気が入っていかなかったことが救命処置中にありどうにもならなかったと仲間が言っていたことを、そんなことがあるのかと思って聞いていたことがあった。上述の桑平先生も言っていたことに関連するが、気管支鏡観察で見える範囲には粘液栓が見えなくても末梢気道に粘液栓がびっしり詰まっていることのある症例を自分でも実際経験したことがあった。PaO2/PaCO2比がcross over pointを超え、挿管、レスピレータ管理に移ったが気道内圧が高過ぎ数回に分けて気管支洗浄を行ったことがあった。BALと同じ要領である(正確には気管支肺胞洗浄か?)。救命できたがそのBAL液は特異なものであった。糸くず状の細かいペレット状小塊が無数浮遊して混濁した洗浄液が採れた。顕微鏡で見ると好酸球やSharcot-Leyden結晶の塊だった(0.5x10mm位のペレット状?)、換言すれば好酸球の膿の小塊が無数に回収された。当時そのような報告は見当たらず貴重なプレパラートでいつか症例報告をしなければと思い保存しておいた積りではあったが退職時に捨ててしまったようで探したが見つからなかった。最近は難吸収性の吸入ステロイドとLABA合剤等で喘息死は激減したのであのような症例はもう見られなくなったようだ。好酸球ペレット小塊に注目した報告はその後もなく世界に一つだったかもしれない標本と思っているほど貴重なプレパラートだった(H.2年の症例で論文化はしなかったが症例報告はした?第5回日本アレルギー学会春季臨床集会1993年5月「気管支洗浄により救命し得た気管支喘息重責発作の症例」)。この患者はその後再び重責発作で或る大病院に救急搬送されて内科からICUに移り全麻の麻酔科管理になったが改善不能とのことで内科に戻された。対応に困った主治医が既往歴を知り当院へ連絡してくれて気管支洗浄処置の応援に行ったというおまけがついた。自分の在職中は元気に存命中であったがあの時は地獄を見てきたと本人は後に述懐していた。その後、簡単な論文化がされたが残念ながらそれには好酸球ペレット小塊への注目はなく光顕像は載っていなかった※※(アレルギーの臨床14(1)51-53,1994.)。この好酸球ペレット小塊の所見は末梢細気管支レベルが広汎に閉塞していたことを如実に示しており、見方を変えれば好酸球膿で細気管支レベルが広汎に閉塞されていたための気道内圧上昇であり、細気管支性の窒息病態と言っても良いとも思う。
(※※追記:正確には、糸くず状の細かいペレット状小塊が判る弱拡大写真を示していなかったというべきだった。そのイメージ像はペレット様=キャスト状=細円柱状とも言い換えられる。)
上記の糸くず状の好酸球ペレット小塊は今流にいえばEETosisである。一般的に言われる膿は好中球の死骸であるが、単なる壊死necrosisやアポトーシスapoptosisとは言わず今ではNETosisというようだ(①②)。②によればミトコンドリアDNAが吐き出されEETsが生ずるという考え方があると言っているが之には、はて?と言わざるを得ない(今放映中の朝ドラ虎に翼,寅ちゃんの口癖)。ミトコンドリアDNAと言えばoncocyte(本来のmitochondria-rich-cell、一般的には腫瘍細胞一般とも誤解釈されている?③)の意義・機序は未だに不明だからである。スエヒロタケもHAM+という。スエヒロタケのABPMも1例経験しているが、培養期限を過ぎて放置しておいた培地から生えてきたというので記憶に残っている(これも学会発表のみ行っていた。「スエヒロタケによるアレルギー性気管支肺真菌症の一例」第594回日本内科学会関東地方会,2013,2.8.)
末梢気管支が2mmφ以遠を言うのは納得するとしてそのあたりから気管支軟骨も消失するという別の演者からの答えがあり最近のChestでも報告されたと言ったのには、これにもはてっと言わざるを得なかった。日本人の業績には目をくれず西欧のデータのみ重きを置く傾向があると感ずるのは最近のCOVID-19流行初期のマスクすべきか否かにも表れていたことでもあるが、2mmφあたりから軟骨が消失するという意見にはその方面の専門家である北岡先生が意見を言うと期待したが発言はなかった。
かつて日本人の名著と言われた原著「Roentgenologic Anatomy of the Lung」Hideaki Yamashita,M.D. 1978 by IGAKU-SHOIN Ltd Tokyo /New York.では軟骨がなくなる末梢気管支径は0.5mmφ前後と言っていたはずである(写真:絶版になって今は手に入らない、残念である)。気管支径(細気管支径)は病態や吸気位・呼気位で変動するので測定方法によって異なるのは承知としてもそれに言及せずして2mmφが軟骨消失レベルと言い切るのには、はてっと言わざるを得ない。もっとも気管支軟骨があっても無くても2mmφ以遠は全周性※ではなく散在性島状と思われるので気管支径変動を制限するわけではないのは勿論である。もっともEEP(equal pressure point)は病態によって動くので、2㎜φ細径気管支鏡を使って実観察しているDrには是非教えて頂きたいところである。 (※正確には馬蹄形)
(形態学的視点ではなく、軟骨の存在が細気管支レベルの生理学的機能に影響してくる付近が2mmφ付近であろうと言うのならばそれはそうかもしれない)。
①NETosisの説明:東北大学 加齢医学研究所 加齢制御研究部門 基礎加齢研究分野(堀内研究室) https://www2.idac.tohoku.ac.jp/dep/mcb/study-nets.html 。
②EETosisの説明:ア レ ル ギ ー 用 語 解 説シリーズ,EETs/EETosis,アレルギー69(4)271―272,2020. https://www.jstage.jst.go.jp/article/arerugi/69/4/69_271/_pdf 。
③オンコサイトoncocyteの説明:「オンコサイトの糸粒体の電子顕微鏡的観察」片岡隆嗣,耳鼻咽喉科臨床,Supplement34,pp1-30,1989. https://doi.org/10.5631/jibirinsuppl1986.1989.Supplement34_1 。
< Oncocyteの元来の意,即ち=mitochondria-rich cell,の説明:Wikipedia https://en.wikipedia.org/wiki/Oncocyte 。即ちtumor cellの意だけではない。Oncocyteは未だに解明点の必要ある細胞である。>
④<写真>
<div class="msg-pict"><a href="https://ku-wab.asablo.jp/blog/imgview/2024/04/25/6bce5b.jpg.html"
target="_blank"
onClick="return asablo.expandimage(this,662,956,'https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2024/04/25/6bce5b.jpg')"><img src="https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2024/04/25/6bce5a.jpg" alt="Roentgenologic Anatomy of the Lung by Hideaki YAMASHITA 1978. 1st edition" title="Roentgenologic Anatomy of the Lung by Hideaki YAMASHITA 1978. 1st edition" width="300" height="433"></a></div>
※追加:
かつては、重症喘息と難治性喘息は全く別概念だったが今は区別しなくなった。
難治性喘息診断と治療の手引き〔第2版〕2023(日本呼吸器学会版)および、難治性喘息 診断と治療の手引き2019(日本アレルギー学会版)、のどちらも同じような扱いになった。
「難治性/重症喘息の定義は,指針やガイドラインによってそれぞれに違いがあり,統一されたものはなく,時代における標準治療の違いにより,その定義も少しずつ変遷をとげている・・ATS/ERSガイドラインにも合わせ・・難治性喘息と重症喘息をほぼ同義としている・・(アレルギー73(1)11-13, 2024. ガイドラインのワンポイント解説)」、と暴露している。これを進化としているが、これは退歩と言い換えた方が良いと私は思っている。
確かにICS/LABAの吸入薬等の進歩で難治例は減少しているが無くなったわけではないのにもかかわらず世界の学会等指導者層がその難治例を経験しなくなったことによる同義化としか思えない。そもそも難治性喘息はアドレナリンが著効しないが重症喘息の中には死に至るほどの重症であってもアドレナリンが著効する例がある。難治性喘息ではまず著効はしない。かつてβ-blockade-theoryと言われた由縁である。
可能な限りの治療を行っても数週間以上体動困難な程の喘息症状が続きコントロール困難な喘息と、普段日常生活をほぼ普通に送っていた喘息患者が放置すれば死に至るほどの急激な重症喘息発作に陥る場合とでは治療薬に違いが出ることは、昔はあり今もあるはずである。20数年前までは日本アレルギー学会でも発作強度と頻度の組み合わせで重症度分類していたが現在では発作強度・頻度を同列としてそれと治療度の組み合わせでの重症度になっている。重症度を強度・頻度を含む重症度に変更にしたための違いが重症度分類に別世界を生んだ原因のようだ(GINA global initiative for asthma1993が出たことからの変更か?)。この新しい分類が悪いとは勿論言わないが難治性喘息と重症喘息を同義とするのは治療上の問題が出てくる。それは上記の違い等があるからである。また大部分は強度頻度が相関するにしても、頻度が軽度でも高度の重症強度発作リスクありの相関しない例も有るのである。
気管支洗浄してやっと救命し得た上記例は難治性喘息でもあり重症喘息でもあると言える。急激に悪化して意識消失する程の重症喘息発作でも救命回復後に本人に聞くと手元のハンドネブライザーを口にくわえたまでは覚えているがそれ以降は覚えていないというような重症喘息発作は以前には決して稀ではなかったし、アナフィラキシーとの違いがある事も明らかであった。
日本呼吸器学会WEB視聴してー ① ― 2024年04月20日
日本呼吸器学会WEB視聴してー ①
<第64回日本呼吸器学会学術講演会2024/4/5-7。特別報告6 ダイバーシティ&インクルージョン:日本呼吸器学会と呼吸器科医の未来に向けて(将来計画委員会・DEI委員会)>をWEB参加で視聴した
最初の演者の多賀谷悦子教授(東京女子医大)の講演は面白かった。自分よりも20年以上若い世代であるが、日々行っていたことは似たようなものだったので親しみも持てた。
日々の多忙渦中では喜怒哀楽も辛さもその都度あったが、自分を見失わないように、溺れないように、がむしゃらに、一に勉強二に勉強、三・四が無くて五に勉強と何でも勉強勉強で知識欲はあったし体力もあった。夜に研究室の机の上で寝てそのまま出勤も平気だった。周りの仲間も同じように徹夜明けで目を赤くしながら外来診療するのも稀ではなかった。患者はいつ来るか分からず夜討ち朝駆けが当たり前だった。辛いなんという感情は捨てていた。目の前に出てくるものに制限を設けずあるがままに何でも受け入れたり聞いたり真似したりしていたせいか最も効率的な学習も遊びも周りからの耳学問・良くも悪くも他山の石であった。患者には感謝されるし充実感もあった。消化器検査はレントゲンも内視鏡もスクリーニング検査は内科の基本との当然の認識であったし、呼吸器内視鏡は当たり前で右心カテやペースメーカーも自分で入れていた。一時ペースメーカー留置でパーマネントへのつなぎであるが随分助かった患者もいたと自負している。肝臓や腎臓等同じ大事な臓器でも数分一休みしても大丈夫な臓器と違って心臓は数分止まれば永遠に止まることにつながるという違いがあるからである。診察は患者が診察室に入る様子観察から始まる、君たち専門馬鹿にはなるなよとは恩師の言葉で、目指すは富士山のような高い専門性と幅広い総合性であり小さな築山ではなかった。
次から次へと新しい疾患に出会うのでゆっくり振り返える余裕はなかったが気持ちは充実していた。おかげで家族には迷惑をかけた。我が幼子が脚に行かないでとまわりつき笑顔で突き放して出勤するのは当たり前で勲章とされた。後年、あの時はお父さんに捨てられたと本当に思った、とそれとなく言われた時はそうだったのかと内心愕然とした。でもその位やらないとやるべき役割は果たせなかったと今でも思う。おかげでこてんと何度か倒れても幸いまた復活して今まだ生きている。大戦前なら何度か死んでいると思っているので運が良かった。上記の演者も嫌だと思っても仕事にリミテーションを設けなかったのが後年役に立ったと言っていたのが印象的であった。
今回の呼吸器学会総会で男女共同参画委員会がDEI委員会に名称変更されたことが報告された。名称変更した理由・この名称になった理由について調べてみたが下記①の説明が理解しやすいようだ。
日本では1999年に「男女共同参画社会基本法」が公布・即施行されている。それを受けて多くの学会により男女共同参画委員会等が学会内に作られるようになっていた。そして今回DEI委員会に名称変更されたことになる。
人種差別や男女差別・障碍者差別等は良くない、多様性の受容は社会の存続に必須等と言われるようになって久しいが、現実社会では意識の奥に浸み込んだ無意識の差別は今でも相変わらず無くならない。男女共同参画→DI→DEI と言葉が変わってきているが、かつて医療事故防止委員会→医療安全委員会→医療安全管理委員会(平成10年代)に変わったのも同じような意識変遷の流れであろう。
DEI(DE&I, diversity equity and inclusion)とequity(公平・公正)が加わったのはアメリカが始まりといい、新自由主義やポピュリズムが受け入れられるようになりその後トランプ大統領も当選してあからさまな我田引水が抵抗もなく当たり前になり、Black-lives-Matter(黒人の命は大切だ)等の様々な事件・問題も社会に出てきた以降で、平等という概念の違和感に変わってequityが新規に追加されたのは最近で、未だ4-5年しか経っていないようだ(②)。
そして日本ではLGBT法の成立は昨年で、出来たばかりである。この法律は理念法でLGBTに限らず子供・障碍者・弱者も含むあらゆるマイノリティーの人権を守ることが目的という(③)。
貧困や格差は世代を超えて受け継がれる等と言われて既に久しいが貧困も格差も相変わらず無くならない。かつて1億総中流と言われ世界一安全な国と言われた日本も、今やあらゆる格差が拡がり犯罪多発国に陥っている。将に衣食足りて礼節を知る、である。
今や貧富格差等の格差は益々拡大しかつてノーベル賞も与えられた経済理論のtricle-downは起こらず、優位は自分の実力で勝ち取ったものと勘違いする人の心も変わらない。男女平等とも言いながら同権不平等の実態は変えようもない。そこで出てきたのがequityという言葉のようだ。確かにスタートが違えば比較できないしゴルフのハンディキャップは当たり前に皆受け入れられている。かつて先輩に院長の地位は本人の能力に与えられたものでなく自分の背中に背負う看板なので自分が偉くなったと勘違いしないようにとの心構えを送られたことがあったが、今思えば有難い先輩だった。
①【DE&I】DE&IのEとは何か?いつ頃から、なぜ加わったのか? Takahito Sasaki(佐々木孝仁) 2023年5月21日 https://note.com/takahitosasaki83/n/ndc81307fe2ed 。
②LGBT法(性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律)2023年6月23日公布即日施行 https://www8.cao.go.jp/rikaizoshin/law/pdf/jobun.pdf 。
③内閣府「性的指向・ジェンダーアイデンティティ理解増進」 https://www8.cao.go.jp/rikaizoshin/index.html#law 。
Refeeding syndrome について ― 2023年12月11日
戦国時代の“秀吉の兵糧攻め”が英語論文になったという(⑪,⑫,⑬)。既に知られていたRefeeding syndromeではあるが「詳細な記録が残っており教訓的な逸話として後世に残すべきだと考えた」と著者の弁である。その理由を聞いて“あっぱれ”と思う。
足尾鉱毒事件も詳細な記録がのこっている公害事件の世界的な嚆矢である。英文の著書も既にあるが未だ世界的にはあまり知られていないのが残念である。
Refeeding syndromeも対応を間違えば致命的にもなり得るので、もっと診療現場に知られて良い疾患である。知る人ぞ知るなので、改めて調べてみた。
かつて若い頃ヨガ道場で修業の真似をしたことがあるが、一般的に断食終了後の摂食開始は回復に2倍以上の期間が必要と言われていた。第二次大戦中のMinnesota Study(Keys,1950)では飢餓後の制限解除後は自分でもコントロールできないほどの無茶食い衝動が伴うとされた。自分でも2週間の修業後に三島道場から帰省する段になってそれに陥っていたのを思い出す。
Refeeding syndromeは、過酷な飢餓後の急速な栄養補給でかえって死んでしまうというものである。低リン、低Vit.B1、低K、低Mg、等で、心停止・呼吸停止・けいれん・意識障害などで、摂食開始1~3日以内に急激に出現するといわれている。栄養投与は150kcal以下/24hrs位からゆっくり栄養再開しなければならないという。
第二次大戦や秀吉の兵糧攻め(鳥取城・三木城)で発生していたと既に知られていることではある。
以下、その論文等の資料を挙げる。
資料:
① 戦国こぼれ話】地獄のような鳥取城の惨劇。440年前に行われた羽柴(豊臣)秀吉の兵糧攻めの全貌 YAHOO!Japanニュース 渡邊大門株式会社歴史と文化の研究所代表取締役 2021/3/10(水) 6:00 https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0cdb82ddb1db5bd9a53b15e73d6ba2c5b677d996 。
② 三木合戦 出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%9C%A8%E5%90%88%E6%88%A6 。
③ 地獄絵図の虐殺!日本史上稀に見る鬼畜戦略、豊臣秀吉による「鳥取の飢え殺し」とは? Japaaan マガジン2022/06/29 https://www.google.co.jp/search?q=%E7%A7%80%E5%90%89%E3%81%AE%E5%85%B5%E7%B3%A7%E6%94%BB%E3%82%81&sca_esv=589734753&ei=U9p2ZcueKtyH2roPk5i3sA8&ved=0ahUKEwiLlJ7njIeDAxXcg1YBHRPMDfYQ4dUDCBA&uact=5&oq=%E7%A7%80%E5%90%89%E3%81%AE%E5%85%B5%E7%B3%A7%E6%94%BB%E3%82%81&gs_lp=Egxnd3Mtd2l6LXNlcnAiFeengOWQieOBruWFteezp-aUu-OCgTIFEAAYgARIu3lQ5AdYtm9wAngAkAEDmAGgAaABsyCqAQQzOC44uAEDyAEA-AEBqAIUwgIKEAAYRxjWBBiwA8ICHRAAGIAEGIoFGOUCGOUCGOoCGLQCGIoDGLcD2AEBwgIWEAAYAxiPARjlAhjqAhi0AhiMA9gBAsICDRAAGIAEGAQYsQMYgwHCAgYQABgDGATCAgoQABiABBgEGLEDwgIHEAAYgAQYBMICCxAAGIAEGLEDGIMBwgIKEAAYgAQYigUYQ8ICDRAAGIAEGBcYsQMYgwHCAgcQABiABBgXwgIJEAAYgAQYBBgl4gMEGAAgQYgGAZAGCroGBAgBGAe6BgYIAhABGAo&sclient=gws-wiz-serp 。
④ 第6回 秀吉の兵糧攻め 月刊レジデントノート2015年3月号 https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115476.html 。
⑤ NSTミニレクチャー第 45回 ~ リフィーディング症候群について ~ 西新潟中央病院栄養管理室 NST NEWS 第71号2020 年3月3日 https://nishiniigata.hosp.go.jp/contents/bumon/nut/doc/nstnews71.pdf 。
⑥ 症例報告 Refeeding Syndrome(RS)を呈した神経性無食欲症--RSの予防と治療 精神神経学会誌111:388-397,2009. https://cir.nii.ac.jp/crid/1520291855083616256 。
⑦ 摂食障害の救急治療と再栄養時のrefeeding症候群 日本内科学会誌 105:676~682,2016. https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/4/105_676/_pdf 。
⑧ Refeeding syndrome and hypophosphatemia MARINELLA M. A. J Intensive Care Med 20 155-159, 2005. https://cir.nii.ac.jp/crid/1571135650976594560 。
⑨ 神経性食欲不振症の入院中における低リン血症もしくは Refeeding Syndrome 日本心療内科学会誌 8 (4), 229-234, 2004-11-20 https://cir.nii.ac.jp/crid/1571417125364829696 。
⑩ Hypophosphatemia during nutritional rehabilitation in anorexia nervosa: implications for refeeding and monitoring Journal of Adolescent Health 32 (1), 83-88, 2003-01 https://cir.nii.ac.jp/crid/1361418521165153792 。
⑪ 秀吉の鳥取城・兵糧攻め、「リフィーディング症候群」で大量死亡か 医師らが論文 2023/12/2 産経新聞 https://www.sankei.com/article/20231202-ZIJX5PT5VZKENAEDGSCHIEFIQU/ 。
⑫ 秀吉のおかゆ、大量に食べて急死!?「戦争に伴う飢餓への警鐘」 鳥取城の兵糧攻め後の死者、飢餓状態で起こる最古の症状か 学芸員と医師が国際論文発表 2023/11/21山陰中央新報 YAHOO!Japanニュース https://news.yahoo.co.jp/articles/8276f4400777c23b223b662a5b5266a64b2cb47a 。
⑬ Hyoro-zeme in the Battle for Tottori Castle: The first description of refeeding syndrome in Japan Am J Med Sci . 2023 Dec;366(6):397-403. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37690626/ 。
尾身茂著「1100日間の葛藤」を購入して、わが身を振り返る ― 2023年10月19日
政府の新型コロナウイルス感染症対策の実質のリーダーだった尾身茂氏が後世の役に立つようにと振り返りの記録「1100日間の葛藤・・・」を上梓した。
日本を含む世界中がその対応方針を暗中模索する中で政府の助言者として陰になり時には責任を押し付けられたかのように政府の矢面に立たされたり、時には無視されたりした、自分にはそう映った。攻撃の的になったりしたことも目にした。尾身氏ら有志達は毎日曜日集まって勉強会を開いていたという。
本書を読んで自分でもどうしてきたかを振り返ってみようと思いページを捲ってみたがあまりにも多岐にわたり、自分達の行動と照らし合せるには膨大な努力と時間がかかりそうなので、取り敢えずプロローグとエピローグを読んだだけで自分達の歩みも纏めてみることにした。
自分も介護職場の最前線でそれなりの情報を得て暗中模索しながら努力した積りではあったが、結局自分たちの身は自分たちで守るしかないとの結論になった。試行錯誤しながらもその都度今現場で出来ることは何かを常に頭に置きながら行動した。どんなに偉い人が言っても自分達に適用できなければ無視するようになった。正解だったかどうかではなく後悔しないためにはどうするかという方針を取った。事業仕分けの政府方針が介護は社会インフラとして事業継続が必要であると明示してくれたことは自分達の方針決定には大きなベクトルとなり有難かった。通所リハ人数制限に対して地元行政は不満意向を示したがこれには従わなかった。
初期の頃(2020年2月~)は、施設内への感染侵入阻止のためには、疑いの段階で手を打つのでは遅いので、スタッフには感染の不安が少しでもあれば遠慮なく欠勤するように周知して「疑いの疑い」の段階で手を打つように心がけた。介護業務はルーチンワークを削減して最低限でも止むを得ないとした。1日の欠勤者が何人までなら凌げるかと腹を括った。各々のスタッフが主体的に行動してくれるであろうとの信頼は大きかった。
自分の職場は100人の要介護の入所者(一般棟50人・認知棟50人)がいた。通所リハ利用者も30人を上限にいた。介護施設は施設ごとに構造が皆ちがうがわが施設の一般棟は殆ど個室がない構造だった。介護業務自体が3密を満たしている上に発生しても隔離ができない。しかし現実には感染者が発生しても直ぐ受け入れてくれないことがあちこちで発生し、しかも事前にECMOの事前許可を取っていなければ受け入れ拒否される等様々な情報が入り入所者全員の事前のそれらのアンケートも取っておくようになった。
2020年4月には全国の老健でクラスター発生したが受け入れ先がなく自施設で看ざるを得ないことが現実に発生したのでおそらく全国の老健で衝撃が走った(福岡・富山・千葉県等)。老健は医師が常駐しているからとの理屈である。それ以前より老健はある時は病院扱い・ある時は介護施設扱いで行政にとって都合よく解釈されていた。だから例えばオムツは病院と同じ感染性廃棄物扱いで特養の一般廃棄物扱いより年数百万円の余分出費があった。
同じ頃群馬県でも有料ホーム〇〇にてクラスター発生したが直ぐには転入院できない事態が発生した。施設の対応が問題視された一方保健所の対応にも問題があるとのくすぶりがあり後に知事が第3者の検証チームを立ち上げた。事実が明らかになることを少し期待したが問題となる点の記録は見つからなかったとのつまらない結論になった。その頃より自施設では、気になる指示が公からあったときは日時・相手名・内容をメモしておくようにと指示するようになった。
初期の頃はPCR検査体制が不十分であったために、現場でPCR検査依頼しても基準に合わないからと保健所に拒否されることの問題もあり国会でも取り上げられて当時の西村大臣が目安で決めただけで基準にした積りはなかったと言い訳したこともあった。既に体制改革で規模縮小されていた保健所の能力では耐えられないことは2009年の新型インフルエンザで経験済なのに今回も末端の保健所に丸投げをするやり方は全く政府に反省がない証拠であった。国会で参考人の児玉龍彦教授が民間の力を借りる具体的対策を助言したことがあった(2020年7月)が国会は動かなかった。かつて日本学術会議が医療を崩壊させないためにという公開シンポジウム(2007年8月30日 日本学術会議講堂)を六本木で開催したが、清水の舞台から飛び降りる程の気持ちで田舎から出ていき出席したことがあった。世の有識者と言われる人達はこんなにも了見が狭いのかとがっかりして帰ってきたことがあったが、この国会の議論も似たようなものだった。
1年足らずでmRNAワクチンが実用化されて画期的ではあったが手技を筋注限定されたことには困った。インフルエンザワクチンは日本においては皮下注となっていたのでこれまで問題なく高齢者にも行えたが、筋注となると日本の高齢者施設では問題が生じる。そしてこの問題が全く取り上げられないことに大いに驚いた。日本の介護現場の実態を全く知らずに米国CDCの受け売りに日本中が終始していた(資料ABCDE)。従来より小児においては筋注の方がやりやすいようで筋注も許可してほしいと国に要望していたことはあったが、それに輪をかけて筋注にすべきだコールが米国輸入の専門家が大声で唱えていた。小児はどちらでもよいがるい痩衰弱高齢者にとっては大事な違いがある。念のためにその時点の入所者の筋注可否をエコーでチェックした所入所者の1/3程は筋注不可の結果であった。筋委縮により医学的には皮下注になってしまうということであった。免疫効果は皮下注も筋注も大同小異だとは思っていたので見做し筋注をofficialに認めてもらえれば問題なかったが、筋注でなければ免疫効果が期待できないと日本中の専門家が大声で唱えたことにまた驚いた(これは後にエビデンスがないだけで同じと思うと免疫の専門家に言って頂いた㉕)。マスクもサージカルマスクと布マスクの違いがNHKも含めて強調されすぎたためのマスク不足も同じであった。米国では不活化ワクチンは筋注が基本とされていたせいか輸入ワクチンは筋注が多い。高齢者施設が対象でなければどちらでも構わないが、そもそも米国のCDCには枯れるように痩せて亡くなっていく高齢者へのワクチンなどは視野にはないと思われる。日本の現場は西洋とは違うのである。医療は社会的要素が必須であるために世の中が認めないものは独りよがりの医療はできない故に、今回の新型コロナワクチンの副反応の度合いが初期には分からなかったこともあり、もし有害事象が出て訴えられたら裁判に耐えうるかという視点から対応を判断するしかなかった。医学的には「見做し筋注」でも問題ないとしても添付文書が筋注に限定されていて社会のいわゆる専門家たちがその違いを針小棒大に声高に唱えている以上添付文書に違反していては裁判には耐えられないと判断した。どうするべきかとあっちこっちに相談したが埒が明かず、見做し筋注を認可してくれなければ医学的判断でワクチン注射可否を判断するしかないと官邸にもメールした(2021/3/26付)。そんな細かいことに官邸が気を回している余裕はないとは分かっていたが裁判にも耐えられる方策の一助とした。従ってご家族が希望しても医学的理由でワクチン注射不可と当時判定した例が何人かいた。この点の社会の問題意識は当時全くなかった。今でさえないと思う。いわゆる専門家の意見が大きい故に最近の認可されたワクチンで高齢者こそ施行した方が良いと思われるワクチンさえ筋注に限定認可されてくるようになったことには大いに問題意識を感じている。
情報収集の軌跡の一部を以下に拾ってみた。
①新たな言葉「エアロゾル感染」について2020年2月14日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02F5un4A2qxyawRekanhGFjtxEjMZnTuTDxVquDvN7S9JY6DiywCATvQsc6DBCEinml?__cft__[0]=AZVZgdUyRPrsYfPjPoTM5pDp6K0e5q3cu3GcLIrPW6BUArxM6eBSC9FLFaLlwN52ApAOaMK80W7WxEu8kcBaVavIo-4h0TGLX7hvVPQ1znSJ4YCFYAEHRFm7xjFaoZW_tos&__tn__=%2CO%2CP-R 。
エアロゾル感染(=マイクロ飛沫感染)という言葉については空気感染(=飛沫核感染)との異同で学者も含めて混乱していた。学会でも新型コロナは空気感染し得ると発表していた専門家もいた。しかしR2.7.30.の政府のアドバイザリーボード資料「新型コロナウイルス感染症はこうした経路で広がっています」の中では異なる概念であると明示している。空気感染が長時間・長距離まで感染が広がり得るのに対してエアロゾル感染は、3密等の一定条件下で起こり得る少し長い時間・少し長い距離にまで感染が拡がり得る場合を指すと言っていた(意訳)、この言葉が定着した今これがofficialな見解になるのだと思う。本書を読んで初めてその定義を知った。
②脆弱の読みは頂けなかったですが、価値ある発言です。2020年2月16日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02e8eDaozHDAUeaqHe2jx7YvfxF3oWZfcYwDLdw4ZgY829ion2kHp4eGD4hN9bvUzyl?__cft__[0]=AZWil5gEBCinFSCXczChj35VbriByBM4zrfsF31wW5cIyxOsETu7vCIwBmfv82KOTF0WS3dCU7HkRPHycfjXVq8n_T7sH48JmePxAkzutQUmaNMycV43Z8SoKeLDgFz0kK4&__tn__=%2CO%2CP-R 。
③豪華客船ダイヤモンド・プリンセスにてN95マスクを使っていた?何かの勘違い?あるいは報道間違い?2020年2月21日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02YZvhPvkFssen6DovoHDT58mKZa6c5ctpPYNkKxEtF928X5CthC9r2pR53b4Dykkdl?__cft__[0]=AZVXXSY76SoZbgwK34xbzqgTSZbdLxFJRLxVzUm_mbqo2LQK2ZcnGv4RUwhwGDAUAmkmihSxb-6mgd1Ew3OKCZ_nikMQT9IypbIAYlG45xvrwoVlW_MPptzh6EYXcWfuqWA&__tn__=%2CO%2CP-R 。
何人か厚労省スタッフにも感染者が出た時に専門家の誰かがN95マスクの使用法がまずかったと批判していたのをニュースで聞いていて、本来ならPAPRを用意できなくて申し訳なかったと労うべきものを個人の責任に押し付けるとは何事か、と怒りを覚えた。現場感覚がない証拠である。着けたまま動き回れば息苦しくなってしまうことは自分で着けて動き回ってみれば直ぐ分かる。
④新型コロナは自然環境でどの位生きているか?2020年2月21日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid032JUvj2EjqEJs3RcnaXWQumSexzvcouzLTyto62q8FSosvMQhFZh52HRsHH9VizoDl?__cft__[0]=AZWWlA69Lnh3JEmCCq6xYRdLUNc0jv9kUjN25-rl-ndURqA9iQcoAdum8ed1RYWNKcsONQCnPelidQo0-14wbwdiw8gon0SfzFhiN2tx0XPvv0ReFhpm7C7S8S0W4ISZOJI&__tn__=%2CO%2CP-R 。
感染爆発の初期の頃は最も知りたいデータであった。情報が乏しい中で一所懸命調べたつもりではあった。もし施設にウイルスが入り込んだら入所者の1/3はなくなってしまうだろうと腹を括っていた。風邪でも亡くなりかねない程の慢性呼吸不全HOT利用衰弱者等がゴロゴロいたからである。
⑤新型コロナウイルスでのマスク不足・・マスクは手作りマスク で十分だ・・2020年2月28日 https://ku-wab.asablo.jp/blog/2020/02/28/9218715 。
マスク不足・PPE不足は不必要な人たちが買い占めたために、本当に必要な病院の人たちに届かなくなってきたために、一般の人たちは手作りマスクで十分だと言いたかった頃だった。この頃からなりふり構わずネットで情報発信をするようになった。
⑥傾聴すべきご意見です。様々な現実的問題点をご指摘されています。2020年2月29日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid04WNQN2UFfAiwYSMR8yoVj9RcCFenAAgyipndiSHRDye2uDHaP4jFa2w65zBfDybhl?__cft__[0]=AZV75ysKKgREjFD1e4LoG2OjwIlZ1gxzqP_v4H-rNXDJHmcgQRweR-hnb9Fsq0Q63r4oyqmbT7H0CPbUYl7c-kutLOeM7V_MGhEDCw4qcFpi6CxYtF2UmSO-nfy3SjkuUjs&__tn__=%2CO%2CP-R 。
初期の頃はPCR検査の結果が出るのに1週間もかかった。今ではうそのような状況であった。
⑦「中国からの輸出例の約7割が未検出か・・Medical Tribune」2020年3月4日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid0m1hPpagvuQNfb75Zc1kpM7Tb1QQi3tSxtfRW2QtpFBd4siiFcg3u1UU8NHaWUMFel?__cft__[0]=AZW7PExd76S079ZgForofNTQamwlBIGwWbvnbIFoVuPeSlbwm8ic5gW6OT-N6nDy03_tkHetnd64MooxvE2NVjlOehyhh87dO_hZ_Qz9fsp3Y4xXx9FAxF5Ws3yoC6juUoM&__tn__=%2CO%2CP-R 。
机上での判断ではPCR検査の感度も特異性も極めて高いといわれていたが実際には偽陰性も擬陽性もあることが突きつけられてきた時期であった。
⑧日本プライマリ・ケア連合学会・・分かり易く書いてあります。2020年3月16日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02NaMCHc1QrxASv3JJ4ovccCaffZ4WJjb5U6yaN8owGJMW2JhGq5MdZ1XS2Mzpfvyxl?__cft__[0]=AZVSiBomlOPKUH5xQumpYWCh3DaJXJCqcIj8lNdCZMMfYDaMl0JK0Ht4CmBUHbPemw6U4xrB9-7VhFmpeoQ8gwbNrtnA20MyCjnb-Dlatg4xP3MVu55fdRSIFTxplZnD4Vc&__tn__=%2CO%2CP-R 。
様々なデータが飛び交っていた時期だった。
⑨NHKや国会はこういう意見を聞くべきではないでしょうか。2020年3月17日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02pnzP2KJDe5e7oUu8W57jpeeosrFUwp1ZNSA8vPeSExNWozdLzvZ5voZEhyDv5vxSl?__cft__[0]=AZWlvAvwlNad2DlPekQiuSBDuPydK3aKTIudzKCqR6E0eJGfMoJNyK8HO-O_k1OUtihyFDbmhf6eouwNcgdykABvPxjTdIShIPM_Vj6GqwQTwTO74lT8_ozXguw_gsLWKz4&__tn__=%2CO%2CP-R 。
検査はただやればよいのではないことを理論的に説明している情報で、データ解釈をする上での基本だと思っていた。
⑩2020年3月19日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid026YruoTpTfi4XJYSmZfyY2z3GSwesHMtSkCb2g5HzjZHkCDbJWjbAg5CnowteC5rol?__cft__[0]=AZXGiSNP5ZuffuTiTtza1N-qvcuBH6CZlwh1a3c2WqBij7ab96S3lhwp96esuklATC6-7mGAgUU3n1Qoyc785PWLHNRHXKao-rGCHju4KWI7XMzKIRiMNJ5ZhKTnH5pkc9Q&__tn__=%2CO%2CP-R 。
検体採取手技が駄目なら検査結果の解釈も全く無意味になってしまうことから、自分は検体採取法には拘っていたが、それに拘っていた情報は論文も含めて殆どなかった。
⑪2020年3月22日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02rGHNzbkChLCKiQdnqRysrKnwiSWUnTFDbnf3aeFhMsrmEm6bARaj3dreA7WMgYL4l?__cft__[0]=AZXJ7JQn-V_-kUuTNBuZQcHUketLH_jJ8VF2flGKGUgGnVap0MiqEjgGak47SZeZXGAn0OasoIwEOf9x8CmHF74yPejfLdD0_SPJ1RhlH7ckU9SmQL9CTkWCRAt7DEpK4U0&__tn__=%2CO%2CP-R 。
⑫マスクは有効? WHOは「どんな状況でも勧めない」・・朝日2020年4月3日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02fgrHDT3Dt6x8HT9C7mn55AojBrCeVGqd4ak3X6XdhvTfPukWzCT22DqMjEaH4J27l?__cft__[0]=AZXYo89hRYvxy1SVFdK8938F7tU3ZNkDNYhKkuKnelb-YPwKpATADRAuUcbP-uuiOfHxIZJ8adwvnjZhPvgQDb-MtqC2_wXGTG_UkDYR8lxoJFVs_MLKAbjQ9cxl9r90TuA&__tn__=%2CO%2CP-R 。
マスク習慣のなかった米国や欧州はマスク効用を否定していた時期の最後の頃だった。まもなくパニックになった米国ではバンダナでも良いから巻けと180度方針転換することになった。同じようなことは日本が発出した3密や8割おじさんと揶揄された政策もまもなく世界に受け入れられたと記憶している。
⑬The BBC website・・2020年4月5日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02MkqpmShT2A8PXmo9vXDhD77pM1wsEojoJ8oTdn859TRsEaN73uBYeRD6hJHAovCql?__cft__[0]=AZX8DBUoDDi09mK6_Yzqt4WpKd4idyXp26iBrLvw8xCqiA4pL4Jsm5Hua2UcLVW3kmwKSg4D-fx3hEhq3F8GEK2piShIaKWTBQ7TvMwDkEw-rH-lX7EWSnWoiBWMevLGt-U&__tn__=%2CO%2CP-R 。
米国もマスクの効用を受け入れたニュース。
⑭どなたか教えて欲しい。8割制限とは・・2020年4月9日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid0fKt9kXPZE9nZyy7YJh4PMhVWujxfndDChgjtmp7aqQ73jor54HAUdVCc8zb2AoJWl?__cft__[0]=AZVR-oVQ9gkgvVbgFNqB3dkNKM0EIjourPoYPeV2LYM3GNy5iAa0lBwnJc7wbrPg78uNocEmzlYe02He8GknjyKMydh1EYFDLZ747KgOg7rc-I7rhYFtGLnCAVTifTtZX_s&__tn__=%2CO%2CP-R 。
身の回りでも、8割接触回避の捉え方に個々人で違いがあることを学んだ時期だった。
⑮手作りマスクとサージカルマスクの防御効果の違い・・2020年4月13日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid056zKH35i7TfCtE6mYwMXnRGc3uveXdS7TNCNyzpoLSPpBARXC3eimqsjxvWgVJwVl?__cft__[0]=AZVErYn0Xyyy8nn_JR_JVW26FL5EtnRBtFgi41NWIFKlD2JSX9jCQMUHYhM1SpFKeutyM3DLqccM65yG2EDQoq68e94A5KggmjAFpAC2JPv70DStqUrGj5jMotLzTU8fE34&__tn__=%2CO%2CP-R 。
手作りマスク・サージカルマスク・N95マスク等の違いのデータが出てくるようになったが初期の頃と大同小異であった。要はその環境によって使い分ければよいことでそうすることで品不足は防げると思っていた。だからテレビレポーターが戸外でN95マスクを着けてレポートしている場違いのシーンをみて怒っていた。
⑯つい最近職員がマスクをネットで5000円で買った・・2020年4月22日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid03ea1ocK2KfVvy6UDv8vjnfruQmYaGqJFqpECnJ8f28jeCtC5brj7HWsBBQKkGaDPl?__cft__[0]=AZVtuUGa6OWSVbGKHAiGE8H_U7WMp0Xb71S-9E5y1PQK8D4fQhuzs0yj96ffxVYdbvuAajkWR34E80S81v7xgH-OnO0LhGZqzlPAxsuTx5kOwMM6elEvr0uA9nSXcIvZnCk&__tn__=%2CO%2CP-R 。
嘘のような本当の身近の出来事だった。
⑰今朝のテレビでレポーターが屋外で3Mマスク・・2020年4月23日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid0Y4SYwfWNVKM37Jv3A38tejuEBdDvx7r1NM7TLHpum8TfwgDYJ94XvhwkHMbiMYtCl?__cft__[0]=AZXndQ4SANCLTlfOuW_3kRFsXtiipE_zOj-_UQDbEMwHQk3d7pNAXrZ70KlC5HFL-2ur8-N7PErFktHbxMDkfBGAVdcWqykD88mJmhxrmiuWShN9zeoye4NCMtuXfUOYTOY&__tn__=%2CO%2CP-R 。
偶々とは思うけれども、このような情報発信してから、テレビレポーターが戸外でN95マスクを着けている映像を見なくなった。
⑱今朝のNHKテレビのお知らせで・・2020年4月26日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02sdgLHwSMcpy5mZM6iePcFhqS3jdw3GQqaU2SiGp2ox33CL1CbGh9UMGQd9dKy2enl?__cft__[0]=AZXNwEFMllY73nwAUqjgsdGbm7o4LSEy3q70sj0CFlqYo8G1EJ9tYCYXUFbHOgfHy3WaRTForRTzfajdbwCbLiMKyKUmMa5swBopdfhKnPIMCRb1xbuYWvCN-VQqvA11wZQ&__tn__=%2CO%2CP-R 。
NHKもこの頃は混乱していた。こんなことだから世間でマスク警察が出てくるのも仕方ないことなのかもしれない。
⑲決してかき回すつもりはないのですが・・2020年5月13日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid0u15M4W2fyWxmDUcwbnCTckbxSeCvKU1GGuXgB7RBz7VaKCuMgr7rG7xFUBjNFg9al?__cft__[0]=AZWGAqjqqVtEXCO0DHIoNoXFgc_sXR951_byv9xUg4S0ICcIu0C5JD_ltKTfmc1pm2i5VO07KFNoGnC7RFtZ63Wv1QcY8-7GDug8SR4VeKniT--Gut2raUjgfpu66JJBlZw&__tn__=%2CO%2CP-R 。
N95マスクも扱い方によっては布マスクと同じということになる。しかし病院でのマスク不足の絶頂期にはアルコール噴霧して再利用等の映像が出たことがあるが、それでもスタッフが感染しなかったということは材質を問わずマスクの効用があるということを証明したものであるとも思っている。言い換えれば飛沫を抑えるだけでも感染リスクは大きく下がるともいえる。
⑳既にニュースになっていたのに、確認に1か月・・2020年5月20日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02Zkcvce7bfQ49qtwusi4HmRcDK7L8vLGMbX9hRsSaveNMUsVM1yCJFdnp7eQfnZuvl?__cft__[0]=AZXVXg6TySHDfAimpGz_OVhp9ezToPomhVHdHKmxsKb_7pg11Moje-QRALEpMFUhdGLgQV6fXVr3AnKi3PAlc-4iMcwv2pYPTw2vS2KQPG587EG7UCG4lpx-TSdgjUcjFQs&__tn__=%2CO%2CP-R 。
虚偽製品が出回ったことへの不信は勿論あったが、その後アルコール濃度自体を表示しない製品が多く出回るようになったのには困った。
㉑新型コロナウイルスを用いた代替消毒候補物資の有効性評価・・2020年5月31日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02QiX96oW4aXq4afz6QGzMHcvX4bQH5PuRzmF7u7it5RcBWTnXFuiPfokSqDcZ3xyyl?__cft__[0]=AZUAcWQdzmpM_rX77UyZcEubQ-El9lUa6Smb-lpkMaecNniyLXk5yVQr4kA-SR84-3MIkFzWnEGLgP7A1eg1Z0DaAZ-gn-MUrIFpbRlPOUQh44jEXlhffgFrZCmwyVYbLWI&__tn__=%2CO%2CP-R 。
不幸中の幸いと言えるが、エタノール有効であったのは勿論、せっけんでもウイルス不活化されることには感謝した。これがノロウイルスのように次亜塩素酸Naのみ有効でアルコール無効となっていたらと想像するだけでも恐ろしい。
㉒実際に手作りガウンを造ってみて初めて気が付いたこと。2020年6月3日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid09wSS1nKeeKqhKBBZ5QG1oBVAFYUbd7MDxv1TcsWjqTKBwsSdaeRkWWk8CvYB9NzKl?__cft__[0]=AZXBYT5SO7waaxskdz2y1rnUTB_aBPUif662W_LRdQxuv7u-m2e4fu3xue5kY-hRI6idjT_iTECkVwqo_86C8_hdK8CoeLfPk714aL6UC9lVY9ewnNtMVKOn6cikDVxZSCHAWmGwch83CEXLqw7wUNa_&__tn__=%2CO%2CP-R 。
どうすれば凌げるかと当時は必死だった。酷いときはPPEの代わりの雨合羽さえも市場からなくなりネットで手に入れようとして間違って失敗したりもした。それ以来Amazonは使わないことにした。
㉓皮下注か筋注かで気になったのでちょっと一言。2020年9月19日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid0uDrUHSyQSD6taTQ32pomA3JXo6BoMsgkRx7sHQA545BE1AvCzMAJLEe7BNQksB3El 。
ずいぶん控えめな言い方だったと今振り返って思う。
㉔新型コロナワクチンは筋注のみに?2021年1月23日 https://www.facebook.com/hidemasa.kuwabara/posts/pfbid02UR7qkHCJfLZWmkK2Y7mEmdmDapVWhPUy84WuFNp5mHru89r6jH7D8KLz1tDR91gQl?__cft__[0]=AZW-Cy5af7L0p7C-bdWMW23IXD_97Oq9iGX1PMWXIBmyztAboV1VIThay-MJNHgibf8_LDGDnMOwiWdqMP8j3yTdvB2SKlT9H1KZVsCtdZ-mR3cS-YmFkhjxJM-ZcHfFPeA&__tn__=%2CO%2CP-R 。
ワクチン注射を全員にするという大きな目的のためには些末なことを脇に置いて進むという政策は理解しているつもりだが、それとは別に必要な現場感覚があるという意味で、このような情報を大事にする。
㉕免疫効果は皮下注・筋注で変わらない、エビデンスがないだけである。2022年07月02日 https://ku-wab.asablo.jp/blog/2022/07/02/9505278 。
探し回って得た貴重なご意見である。一般論だが免疫効果はどのルートが最善かの議論はすでに50年前にもあった。筋注こそが免疫効果が高く副作用も少ないと一様にCDC輸入の考えに違和感を持った者には有難かった。
ワクチン投与ルートではかつては鼻内局所投与や吸入も試みられたことがあったが失敗に終わっている。皮内注・皮下注・筋注のルートについての免疫効果は皮内投与が最も免疫効果が高いというのは50年前から今に至るまでその優位性は変わっていないと思う。しかし手技に難点があり実用段階には応用できなかった。皮下注・筋注についてはデータにばらつきがあり免疫効果も団栗の背比べで皮下注≒筋注が中庸の判定だったと記憶していたので今回のコロナワクチンもそう認識していたが世間はそうではなかった。
そもそも筋注という手技そのものが不正確又は不可であればその優位さ云々は基から崩れるのである。
最近では https://doi.org/10.1111/j.1348-0421.2009.00191.x 新型トリインフルエンザワクチンの第一相試験(日本人健康成人120人、Alumアジュバント含有)のデータがあるが、日本人の若い健常者の局所疼痛頻度は(筋注35%、皮下注37%)、局所発赤(筋注25%、皮下注67%)、局所腫脹(筋注7%、皮下注23%)、局所硬結(筋注2%、皮下注3%)、全身症状発熱(筋注8%、皮下注8%)、全身倦怠(筋注20%、皮下注30%)、頭痛(筋注18%、皮下注17%)であった。一般的には大きな差はないといった方がよい。Adjuvantの有無・成分の違い・pH・体質・注射部位の浅深の違いなど別の要因の方を無視できないのである。要するに団栗の背比べで、免疫効果の差を示す決定的なEvidenceはないのである。米国CDCにはそんなEvidenceをわざわざ造る価値をこれまでの所認めないのであろう。今回もワクチン効果についての世間の認識を追認するような日本の後追いデータは出てきているが十分ではないと思っている。有意差云々の前提以前に問題があるのである。
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A:〈原 著〉インフルエンザワクチンにおける皮下注射・筋肉注射の差異 環境感染誌 Vol. 36 no. 1, 2021 http://www.kankyokansen.org/journal/full/03601/036010044.pdf 。
B:インフルエンザワクチンは筋注で問題なし2020/01/13 https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/series/kurahara/202001/563456.html 。
C:インフルエンザワクチンは筋肉注射にするべきだ 日本だけが皮下注射の弊害 上昌広2022/11/22 https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/314764 。
D:【識者の眼】「インフル・ワクチンの正しい運用を」岩田健太郎日本医事新報No.5142 (2022年11月12日発行) P.57 https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20680 。
E:不活化ワクチンの皮下注射を再考する(矢野晴美)医学界新聞2016.02.15 https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2016/PA03162_02 。
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