ETV特集「原発事故“最悪のシナリオ”~そのとき誰が命を懸けるのか~」2021年03月07日

3/6 (土) 23:00 ~ 0:30 (90分) NHKEテレ
ETV特集「原発事故“最悪のシナリオ”~そのとき誰が命を懸けるのか~」
https://www.tvkingdom.jp/schedule/157352202103062300.action?from=rss
を見た。
 丁度10年前のことを思い出しながら視聴した。
 当時は自分の視点でしか見られなかったが良く取材している内容だった。東日本消滅、退却などありえない、それぞれが崖っぷちに追い込まれたときに出来ることは、”そうなのだろうなあ”と当事者でなければ分からない覚悟を感じた。そして周りの私たちにとっては、その方々のお陰で現在がある。それにしても当時の官房長官は、私にとっては情報源であったのだが、影が薄かった。
( 福島原発事故の広報対応「忖度することの危険」をつくづく思う 。
https://ku-wab.asablo.jp/blog/2016/06/23/8117719 )
 そして、番組の最後の言葉が印象的だった。こんな滅多にない経験をしながらも「その後も変わっていない。同じことがまた起きる」と。
 レベルは低いかもしれないが現に新型コロナの緊急事態宣言下にある。そして多少迷走している。

ある介護老人の短文――心の吐露2021年03月13日

ある介護老人の短文――心の吐露

 長らく疎遠であった足利のいとこが最近亡くなり、遺族の奥様からご報告のお手紙を頂いた。自分より5才年上であるが既に10年前から逝った時の自らの希望を書いたご本人のメモが見つかったとのこと。その中に、下記の詠み人しらずの短文もあったようで、同封されていた。優しい心根のDrであったようなので、恐らくご本人も大切な短文としてとっておいたものかもしれない。同封の意図は書いてなかったけれども、奥様もそれが分かっていたからこそ何も言わずに同封して下さったのかもしれない。妙に胸に刺さった短文であった。
 高齢者の医療介護業務に従事する者は、この様なお心を皆が奥に秘めているかもしれないことを忘れてはならないと訴えているような、自らを戒めてくれるような短文であり忘れてはならないと思うのでここにメモしておく。
以下がその短文―――

君は老ひたる者の悲しみを知るまい。
歳老ひて生きつづけるとき
もはや 道化して過ごすしかないことを知るまい。
そして私も それを知らなかった。

思いもしないものによって
老人は 『老い』 という オリ につながれてゐる。
つなぐ側も つながれてゐる側も
つゆ それを知ることなく。
君は 老の悲しみを
知ってゐるか。
       72歳女性 老人ホーム入所中  S.60年

―――以上。

三角筋への筋注の実際と今までの教科書の間違いについて(SIRVAなど)2021年03月19日

三角筋への筋注の実際と今までの教科書の間違いについて、
 ――新型コロナワクチン注射で浮かび上がってきた、SIRVA(shoulder injury related to vaccine administration)、関節包内注・神経血管注リスク――

 誰が言い出したか、三角筋の筋注施行部位は肩峰から3横指下(約5cm)と当たり前のように我が国で言われてきて教科書にも書いてあることが、実は間違っていたという。そこは神経血管に注意しろ、という逆のことだったという。伝言ゲームの逆転トリックのように勘違いで数十年にわたって伝わってきて、教科書にも載っていてその間違いを誰も指摘してこなかったということに驚いた。
 そして今、シリンジの陰圧確認はしなくてよいというのが陰圧確認しない方が良いと逆転していることにも驚いている。大事なことなのでここにメモしておく。

 遥か50年前の研修医時代にアレルギー外来での注射係などで、三角筋への筋注も他部位への筋注も数え切れない程沢山自分も施行してきた。教えられてきたのは「しびれの確認」と「シリンジ陰圧確認」であった。それを守っていたせいか単なる偶然か、幸いSIRVAや局所壊死等は一度も経験しなかった。米国ではSIRVAは新型コロナワクチン注射で改めて問題となってきているようだ。
 米国ではインスリン注射はジーパンの上から打って良いと言うくらい雑な医行為を許容している国である。別に他国を責めるわけではなく医療の在り方も文化に合わせて国ごとに違ってよいと思っている。世界のオピニオンリーダーであるCDCやWHOの言うことにも何か変なところがあると感じているこの頃、日本では相変わらずそのまま自国に取り入れて当然と受け入れてしかもそうではなければだめだと歪曲されかねない雰囲気が出てくるのは単なる真似であり、いかに現場を知らないペーパードライバーならぬペーパー専門家が日本では幅を利かせているということを物語っている。最近の一時期のマスク不要論にも通じるものがある。
 日本も新型コロナで脚光を浴びつつある下記の筋肉注射手技マニュアルはリーズナブルなマニュアルであると思う。(文末※へコメント)

 〇奈良県立医科大学臨床研修センター 研修医用 筋肉注射手技マニュアルv1.6
https://www.naramed-u.ac.jp/~resident/medical07_manual.htm
 この方たちのように現場の実態を一番承知しているであろう整形外科医Drも敢えて大声で言わなかったためか、医療界一般にはこれまで届いていなかった。でも説明を受けてみれば納得である。SIRVは以前より認識されていたようであるが今回の世界を巻き込むワクチン大人数注射で改めて注目されてきているようだ。
 〇Avoid shoulder injuries during COVID-19 and other intramuscular vaccinations
https://consumermedsafety.org/medication-safety-articles/item/887-avoid-shoulder-injuries-during-covid-19-and-other-intramuscular-vaccinations

 シリンジに陰圧をかけることを否定するために、組織の挫滅を惹き起こすのでやめた方が良いとの屁理屈も飛び出しているのには笑ってしまうが(米国のハンドブックに書いてあるという)、確かに理屈はつけようと思えばいくらでも着つくのはこの世の常である。実際、筋注の方が免疫効果がよく副反応も弱いのでワクチンは筋注がお勧めとはワクチン筋注推進派が良く言う理屈である。実際は筋注も皮下注も免疫効果は団栗の背比べと思う。心配なので某免疫の専門家に聞いた所エビデンスがないだけで同じと思っているとのことであった。

 悪意はないであろうが下記ものせられてしまった例であろう。どう見てもシリンジ陰圧はしない方が良いと読める。
 〇日本医師会新型コロナワクチン速報【第5号】発行:発行日:2021年2月26日
https://www.med.or.jp/dl-med/kansen/novel_corona/sokuho/20210226vaccine05.pdf

 前述の如く糖尿病治療でインスリン注射をジーパンの上から打って良いと言うくらい雑な医行為を許容している米国にはそれなりの理由はあると思うが元々きめ細やかな配慮のできる日本がそのまま真似をする必要はない。各個人が自由すぎる米国には社会の統制や必要な治療を推進するためには面倒なことを言わず多少の不潔よりも各人の多くが実施できて治療効果を上げることの方が優先事項なのであろう。
 米国流をそのまま受け入れるだけならまだしも、シリンジ陰圧確認を「しなくてもよい」という責任免責の趣旨が「してはいけないと」変わってしまう日本の風潮はやはり問題である。

 例えばインフルエンザワクチンは筋注でなければだめだと言って殊更筋注と皮下注の違いを誇大に強調して、その理由を様々に医師たち専門家が言っているのがネットやテレビで目に付く。確かに効果や副作用には細かい違いはある※(1)。筋注の方が免疫原性が高いとか筋注の方が副反応が少ないとか、陰圧をかけると筋挫滅を惹き起こすようだとか、根拠のはっきりしない或いは団栗の背比べのような差を針小棒大に誇大化した理由をつけている。
 お陰で我が施設でもスタッフがインフルエンザワクチンも筋注にすべきなのでしょうかと不安になって相談に来る者もいる。
 日本においてはその違いよりも、筋注の場合はそもそも筋注できる筋肉がない高齢衰弱者もいる。もし副作用が少なく効果が大きい場合は、そのような高齢者もワクチンの恩恵を受けても良いはずである。この高齢衰弱者で筋注できる筋肉がない者もいるという発想が日本の医療者の誰からも全く出てこないというのは信じがたいがしかし今の現実である。

 欧米においては人生の最終段階では食べられなくなれば経管栄養や点滴注射で延命することは普通はしない。日本では安楽死は認められておらず自然死や平穏死が理想とされている。そして日本においては経管栄養や脱水を防ぐための点滴位はして欲しいと希望する家族は現在でも多い。当施設では「人生会議」の基本として入所者は全員ご家族を含めて「事前指示書」の説明文とその記入および地域医師会が作成した「私の人生ノート」の記入を改めてご家族を含めて考えておいて欲しい旨のお願いをしている。
 それでも点滴は当たり前のごとく殆ど希望する。全く食べられなくても脱水を防ぐ点滴さえしていれば数か月の延命可能性がある一方飲水出来ず点滴もしなければその余命は月単位ではなく、日/週単位である。点滴位はして欲しいというこの家族の心情は、日本特有の文化のせいかもしれない。その結果は最期は痩せて枯れるように逝かれる方も多いということになる。食べられなくても脱水を防げば痩せて数か月も延命され得ることは屡々当然のごとく起きる。欧米では皮下脂肪が厚くてワクチン注射針が筋肉まで届かないという心配はするが、筋注出来る筋肉自体がないようなるい瘦高齢者もいるということを心配することを聞いたことがない。ワクチン筋注できる筋肉がない人もいるということ自体の概念が欧米には無いように感じられる。例えば日本のインフルエンザワクチンのように、副反応の少ない場合は筋注できる筋肉がなくとも皮下注はできるのでそのような衰弱高齢者でもワクチンの恩恵に浴することが出来るし実際今も出来ている。これは日本が世界の超高齢者社会のトップランナーである故の問題かもしれない。

 とにかく今回の新型コロナワクチンは新たな機序のワクチンのために不安も大きかったが、大方の不安をよそに想定をはるかに超える効果が期待できることが分かった。副反応も心配したほどではないことも分かった。ただ残念なのは筋注のみで皮下注のデータが無いことである。副反応がなく効果が見込めるのであれば、上記のような衰弱高齢者もワクチンの恩恵を受けても良いと思うが筋注のみなので適応はない。国も75歳以上の高齢者には妊婦同様にエビデンスが不十分とのことで努力義務を課していない。今後は皮下注のエビデンスも取り入れて欲しいと思うのは自分だけであろうか。

 差し当たっての今の新型コロナワクチン「注射手技」については、マスコミやネットの様々な雑音に左右されることなく、三角筋のどこに注射する場合でも、神経・血管・滑液包へのリスクを避けるために、注射針刺入時には”しびれ有無””シリンジの軽い陰圧確認”は行っておいた方が無難である、ということであると思う。
 「仏心鬼手」という言葉があるので医療者は、ワクチン接種では過度に恐れることなく、しびれの確認やシリンジの軽い陰圧確認の基本を念頭に置いて(するかしないかは別として)、少なくとも否定すべきではない。それにより万万が一の血管内や神経や滑液包内への注入リスクが少しでも避けられるのであれば十分価値のある行為であるからである。


※(1)アジュバントの有無や種類・使用抗原の違いによっても副作用に大小の違いがある事も分かっているので、ワクチンを一括りにするのは現実的でない。デング熱のように却って悪化させてしまいかねないワクチン効果(ADE)の場合もある。
  a. 塩酸ヒドロキシジン(注射剤、アタラックスP®)による注射部位の壊死・皮膚潰瘍等について、医薬品医療機器等安全性情No256. 2009年3月。
https://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/256-1.pdf
  b. ニューモバックスにより注射部位の壊死・潰瘍(肺炎球菌感染症(高齢者がかかるものに限る。)に対する定期接種後の副反応報告基準)。
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000172984.pdf
  c.  Immunogenicity of an inactivated adjuvanted whole-virion influenza A (H5N1, NIBRG-14) vaccine administered by intramuscular or subcutaneous injection
Daisuke Ikeno et al. Kikuchi Research Center, Japan. DOI: 10.1111/j.1348-0421.2009.00191.x(アジュバント有の新型インフルエンザワクチンの場合の副反応の程度頻度)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20377741/
  d. 要望書 不活化ワクチンの筋肉内注射の添付文書への記載の変更について平成23年日本小児科学会厚生労働大臣殿(不活化ワクチンは皮下注に加えて筋注も可にして欲しい旨であり、筋注に変えるべきとは言っていない。免疫原性が高いと一般化してもいない。)。
http://www.jpeds.or.jp/uploads/files/saisin_1106273.pdf
  e. 2020予防接種に関するQ&A集. 日本ワクチン産業協会(誤解され易い表現も中にはあるようだ)。
http://www.wakutin.or.jp/medical/pdf/qa_2020.pdf
  f.  ワクチン注射は皮下注か筋注か、で気になったのでちょっと一言(過去のボヤキ)。
http://ku-wab.asablo.jp/blog/2020/11/11/9315455



2021/4/22 下記追加

※ 〇奈良県立医科大学臨床研修センター 研修医用 筋肉注射手技マニュアルv1.6 については、日本での検証論文が、下記のように既にあった。

〇Establishing a new appropriate intramuscular injection site in the deltoid muscle(金沢大学)Hum Vaccin Immunother 2017 Sep 2;13(9):2123-2129.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28604191/
 前後腋窩線上縁を結ぶ線(A)と肩峰中央垂線(B)の交点(C)が最も安全な筋注部位である(肩峰より約下10cm)。ABを結ぶ線の下1/3の部位には腋窩神経分枝および後上腕回旋動脈分枝が横走行していて中央1/2~下1/3の間(肩峰から約5~8cm)が最も危険度が高い部位である(外科頚の付近)、但し三角筋の厚さはこの部位が最大であり次に厚いのはCの部位である。滑液包への言及はない。肩峰からの距離を指標にするとばらつきがやや大きいのでA線を指標にした方が良い、としている。 

〇筋肉内注射で重要な生体の腋窩神経走行推定のために、後上腕回旋動脈を超音波血流検知器およびデジタル超音波診断装置で測定することの有効性の研究 金沢大学大学コ・メディカル形態機能学研究会, 2010-01-01
http://hdl.handle.net/2297/24249
http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/handle/2297/24249?hit=4&caller=xc-search
  ドップラーエコーで血管走行位置を確認している。

〇Appropriate site for intramuscular injection in the deltoid muscle evaluated in 35 cadaverous arms 金沢大学医学部保健学科紀要2001-03-01, 24:2,p27-31.
http://hdl.handle.net/2297/6178 
https://kanazawa-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=16399&item_no=1&page_id=13&block_id=21
 35死体の検討では、前後腋窩線上縁を結ぶ線と肩峰との間下1/3の部位に窩神経分枝及び後上腕回旋動脈分枝が通る(外科頚付近、肩峰から3横指の付近とほぼ同じ)。肩峰から3横指(5cm)の距離を指標にすると血管や神経の走行位置のばらつきに繋がり神経や血管を刺すリスクがある。前後腋窩線上縁を結ぶ線を指標にした方が良い、としている。滑液包についての言及はない。

2021/4/26 下記追加

〇古東整形外科・リウマチ科 腋窩神経麻痺 最終更新日時 : 2018年11月5日
https://koto-orthopaedics.com/disease-arm/axillary-nerve-palsy/
  腋窩神経には筋枝しかないとのネットの意見があったので調べてみたら筋枝も皮枝もしっかりあり、この自験例の提示は分かり易いので有難い。

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2021/6/16 さらに追加 
        三角筋及び肩関節周辺の滑液包の画像など。
(やはり、神経・血管・滑液包への障害を避けるためには、シビレ確認と軽い陰圧確認は行った方が良い。少なくともしない方が良いという理屈は逆立ちしても出てこない!!)

https://nabilebraheim.mystrikingly.com/blog/anatomy-of-the-deltoid-muscle-for-proper-vaccination-technique  Anatomy of the Deltoid Muscle for Proper Vaccination Technique By Nabil A Ebraheim MD & Richy Charls MD
<div class="msg-pict"><a href="https://ku-wab.asablo.jp/blog/imgview/2021/06/18/5f2d2a.png.html"
target="_blank"
onClick="return asablo.expandimage(this,1021,518,'https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/06/18/5f2d2a.png')"><img src="https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/06/18/5f2d29.png" alt="you tube (By Nabil A Ebraheim MD" title="you tube (By Nabil A Ebraheim MD" width="300" height="152"></a></div>

https://www2.cdc.gov/vaccines/ed/covid19/moderna/40140.asp CDC COVID-19 Vaccine Training Modules Home (米国CDCの画像)
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target="_blank"
onClick="return asablo.expandimage(this,1037,547,'https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/06/18/5f2d30.png')"><img src="https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/06/18/5f2d2f.png" alt="CDCの画像" title="CDCの画像" width="300" height="158"></a></div>

http://www.kaken.co.jp/mamechishiki/kata/data/c_1.html 提供:科研製薬株式会社(肩の構造)
<div class="msg-pict"><a href="https://ku-wab.asablo.jp/blog/imgview/2021/06/18/5f2d2c.png.html"
target="_blank"
onClick="return asablo.expandimage(this,760,455,'https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/06/18/5f2d2c.png')"><img src="https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/06/18/5f2d2b.png" alt="肩関節滑液包群" title="肩関節滑液包群" width="300" height="179"></a></div>

https://buhitter.com/author/chan_oka_ (チャンオカ@理学療法士(機能解剖×fascia×末梢神経×pain)さんのイラスト一覧) 【三角筋下滑液包(SDB)】SABとSDBは分離・連結ともに報告あり、下記シェーマの報告では89%で分離、SAB注射が効かない場合、SDBも考慮する必要があるかもしれない‼︎ 神経支配は腋窩Nのみ83%、腕神経叢の後神経束のみ11%、残りは両者 ⁑画像は[Chang Min Seo et al., 2018]より
<div class="msg-pict"><a href="https://ku-wab.asablo.jp/blog/imgview/2021/06/18/5f2d2e.png.html"
target="_blank"
onClick="return asablo.expandimage(this,457,351,'https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/06/18/5f2d2e.png')"><img src="https://ku-wab.asablo.jp/blog/img/2021/06/18/5f2d2d.png" alt="肩関節滑液包群" title="肩関節滑液包群" width="300" height="230"></a></div>

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2022/9/6 さらに追加 (facebookから)

ワクチン筋注、たかが筋注されど筋注:古くて新しい問題。

三角筋筋注の問題はもう解決したと思っていたらつい最近東京の身内が帰省して会った時に、コロナワクチン注射をしたら直後から痛くなり腕が痛くなり挙げることもできなくなり治るのに1カ月以上かかったと聞いた。本人はこんなこともあるのだろう位に思っていて疑問にも思わなかったと言っていたがこれは有害事象であったことは間違いないと訊いていて思った。話の様子から神経障害というよりも三角筋下滑液包内に薬液が入ってしまったのだろうと推測した。
2年前のコロナワクチン筋注開始の頃にはネットの画像で三角筋ではなく上腕三頭筋外側頭に打たれてしまった等の苦情はみていたので、まず三角筋を外さないことが基本のきで、その上でやさしく刺入すれば骨にあたっても2-3mm戻せば問題ないとしていた。米国ではSIRVAが問題になっているとも聞いていたが、日本では極めて稀のようだと思っていた。上記の有害事象の話を訊いてやはり日本にも表には出ない有害事象はあるのだと思っていたところに下記の特集が目に入った。説得力のある内容である。
自分なりに解釈すると橈骨神経・肩峰下滑液包は絶対避けるべき、腋下神経・後上腕回旋動脈・三角筋下滑液包もなるべく避けるべき、注射針先端は骨やバイアルゴム栓で容易に歪むので要配慮、と理解した。

 筋注手技の問題は今後も続くコロナワクチン筋注なので、改めて基本に戻って考える価値があるのではないかと思う。この報告はMR画像を使ったデータを示してくれているので分かり易い。2年前の初めの頃の私共はエコーでワクチン筋注の可否を一人ひとりチェックしていた。そして重い副反応が出たときに訴訟に耐えうるのかどうかを初期には気にしていた。これらの心配は日本中が見做し筋注をしているのが現実だと分かり杞憂に帰した。
 この著者は針先の損傷についても言及している。これは現場で仕事をしていれば針先がバイアルのゴム栓に一回刺しただけでも刺し方で注射針先が歪んでしまうことは既知の事実であるが意外と無頓着に扱われていることが多い。細かい事であるが気にするナースはバイアルに別針だけ刺しておいてシリンジに吸引し接種用注射針は新しいものに替えている。針を余分に使うので経営のことを考えると悩ましい問題であるが細かい配慮には賛同している。この特集にはバイアルゴム栓への言及はないがなるほどと納得できることが少なからず書かれている。

 この特集を読ませていただき勉強になったがこの著者が、これからはHPVワクチンやプレベナーのごとくワクチン接種は筋注が増えるだろう、と予想しているがワクチン筋注が当たり前になるのは困るとこの点では異を唱えたい。コロナワクチンのごとく高齢者こそ必要なワクチンが筋注のみでは届かなくなる場合があるからである。今回のCOVID-19ワクチンでは「見做し筋注」を皆さんが行っているようなので、私共も2回目からは見做し筋注を行っていたが、本来は適応を「筋注又は皮下注」とすべきと思っているからである。(※見做し筋注とは、るい痩著明な高齢者には三角筋さえも委縮していて医学的には皮下注になってしまうことを許容して注射すること。)

〇 「特集:安全なワクチン筋注のコツ―神経麻痺とSIRVAの予防 日本医事新報 No.5132 (2022年09月03日発行) P.18 井尻慎一郎 (井尻整形外科院長)」https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?id=20331 

この特集から改めて要点を纏めると、下記になると解釈した。
① 肩峰から3cm以内は絶対避けること(肩峰下滑液包に当たるリスク極めて高い)。
② 肩峰から5-6cmは腋下神経・後上腕回旋動脈・三角筋下滑液包に当たるリスクがある(体格の良し悪しと神経・動脈の走行は相関しない)。
③ 肩峰から7.5~10cmに行うのが最も安全である。
④ 決して上腕三頭筋外側頭にしてはいけないので三角筋位置を同定するのが大前提であること(外側頭は発達肥大していることが多いので少しの上腕内旋でもそこに当たってしまうのが現実であることを自覚して避ける必要がある、この奥には橈骨神経が走っている)。
⑤ 骨に当たってもやさしく当てればゆっくり少し戻して薬液注入すれば問題ない。
(※陰圧確認はしなくても良いかもしれないが、してはダメとの意見には極端すぎて反対である。※薬液バイアルから吸引するときは注射針先端の変形を極力避けるためにやさしくゆっくり直角に刺入する等の配慮があれば好ましい。)

(関連テーマ)
〇 ワクチン注射は皮下注か筋注か、で気になったのでちょっと一言 ― https://ku-wab.asablo.jp/blog/2020/11/11/9315455 
〇 新型コロナー筋注・皮下注についてー追記. ― 2021年06月16日 アサブロ https://ku-wab.asablo.jp/blog/2021/06/16/9388503 
〇 (過去の、2021年03月19日への追加) 新型コロナワクチン筋注とSIRVA等合併症を避けるということの本質) ― 2021年06月18日https://ku-wab.asablo.jp/blog/2021/06/18/9389164 
〇 新型コロナワクチンの三角筋注射に係る手技・免疫学的意義・副反応等について再考 https://ku-wab.asablo.jp/blog/2021/07/18/9399139

「左部彦次郎の生涯」第二刷(修正版?)2021年03月26日

「左部彦次郎の生涯」第二刷(修正版?)
「左部彦次郎の生涯」第二刷(修正版?)

昨年初版が発行されましたが「左部彦次郎の生涯」第二刷(修正版?)がR3.1.20.に再び発行されました。
左部彦次郎についてはご存じない方が多いと思いますが、足尾鉱毒事件の田中正造を知らない方はいないと思います。左部彦次郎は公害問題で国家権力と徹底的に戦った田中正造の軍師的役割を果たした人物でした。
 足尾銅山鉱毒事件は世界に先駆けて日本で発生したもので、世界の公害史の中の原点ともいうべき事件でした。
 田中正造(1841年生まれ)は江戸時代の反六角家闘争からはじまり谷中村廃村に至るまで理不尽な権力者に対峙した時の行動が、終始非暴力と不服従に拘った生き方をしています。それはインドのガンジー(1869年生まれ)の非暴力・不服従の生き方そのものでした。
 田中正造はガンジーより28才年上で、27歳の時から既に時の権力に対して非暴力・不服従を貫きました。ガンジーが非暴力・不服従を始めたのは46歳の時ですので、ガンジーの47年前に既に同様の行動に入っていたことになります。まさに日本のガンジーで、ガンジーの先輩でした。
 左部彦次郎は田中正造よりも早くからその公害問題にかかわり、明治の殖産興業の大きなうねりの中で共に同士として徹底抗戦する中で、もはや状況は変えられないという土壇場で田中正造は自滅覚悟の道を歩み、左部彦次郎は現実的な次善の策を選択して両者袂を分かったという間柄でした。それ故もとの仲間同士の間にもそれぞれの人たちの深奥にしこりを残して解決を阻んできました。
 著者は終章で、この二人の間の問題は、最近の東電福島第一原発事故で運動の指導的立場にいた人が住民の批判を受けるようになりやがてその地位を追われる状況が生まれたことと、課題が重なると考察しています。決して過去の問題ではなく未来にも起き得る問題でさらに研究すべき課題であると言っているようです。

足尾の山が枯死していく一方で、坑道に使う木の補充に、一山超えた群馬県側の木を伐り出すためにと出来た村があり、足尾銅山の衰退とともに消え去った幻の村があったことを初めて知りました。
 その村の記録が見つかったとのことで過日、下記の展示会場に行って説明を聞いてきました。
(沼田市歴史資料館3/4~4/4 第11回企画展「足尾銅山を支えた根利山―幻の集落―根利山」 https://www.gunpaku.com/news/48/ )
 足尾の山木が枯死したために、百名山の皇海山の反対側にも一時期5000人の集落が出来ていたそうです。幸い古河鉱業が写真家も派遣していたために記録が残っていたとのことでした。