天皇による田中義一首相の叱責の仕方、西園寺公望の「幻の教育勅語の草案」発見について ― 2026年09月10日

(アサブロメモ――備忘録)

天皇による田中義一首相の叱責の仕方、西園寺公望の「幻の教育勅語の草案」発見について

① 田中義一首相と昭和天皇:「君臨すれども統治せず」が如何になされたか

「君臨すれども統治せず」とは明治以来の天皇の在り方で国民の認識及び国家の方針として、既に自他ともに芽生えていた 【勿論完全定着までには多くの葛藤と思惑が入り乱れていたが、日本では明治19(1886)年「機務六条」および明治22(1889)年大日本帝国憲法から、イギリス型立憲君主制では1689年に「権利章典」以降に既に概念が成立していた。名実ともに確立したのは日本では第二次大戦後。】 が、1928年6月4日の張作霖爆殺事件の処理に当たって、田中義一首相は元老の西園寺公望に同年11月に事件に関する上奏を促され、昭和天皇にたいし同年12月24日「矢張関東軍参謀河本大佐が単独の発意にて、其計画の下に少数の人員を使用して行いしもの」と河本大佐の犯行を認めたうえで、軍法会議を行う旨の上奏を行い、同年12月26日からの第56回帝国議会の貴族院委員会においても、事件の真相を明らかにする旨の答弁を行っていた。
その後に陸軍ならびに閣僚・重臣らの強い反対にあって、陸軍は軍法会議開廷を回避して行政処分で済ませようとして、1929年(昭和4年)5月14日付で河本高級参謀を内地へ異動させたので、河本をふくめた関係者の処分を断念した。
同年6月27日、田中首相は「陸相が奏上いたしましたように関東軍は爆殺には無関係と判明致しましたが、警備上の手落ちにより責任者を処分致します」と行政処分を上奏した。
これに対し天皇は「それでは前と話が違ふではないか」と田中を叱責した。田中首相が恐懼し弁解することを図ったが、天皇は鈴木貫太郎侍従長に「田中総理の言ふことはちつとも判らぬ。再びきくことは自分は厭だ。」と心情を語った、とされている。
 以上の経過で、田中義一首相は天皇に叱責されたために同年7月2日に田中義一内閣は張作霖爆殺事件の責任を問われて総辞職をした。その約3か月後の9月29日に、65歳で狭心症にて急死した。
為政者は如何に覚悟を決めねば道を間違うかを示す例である。太平洋戦争開始に至る御前会議での東条英機首相の先送りもそうだった。

② 西園寺公望が「第二次教育勅語草案」を作っていた。それは排外主義ではなく国際協調を重視する理念を示すものだったという。
教育勅語は、1890年(明治23年)に明治天皇の名によって発布された、国民教育の基本方針や道徳の基準をしめした勅語(天皇の言葉)で(儒学者の元田永孚と法制局長官の井上毅が原案をまとめた)、戦前の帝国主義教育や天皇の神格化等に利用されてきて、負の面が大きいとして大戦後に完全に否定されたものである。
この教育勅語に西園寺公望や伊藤博文は違和感を持っており、1898年発足の第3次伊藤博文内閣で文相を務めていた頃に執筆したとされる。立命館大が子孫から提供された史料の中から1995年に発見したという。
草案は明治天皇が教育の基本方針を示す形式をとり、主語を「朕」とし、巻紙に700字程度でつづられている。立命館大学によると1890年の教育勅語の発令後、明治天皇の内諾を得て執筆されたとされる。民間の一部の教育について「外国を蔑視し日本だけを尊大に誇るような悪しき習いを助長する」とし、教育勅語の理念に反していると指摘。日清戦争に勝利し、東洋が西洋に並び立とうとする時期だとして、「外国の人々に丁寧親切に接することで大国の国民として寛容の態度を示していかなければならない」と説いている。女子の教育を盛んにしてその地位を高めることも急務だとしていた。草案は西園寺が体調不良で文相を辞任したため、成案にはならなかったという。

資料:
A:西園寺公望の教育思想展示 「第二次教育勅語草案」初公開 2025年10月4日立命館大学新聞  https://ritsumeikanunivpress.com/10/04/18545/ 。
B:西園寺公望「第二次教育勅語草案」、立命館が初公開 他国への寛容説く2025年9月25日 日本経済新聞 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUD253JQ0V20C25A9000000/ 。
C:西園寺公望(出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A5%BF%E5%9C%92%E5%AF%BA%E5%85%AC%E6%9C%9B 。
D:英雄たちの選択 シリーズ 昭和のあけぼの (1)政党政治に懸ける最後の元老西園寺公望  https://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2025146127SA000/?capid=nte001 。