「(日中半世紀 未完の正常化)・・朝日新聞2022年7月19日」を読んで、2022年07月26日

「(日中半世紀 未完の正常化)訪中2日目、角栄の直感 台湾問題、「言葉」による合意朝日新聞2022年7月19日」を読んで、

自分はポピュリズムの臭いがプンプンする朝日新聞は嫌いである。しかし拒否もしない。職場にあるので替えることなく継続購入もしているので朝日新聞は自然に目に入り拘りもしない、だから気になる記事があれば読む。
2022.7.19.朝刊第1~2面に1972年9月26日 田中角栄首相ら訪中時の日中関係の緊迫した場面が載っていた。古谷晃一氏の署名入り記事である。「言葉に合意」、「文学的表現でいこう」等の見出しが躍っていた。日中国交正常化交渉での北京釣魚台迎賓館でのエピソードである。交渉は難航し大平外相は食事ものどを通らず、田中首相は「私は死ぬ覚悟できている」と言ったという。当時は国交がなく事前交渉はできなかった中での交渉だったという。その7か月前にはニクソン大統領が日本の頭越しにいきなり中国訪問して米中共同声明を出していた。

周恩来は「戦争賠償問題は譲歩できても台湾問題をめぐる3原則は決して譲れない」と言ったという。日中の立場の違いは大きく、合意は出来ないかもしれないと暗澹たる雰囲気の中で大平外相は食事ものどを通らず痛ましかったとは側近の感想である。そんな中で結局は開き直り、「法律問題でいくから話がおかしくなる。文学的表現で行こう」となったという。窮すれば通ずで、良いアイデアだと読んでいて思った。(「台湾は中国の不可分の一部」とする中国の主張を日本は認める立場にはない。ただ、日本はこれを「理解し尊重する」)と日中共同声明に明記され、周恩来もその曖昧な表現を受け入れたという。日本にも留学していて互いの心情は理解していたであろう中で、小異を残して大同につくとした周恩来も土壇場で表現法を思いついた田中角栄ら日本の首脳も太っ腹であった証拠である。
一方台湾では現地大使館に日本刀を持った3人が入ってきて「日中国交正常化なんてやめさせろ、さもなくばお前をぶった切る」と言ったという。
これらによって日中国交正常化したが、日中共同声明のこの玉虫色の表現が、台湾問題等の未解決課題対立の火種を残したとこの記事は結んでいる。
火種を残したというならば、火種を残さない方法があるのならそれをも提示していただきたい、と読んでいてそう感じた。いつの世でも完璧になんてことはありえない。その都度最善を尽くして乗り越えていくのが実務者であり、学者と違うところだからである。
何が最善かは別として、それぞれの場で命を懸けたやり取りが行われていたことは確かのようだ。そしてその選択された道が善悪を超えた歴史となっていき、それはまた明治維新がそうであったように賊軍が官軍になっていくことでもある。歴史とはそういうものだと思う。
それにしても、明治時代より大戦前まで、同じような植民地政策で中国・朝鮮・台湾等近隣諸国には迷惑をかけているのにも関わらず(当時の人たちはその積りがなくとも結果としてはそうだったと思う)、台湾の日本に対する国民感情と中国・韓国の日本に対する国民感情があまりにも違うのは何故なのだろうか、といつも思うが答えが見つからない。

〇 (日中半世紀 未完の正常化)訪中2日目、角栄の直感 台湾問題、「言葉」による合意2022年7月19日 https://www.asahi.com/articles/DA3S15360466.html 
〇  日中40年と記者交換  残された「小異」は今も(富澤 秀機)2012年10月 https://www.jnpc.or.jp/journal/interviews/24964



そもそも理性的に考えれば人間個々人が真の意味で心から分かり合えることは基本的にはない、たとえ親兄弟や子供であってもだ。哲学者ヴィトゲンシュタイン(1889-1951)がジャストローの絵(ウサギに見えるアヒルに見える)を使って説明したのはそういうことだと思う。言い換えれば個々人の心象風景は一人ひとり皆違っている。逆に言うと分かり合えたと幻想を抱きすぎると、次に待っているのは、その幻想と現実の衝突であり幻想の破綻である。極端になれば、感情のぶつかり合いや認知のすれ違いで殺し合いである。親しき中にも礼儀あり、はその警告である。小異を捨てて(残して)大同につく、も同じであろう。2500年前の孔子や釈迦の時代より理屈ではわかっていたことである。同じ2500年前の孫子の「呉越同舟」も分かり合えなくても最低限共存を図る、そのためには手を結ぶという意である。それでも人類はわかっちゃいるけどやめられない、と世界大戦までは同じ殺戮を繰り返していた。さすがに大戦以降は国同士の殺し合いは止めようと共通認識を持ったと思っていた。しかし、今回のウクライナ侵攻で覆ってしまった。
(2022.7.28.一部追加)。

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